(政春)エリーエマあれはのう羊蹄山じゃ。
(エリー)はっ!
(エマ)わ〜すごい!大きいじゃろう。
見てみい!どうじゃ?ハハッ…。
(エマ)うわ〜。
スコットランドに帰ってきたみたいじゃろう。
まさにウイスキーの理想郷じゃ。
・「大好きな人々大好きな明け暮れ」・「新しい『大好き』をあなたと探したい」・「夢はい…」おいエリーここじゃここじゃ!大きい!リンゴ送ってくれたおじちゃんの家?ほうじゃ。
景気のええ親方がおるんじゃ。
こんにちは!
(熊虎)この恩知らずが!
(武井)うあっ…。
(熊虎)一丁前こぐでねえ!熊さん?カメ!ウイスケのカメでねえか!ハハハッ…。
そこの異人さんは?わしの嫁さんです。
嫁っこ!?エリー大丈夫じゃ。
何て?「北海道はいい所ですね。
特に空気がすばらしい」。
ええ嫁っこだ!さあお嬢ちゃんも上がってくなんしょ。
(熊虎)ハハハハハッ!すいません。
北海道には何しに?実はですのう…。
すみません。
その前に…。
ぶったまげたな。
日本語ペラペラか?さっきの男の人誰ですか?漁師のタケさんですよのう?タケは辞めた。
おらに銭借りに来たんだ。
あんまりしつけえから追い返してやった。
(進)ええっ!?借金した本人が返せねえ時には保証人が返すのは当たり前だべ。
(進)いやちょっと待ってくれよ。
あんた熊虎の義理の弟だべ?借金の担保に兄さんの家と土地が入ってんだべ。
ああ。
「家は絶対手放せねえ」って。
妙な外国人連れ込んで。
妙な外国人?金髪の白人のおなごだ。
ありゃ悪い事たくらんでるに決まってっぺ。
まずは地主さんや大工さんを紹介してもらいとうて。
地主や大工?あとはリンゴ汁を作るんでリンゴ農家の人も。
大船に乗ったつもりで任せとけ!何せおらはこの町の殿様だからよ。
ハハハハハッ…!ありがとうございます。
ありがとうございます。
そういやハナちゃんらは?息子さんもおってですよのう?ハナと一馬は仕事に出てる。
仕事?暇潰しだ。
おっハナ一馬。
(ハナ)お帰りなさい。
お前んちに変な客が来てるらしいぞ。
(一馬)変な客?ああ…。
ここは夢の大地だ。
おめえも一発当てて殿様になれ。
はい!・
(ハナ)ただいま!おおハナちゃん!こんにちは。
ぶったまげた〜!外国人の女ってカメさんの嫁っこだったんだ。
ああ。
どうぞよろしくお願いします。
こちらこそ!ハハハッ…。
ハナ客人をもてなす時はやっぱ肉だべ。
肉なんかどこにあんだ?なきゃ買ってくりゃいいべ。
今夜はとことん飲むぞ!翌朝。
わしら地主さんとこ回ってリンゴ組合の組合長に挨拶に。
おお行ってこい。
真っ先におらの名前出せや。
はい。
リンゴの組合長は死んだかかあの弟だ。
面倒見のいい男だから安心して行ってこい。
はい。
すいません。
この辺に川向こうの土地を持っとる地主さんの家があるいうて聞いたんですけど。
熊虎さんの紹介で。
熊虎!?おら知らねえ。
何も知らねえ。
いやいやちょっとちょっと…。
おら知らねえ。
おお川沿いの土地買いたい?ウイスキー工場建てよう思うとるんです。
えっ?この町でウイスキーを?わしら熊虎さんの紹介で。
熊虎…。
土地は売らねえ!帰ってくれ!いや…。
熊虎さんの名前もちゃんと出したのにのう。
あっハナ。
何じゃ2人ともここで働いとったんか。
収穫の時期だけ叔父さんのリンゴ手伝ってんだ。
ほうか。
・誰?熊虎さんから紹介で来た亀山政春と嫁のエリーです。
日本一の余市のリンゴでリンゴ汁を。
断る!え?リンゴは売らねえ。
もう熊虎の事を兄貴だとは思ってねえ!借金地獄で身内にまで迷惑かけて。
あんな奴に関わってねえでさっさと内地さ帰れ。
熊さん…借金?もっぺん話を聞いてみよう。
・もういい加減に目覚ましてくれ!ニシンの次はリンゴ汁か?ウイスキーか?ちいと待ってつかぁさい。
リンゴ汁とウイスキー工場はわしが建てようとしとるんです。
裏切り者呼ばわりされてる兄さんに何ができると思ってんだ?裏切り者…?さっさと家手放してこの町出てったらどうだ?ニシンが来たら一発逆転。
借金は倍にして返してやらぁ!往生際が悪い。
一馬ハナ荷物まとめておらんとこ来い。
おめえらの面倒だけは見てやる。
この裏切り者の事はもう諦めろ!
(熊虎)何だと!このうち売らねえでこれからどうするつもりだ?マッサン金貸してくれねえか?借りた金2倍にして…いや3倍にして返すからよ。
(一馬)いい加減にしろ!このうちさ売って借金返して地道に暮らす事考えたらどうだ?おらこのうちは売らねえ。
どんな事があってもな。
だったらどうすんだ?おらニシンを待つ!もう一回天下取ってみせる!お父ちゃん!どういう事なんじゃ。
ニシンが来なくなっちまって。
ニシン漁は博打だ。
海さえくきりゃたった2週間の漁で一年中遊んで暮らせる。
だけど…ニシンが来なきゃその逆で一春で破産する。
来年の春ニシンが来たとしてもうちには漁師を雇う金も船もない。
だからニシン漁はもうできないんだ。
あんた…工場建てる土地探してんだろ?ああ…。
だったらこの家の土地さ買ってくれないか?お父ちゃんも住むとこ無くなっちまう。
親父はどうなっても構わねえ!そうはいかねえべ。
今までおらたちの事なんか一つも考えてこなかった。
見捨てられて当然だ。
ちいとだけわしの話を聞いてつかぁさい。
帰れ。
帰りません。
それなりの覚悟で北海道に来たんじゃけぇ。
覚悟?はい。
ついてこい。
この木が日本で初めて実をつけたリンゴの木。
今から53年前の事だ。
親父たちがここに来たのはその8年前の明治4年だ。
へじゃ10年近うかかって?おらたちの親父は会津の侍だ。
時代が明治に変わって親父たちは逆賊の汚名を着せられ無理やり船に押し込まれてこの北海道に流された。
刀をくわに持ち替えて生きるか死ぬかで土地さ耕して。
何でそこまで我慢できたと思う?会津の魂…武士の誇りを捨てなかったからだ。
おめえにそこまでの覚悟があるか?北海道には日本中から大勢の人が移り住んでる。
死に物狂いでこの大地に根づいたんだ。
んだからどんな事があってもこの土地守っていかなきゃならねえんだ。
なまはんかな事じゃここではやっていけねえ。
分かったらとっとと内地さ帰れ。
20年前に死んだシノだ。
家族の大反対を押し切っておらの嫁になってくれた。
どうしてみんな大反対した?進が言ってたべ。
おらが会津をふるさとの仲間を裏切ったって。
おらの親父は一生懸命リンゴ作りさした。
だけんど台風でリンゴがみんな落ちた年があってなそれ以来酒浸りになって山も手放す事になった。
おら親父と毎日大げんかしてな北海道さ飛び出して青森で漁師になったんだ。
飛び出した余市に出稼ぎさ来るようになったんだ。
そのころシノと再会してな。
「裏切り者と結婚する気か」って反対されてそれでもうち飛び出して来てくれた。
おらもシノを幸せにするために必死でニシンを取った。
やっとこさ親方になってこの家建てる事ができた。
んだけどシノはこの家が建つ前にはやり病に…。
あいつと毎日笑って暮らすためにこの家建てたのによ…。
(泣き声)熊さんの家…出よう。
裏切り者の仲間じゃ思われてリンゴの仕入れもできん。
私熊さんの家出ていきたくない。
熊さんと一馬仲直りしてあげたい。
エリー。
わしらの夢はどうなる?諦めない。
わしゃ…北海道はもっと自由でみんなが力を合わせて生きる夢の大地じゃ思うてやって来たのに…。
マッサン何言ってる。
自由で夢のある大地マッサンがするんでしょ?簡単に諦めないで。
誰も諦めるとは…。
見て。
大きい!この空どこまでも続いてる。
大阪広島スコットランドにも続いてる。
私ここ好き。
北海道大好き!家族の事大事に思う人いる。
何だ2人そろって。
(進)一馬!
(熊虎)待で!それは!
(武井)権利書さえ頂きゃこのうちはもうおらたちのもんだ。
一馬!もう諦めろ。
こうするしかないんだ!おとなしく息子の言う事を聞け!うあっ…!
(ハナ)お父ちゃん!兄さん!熊さん!いつも息子と母ちゃんに土産持たせてやったべ!おおっ!兄さん!熊さん!
(ハナ)お父ちゃん!
(武井)時代は変わったんだ!侍の時代もニシンの時代も終わった!この刀は侍の…会津の男の魂だ!うっ…ううっ…。
(武井)ハハハッ!何だそりゃ。
さびきって刀も抜けねえのか?いや〜!ああっ!あ〜痛い痛い痛い…。
(ハナ)お父ちゃん!お父ちゃんやめて!熊さん!やめろ!ああっ〜!おお〜っ!おおっ大丈夫か?タケさん。
ああっあっ…。
(武井)あと3日だけ待ってやる!
(武井)どけ!会津の魂だ?笑わせんな!親父が大事にしなかったから母ちゃんは早死にした。
親父が殺したようなもんだ。
一馬言い過ぎだ!もう一回言ってみろ!何回でも言ってやる!コノヤロー!
(進)おい!うあっ!ああっ…。
(進)一馬!大丈夫?熊さん!大丈夫?あっ…。
熊さんに謝れ。
熊さんお母さん大事にしてた。
知らないだろ?母ちゃんがどれほど苦労したか。
愛してる人のために頑張る。
苦労じゃない。
愛してる人の夢応援する。
当たり前でしょ。
(ハナ)一馬は小さかったから知らねえべ。
おらちゃんと覚えてる。
母ちゃんがこの家さ建てるのどれほど楽しみにしてたか。
この家守りたいシノさんのためでしょ?違ぁ。
おらシノを幸せにしてやれなかった。
だからこそ残されたハナや一馬にふるさとを残してやりてえんだ。
故郷を追われたおらの夢はいつでも帰ってこられるふるさとをこしれぇる事だった。
やっとこしらえる事ができたと思った。
んだから何言われてもここだけは手放したくなかった!ここはハナと一馬にとってたった一つの帰れる場所…おらたち家族のふるさとだものな!お父ちゃん。
(熊虎)マッサンこの北海道に新しい時代をこしれぇるために来たんだべ?はい。
おらの夢受け継いでくんにか。
わしゃ約束します!わしゃこの土地をわしらの第2のふるさとにします!頼む!しっかり守ってくれ!はい!ありがとう。
組合長わしゃこの土地をニシンだけじゃなぁリンゴだけじゃなぁウイスキーの里じゃそう言われる土地にしたい思うとります!ウイスキーの里?わしらに力を貸してつかぁさい!リンゴを売ってつかぁさい!お願いします!お願いします!おらからも頼む!分かった。
リンゴは分けてやる。
ただし…余市のリンゴでまずい汁なんか作ってみろすぐにこの町からたたき出すからな!はい。
ありがとうございます!ありがとうございました。
見た事あっか?あの熊虎さんがおらに頭下げやがった。
えかったら一馬やハナちゃんもわしの仕事を手伝うてつかぁさい。
お願いします。
分かった。
ただし…また春になってニシンが来たらおら海に戻る。
万が一ニシンが来たらそれでもええ。
万が一とは何だ!もう分かったけん!よろしゅうお願いします。
おい…。
みんな…頑張っていきましょう。
うん!お願いします。
そして1年後。
社長の亀山政春いいます。
ついにマッサンの工場が完成しました。
リンゴ汁の生産を開始します。
ニシン御殿はそのまま残し食堂として使われる事になりました。
ニシン御殿の隣にエリーたちの新しい家も出来ました。
エマ来たど!
(エマ)うわ〜!
(一馬)エマちゃんどこ置く?こっちこっち!ええか?お父ちゃんからのプレゼントじゃ!うんありがとう!マッサン!そして広島からは…。
俊兄!
(俊夫)わしゃただエリーさんに手紙もろうたけんちいと様子見に来ただけでさ。
あっ…懐かしいのう。
とりあえずリンゴ汁を作って売ってそれが軌道に乗ったらすぐにウイスキーに取りかかるけん。
リンゴ汁…?ああ。
どこ行くんじゃ?
(俊夫)わしゃウイスキーを造りに来たんで広島に帰ります!俊兄…。
あっああ!痛い痛い…。
ごめんなさい!大丈夫ですか?どちらさん?ああ…俊兄じゃ。
初めまして。
ハナです。
俊夫です。
(ハナ)工場建てたお祝いの会があるから一緒にどうですか?…はい。
ええリンゴじゃ。
組合長さん頑張ってくれたんじゃ。
よいしょ!いよいよリンゴジュースの生産がスタートです。
(政春)今日も皆さんよろしくお願いします。
(一同)はい。
始業します!
(鐘)操業開始から1か月。
順調にリンゴジュースが作られています。
エマは小学校3年生になりました。
(鼻歌)最近気になる事があるようで…。
・「大好きな人々大好きな明け暮れ」・「新しい『大好き』をあなたと探したい」
(エマ)グッモーニン!
(俊夫)ハハハッ。
エマお嬢さんグッドモーニングでがんす!俊兄「がんす」はおかしい!何がでがんす?どこがおかしいんでがんす?おかしい!その笑い方エリーさんにそっくりでがんす。
じゃあエマの髪の毛もいつかお母さんみたいに金色になる?…なるんじゃなぁですか。
本当?ああ…もうその…この辺とかこう…。
フフフッ!
(ハナ)エマ!早く行かないと遅れるよ!は〜い行ってきます!行ってらっしゃい!ちょっと…変な事言わねえでくれる?エマの髪が金色になる訳ねえべ。
そがな事言われても…。
いい加減な事ばっかり。
へじゃどう言やえかったんじゃ?「エマお嬢さんとエリーさんは血がつながっとらんけん髪の毛は黒いままでがんす」言やえかったんか?シ〜ッ!エマはまだ何も知らないんだからね。
それでは父兄参観のお知らせを配ります。
それと課題の作文の紙も渡します。
作文の題は「わたしのかぞく」です。
余計な添加物は一切使うとらん栄養満点のリンゴ汁なんです。
そうですか。
分かりました。
な〜んで売れんのじゃ…。
(進)ただのリンゴだな。
(熊虎)当たり前だべ。
リンゴの汁なんだから。
(チエ)一本30銭はちょっと高くない?一本にリンゴ5個分の汁が詰まってんだぞ。
リンゴ1個が3銭として5個で15銭…。
一本15銭がいいとこでしょう?ウイスキーの里にするだなんて偉そうな事言ってたけんどこの汁が売れなきゃウイスキーも造れねえんだべ?大丈夫だ!おらが見込んだ男に間違いはねえ!お願いします。
(一同)はい。
言うときますけどがわしゃウイスキー造りを手伝いに来たんでリンゴにゃ興味ありまへん。
早よウイスキー造ってつかぁさい!わしじゃて同じ気持ちじゃて。
(マツ)本当にウイスキーなんか造れんのかね?
(チカ)無理でしょ?リンゴ汁だってちっとも売れてないのに。
(一馬)マッサン電話です。
ジュースの注文か?大阪の野々村さんからです。
(野々村)芳利さんもえろう心配してはってな。
近いうちに一度顔を見せてもらえるとありがたいんやけど…。
日程を調整してまたご連絡します。
(エリー)あっ…。
エマ忘れてる。
エリーが学校へやって来ると…。
異人さんだ。
お母さん。
どうされました?あっ…。
誰誰?こんにちは。
エマがお弁当忘れたので届けに来ました。
間に合ってよかったね。
ありがとう!じゃあ…。
ご苦労さまでした。
すいません。
エマの母ちゃんか?あの人エマのお母さん?
(よしえ)いいな!いつもおいしそうで。
ありがとう!
(ミツル)エマの母ちゃん外国人だったのか?うん。
(タケシ)外国人の娘なのに何でエマの髪は黒いんだ?大人になったら金色になるの!自分の席に帰りなさいよ!
(タケシ)エマと話してんだよ!エマオベントウワスレタトドケニキマシタ!
(ミツル)トドケニキマシタ!・
(エマ)アイムホーム!あっお帰り!
(ハナ)お帰り!エマ靴!・
(エマ)お母さん!おやつある?クッキーあるよ。
わ〜い!大丈夫だった?何が?お母さんの事何か言われた?別に!考え過ぎじゃて!親が外国人じゃいうてバカにするような子どもは相手にせんでええ。
エマもよう分かっとるはずじゃ。
今までどおり親子3人堂々と胸張っとりゃええ。
わしからもよう話しとくけん。
(ノック)・エマ入るど。
おお…宿題か?今からやるとこ。
ああ。
その前にちいとええか?うん。
おいで。
エマ。
ん?世界にはのういろんな人間がおる。
肌の色がどうじゃろうが使う言葉がどうじゃろうがみんな同じ人間なんじゃ。
うん!ハハハッ…よっしゃ!エマも髪の毛が金色になっても堂々と生きていくね!おお!え…?髪の毛が金色?エマは自分の髪の色目の色もエリーと同じように変わる変わりたい思うとるんじゃ。
ほんまの事を話さんにゃいけん時が来たんかもしれんのう。
(タケシ)オハヨウゴザイマ〜ス!エマは異人さんの子どもなのに何でお母ちゃんに似てないんだ?本当は拾われた子どもじゃねえか?違う!エマオベントウワスレタトドケニキマシタ!ワタシニホンゴワカリマセン!ワカリマセン!コンナオカアサンデゴメンナサイ!ゴメンナサイ!フフフ。
おっ。
じゃあね…。
(戸が開く音)こういう事か。
(杉本)亀山さんいるか?今日学校でうちのタケシがあんたの娘に突き飛ばされてけがしたそうだ。
エマどういう事?どうして?ちゃんと説明して。
おとうさん!何ですか?あんた。
子どものけんかに親が出てきて無理やり謝らせるってのはどうなんだ?いや…待ってくれ。
(熊虎)あんたのやってる事はそういう事だべ!違うんだ!何が違うんだ!親父!おらタケシに謝らせに来たんだ。
娘さんにひでえ事言った。
突き飛ばされてもしかたねえような事だ。
(熊虎)何言ったんだ?エマは本当の子じゃない。
拾われた子だ。
ザッツノットトゥルー。
(杉本)早く謝れ!あ〜!こらタケシ!本当すまねえ!失礼します。
人にけがさせるのは駄目。
お母さんの事バカにしたから。
日本語がちゃんと使えないって。
だから腹が立って…。
ありがとう…。
お母さんのせいで。
お母さんは何も悪くないよ。
もう大丈夫。
心配しないで。
ハッハハ…。
(渡)このままやったらウイスキー造り出す前に会社潰れてしまいまっせ。
すいません。
そもそもなジュースという名前があかん。
日本人にはまだまだなじみが薄い。
リンゴ汁でええん違うんかいな?リンゴでもうけてウイスキー造りなはれ。
それまではウイスキー造る事を一切許さん!分かったな!
(キャサリン)エリーやエマは元気してんの?はい。
ほんまかいな。
エマはどうしてる?新しい学校でいじめられてへんか?大丈夫じゃ。
…と思います。
(春さん)何じゃそのお前…入れ歯に物が挟まったような。
(秋)奥歯!
(佐渡)ハハッ。
マッサンほんま幸せ者やな。
みんなこないして心配してもろて。
マッサンの心配してません。
エリーとエマだけです。
(ハナ)そろそろそういう時期が来たのかもしれないね。
エマの本当の親の事…。
傷つけるって分かってる事そんなに急いで教えなくても…。
ずっとうそつかれてたと思う方がよっぽど傷つくべ。
今更そんな事説明してどうすんだ?エマがエリーの子である事は何の変わりもねえ。
親子は親子だ!みんな心配してくれてどうもありがとう。
マッサン帰ってきたらよく話し合ってみます。
ハナのお母さん死んじゃったんでしょ?ハナが小さい時。
ちょうど今のエマと同じぐらいの時だ。
お母さんに似てる?似てるところもあるし似てねえところもあると思う。
エマはお父さんとお母さんどっちに似たのかな?髪の毛が黒いところはお父さんに似たのかな?うん…そうかもしれないね。
ごめんな。
ほかにどう答えていいか分からなくて。
いや…。
そろそろ教えた方がいいと思う。
ちゃんと言おう。
きっと分かってくれる。
エマに大事な話じゃ。
大事な話?エマの髪の毛の色も肌の色もお母ちゃんとは違う理由じゃ。
エマはのう…養女なんじゃ。
ヨウジョ?エマの本当のお父ちゃんとお母ちゃんは…死んでしもうたんじゃ。
死んだ?うん…。
いつ?エマが生まれてからすぐ。
どうして?はやり病じゃったいうて聞いとる。
じゃけんお父ちゃんとお母ちゃんが生まれたばっかりのエマを引き取って今日まで育ててきたんじゃ。
お父ちゃんもお母ちゃんもエマの事実の娘じゃ思うとる。
エマはこの世でたった一人のわしらの大事な娘じゃ。
その気持ちはず〜っと変わっとらん。
じゃけんエマにも…ほんまのお父ちゃんお母ちゃんじゃそう思うてもらいたい。
分かってもらえるか?エマ…。
うん分かった。
エマ父兄参観の作文書けた?ううんまだ。
難しいよね。
本当の事書いたら怒りそうだし。
本当の事?エマお帰り!エマ?宿題やっちゃう。
おやつは?後でいい。
様子がおかしい?靴そろえる。
手洗いも。
宿題もやる。
考え過ぎじゃて。
エマもよう分かってくれたじゃろうが。
だけどマッサン今エマは…。
すまん。
わしゃ今手が離せん。
一段落したら一緒に様子見に行ってみよう。
のう?…はい。
・エマ入ります。
エマ!熱い!熱?おら氷買ってくる。
汗かいてんだったら着替えさせてやった方がいい。
はい。
(熊虎)ちょこっと熱出したぐれえでそっだ大騒ぎすっが?ひどくなったらどうすんだ?まあ父兄参観も近いしな。
作文書けたのかな?お母さん。
お母さん…。
「お母さん」って言ってた。
私の事?それとも…。
エリーの事に決まっとるじゃろうが。
の?お母さん…。
何があっても私がエマのお母さん。
お母さん。
エマ…。
ずっといてくれたの?わ〜よかった。
エマちゃんのお見舞いに来ました。
よっちゃんありがとう。
タケシ早く!自分のせいでエマが熱出したんじゃないかって心配してたから連れてきた。
エマが羨ましかったんだ。
おらにはお母ちゃんがいねえ。
病気で死んじまったから。
だけどエマにはきれいなお母ちゃんがいて毎日うまそうな弁当作ってくれて忘れたらわざわざ届けてくれて…。
だから…本当にごめんな。
もういいよ。
(よしえ)よかったねタケシ。
えかったのう元気になって。
ずっとそばにいてくれてありがとう。
フフフッ…当たり前でしょ。
エマのお母さんです。
ちゃんと分かってるんだけど…。
お母さんがお父さんの夢をかなえるために日本に来ていつも頑張ってエマの事大事にしてくれてる事も全部分かってるんだけど…。
大丈夫。
父兄参観行ってもいい?うん!それとね…お願いがあるの。
エマより先に死なないで。
本当のお父さんとお母さんは死んじゃったからもう会う事ができないんでしょ?だからお父さんとお母さんはエマより先に死なないで。
約束してくれる?エマ…。
分かった。
約束じゃ。
何でいけんのじゃ?先生だけじゃのうて子どもらの分も持っていきゃ問題なかろうが。
病人の見舞いならまだしも父兄参観に親がリンゴジュース持っていくなんて聞いた事ないですって!ほうか!ホスピタル?病院に入院しとる患者さんはもちろんけがや病気で通院しとる人らにも勧めてもらうんじゃ。
リンゴ汁は栄養満点だし体の弱ってる人にはいい飲み物だ。
ほうじゃろう?うん。
早速明日から病院回ってみるわ。
そして父兄参観にやって来た2人。
おお…エマ。
(先生)じゃあ次亀山さん。
はい!エマ!頑張れよ!「私には本当のお母さんとお父さんがいました。
私が生まれてすぐに亡くなってしまいました。
けれども私は寂しくありません。
世界一のお父さんとお母さんがいるからです。
お母さんは料理が上手で歌も上手で。
私が病気になった時は一晩中ずっとそばにいて看病してくれます。
けれども怒るととても怖いです。
お父さんはいつもウイスキーの事ばかり考えています。
夢をかなえるためにお父さんとお母さんはいつも頑張っています。
私は2人の事が大好きです。
私の夢はいつかお母さんみたいな大人になる事です。
そしてお父さんみたいな男の人と結婚したいと思っています」。
・「A−B−C−D−E−F−G」家族みんな笑顔を取り戻し北海道での新しい暮らしが順調に始まったようです。
・「H−I−J−K−L−M−N−O−P」
(俊夫)あっ!
(ハナ)ああっ!あっ…。
何やってんだ?そがなとこに置いとくけんじゃ。
なしてすぐに「ごめんなさい」って言えねえんだ?男はのう簡単に頭下げんのじゃ!
(エリー)どうした?素直に謝りゃ済む話だべ?すいませんでしたのう!何だその言い方!ああっ…。
何をするんじゃ!ノーノーノー…。
けんかはやめて下さい。
・ごめんください。
はい。
・「大好きな人々大好きな明け暮れ」・「新しい『大好き』をあなたと探したい」これはどういう事です?果汁100%の汁だと言いながら一体何を混ぜてるんですか?中にゴミみたいなのが沈んでるでしょ?
(一馬)汁が濁ったのはペクチンが凝固したためだと思われます。
野菜や果物に含まれる天然の糖類の事です。
(政春)品質には何の問題もありません。
このカビは?商品が東京に着いた時にはもうカビが生えていて返品されてきたんです。
船によっちゃ一月以上かかる場合があります。
途中で雨にぬれてカビが生えてしもうたんかもしれません。
そういう問題じゃないでしょう!全て返品させてもらいます。
回収費用も全てそちらで負担してもらいますから!
(熊虎)リンゴ汁の製造はしばらく休む事になるかもな。
(進)こっだ事ではいつまでたってもウイスキーなんか造らんにな。
まあどうにかなるべ。
「明日は明日の風が吹く」ってな!ところで兄さんこれなんだけどな…。
おっ。
ウイスキーなんか永久に造れん!わしゃ何のために北海道くんだりまで来たんじゃ〜!そんなに帰りたかったらさっさと帰りゃいいべ。
普通引き止めるじゃろう。
引き止めてもらいてえの?誰もそがな事は…。
俊夫さんおら俊夫さんがいなくなったらすんごい寂しい!おらのそばにいてくれ!はっ…ハナ。
あっ違う!今のはお芝居だ。
お芝居?
(熊虎)ハナ!ちょっと来い!縁談だ。
縁談!?
(熊虎)青森のリンゴ農家の長男坊だと。
酒も飲まねえ真面目な働き者でハシゴ使わなぐてもリンゴの実がもげるぐれえ背が高えそうだ。
(熊虎)まだ嫁に行く気がねえなら断ってもいい。
よく考えてみろ。
(一馬)さすが進叔父さん。
姉ちゃんの見合い相手まで会津出身の男の人を探して選んでくるとは。
見合いすんのか?ねえ…。
ゆっくり考えればいいよ。
熊さんはどう言うとったんじゃ?「断ってもいい。
よく考えてみろ」。
意外と理解があるんじゃのう。
自分が困るからですよ。
親父にとって姉ちゃんはずっと母ちゃんの代わりだった。
姉ちゃんに全部頼ってたからいなくなると自分が困ると思ってるんですよ。
ハナのお見合いどう思う?俊夫さんは?俊兄がどうしたんじゃ?俊夫さんハナラブ。
ハナ俊夫さんラブ。
あの2人は顔合わしゃよう口げんかしよるじゃろう。
好きだからからかう。
そしてけんかになる。
まさか…子どもじゃあるまぁし。
エリーの考え過ぎじゃて。
俊夫さん知らない?何で?朝ごはん食べに来ない。
どこ行った?どうしたんね?朝飯も食わんと。
リンゴ汁に酵母を加えてやりゃアルコール発酵を起こしてワインに変えられるんじゃなぁか思いましてのう。
返品されたリンゴ汁をワインにして売るいう事か?そのとおりでがんす。
じゃけど何でまた急にそがな事思いついたんじゃ?わしゃ仕事一筋に生きる男ですけん。
四六時中仕事の事しか考えとりまへん!ほうじゃったか?おなごの事も結婚の事も一切興味ありまへん!へじゃリンゴ汁に合う酵母今から探しに行ってきますけん。
俊夫さんハナの事何か言ってた?いや…むしろ「おなごにも結婚にも一切興味なぁ」言うて。
オッホ!それうそ!お見合いの話が来たら2人急にけんかしなくなった。
言われてみれば。
ああ…。
多分ハナ俊夫さん何か言ってくれるの待ってる。
まあとにかく営業から帰ったら俊兄にはすぐに話聞いてみるけん。
ハナもし好きな人いる。
お見合い断った方がいい。
・ただいま。
お帰りなさい。
ハナが肉じゃが作った。
わしゃ飯なんか食っとる場合じゃありまへんけん。
これから研究室で実験をせんにゃいかんのでさ。
俊夫さんごはん要らない。
そう。
研究室届けてあげて。
ええ?おらが?お願いします。
ほう〜!ようこれだけ集めたもんじゃのう。
わしも手伝うわ!あっよがんす!この実験はわし一人でやりますけん。
俊兄には好きなおなごおらんのか?は!?いやもしかしたら…。
わしゃ仕事一筋の男じゃけんおなごなんか興味…ありまへん。
(ノック)
(ドアが開く音)・お邪魔します。
エリーさんに「持ってけ」って言われたから。
へじゃわしゃ。
え!?何の実験だ?酵母を使うてリンゴ汁をワインにする実験じゃ。
酵母?酵母はのう生き物じゃけんのう温度の管理が大切なんじゃ。
寒うなったら鈍うなるし暑うなったらなったで雑菌が増えやすうなる。
酵母はのう酒の命じゃ!じゃからリンゴ汁との相性も大事なんじゃ!よくしゃべんな仕事の話は!どう思う?おらのお見合い。
ええ話じゃなぁか。
そうだね。
じゃけど酒も飲めんような真面目な男はハナには合わんかもしれんのう。
どんな人なら合うと思うの?そりゃ…。
わしには分からん。
ハナが決める事じゃ。
そうだよね!こっち来るど。
はあ…。
分かんねってどういう事だ?まだ考えてんでねえのか?まさか兄さんこの縁談反対なのか?いやそういう訳じゃねえけど。
だったら父親としてビシッと言ってやれ。
(戸が閉まる音)お帰り!どうすんだ?
(ハナ)お父ちゃんはどう思う?迷ってんならとりあえず会ってみたらどうだ?
(俊夫)ぶどう酒酵母が一番ええんじゃなぁかな思いましての。
ワインに生まれ変わらせっ事に成功すれば会社も生き返りますね!どうしたんじゃ?所詮わしには仕事しかありまへんけんのう。
マッサン私言っていい?「言う」って何を?熊さんにハナと俊夫さんの事。
もう…何を言いだすんじゃ。
このままお見合いするのよくない。
いやいやじゃけどのう…。
誰もハッピーになれない!はい。
どうぞ。
今から言う事はまだ一つの可能性の話じゃ思うて聞いてつかぁさい。
可能性?マッサン続きは私から言わせて。
ねっ。
(戸が開く音)熊さん待ってつかぁさい!可能性の話じゃて言うたでしょうが!うわっ痛っ!熊さん!いつの間に手ぇ出した!?ハナと深い仲なんだべ?「深い仲」!?
(熊虎)ラブって言ったべ?ハナと俊夫はラブだって!いやいや…。
いくら田舎者だってなラブの意味ぐれえ分かる!ああ〜離してつかぁさい!はあ…わしゃぬすっと呼ばわりされる覚えはありまへん!エリーが言うたんは別に深い仲いう意味とは違いますて!エリーさんが何言ったか知らねえけどおらと俊夫さんは深い仲でも恋人同士でもねえ。
ただの他人だ!そうだべ?俊夫さん。
ほうじゃ。
ただの他人じゃ。
んだったら何で見合いしたくねえんだ?するよ。
ハナ…。
進叔父さんに言って見合いの話進めてくなんしょ。
私ハナと話す。
マッサン俊夫さんと話して。
何をじゃ?自分の…自分の本当の気持ちちゃんと言わないと後で必ず後悔する。
そがな事は2人がそれぞれ考える事で。
お願いマッサン。
(熊虎)本当にいいんだな?明日進にそう言ってくっつぉ。
それでいいんだな?ええんか?ほんまに。
一人は気楽でよがんす。
自由が一番じゃ。
(ドアが開く音)俊夫さん…ちょっと来て。
来て!何じゃ?おら…おら俊夫さんが好きだ。
俊夫さんはどう思ってるの?おらの事。
わしゃ…父親いうもんを知らん。
物心付く前に親父が病気で死んで母親一人に育てられて。
その母親も…わしが二十歳になる前に死に別れた。
お母ちゃんと仲良うしとるとこも夫婦げんかしとるとこも見た事がなぁ。
自信がなぁんじゃ。
嫁さんもろうたり人の親になった時にどうようにしてええか…よう分からんのじゃ。
言い訳だ。
そんなの意気地なしの言い訳だべ。
それが俊夫さんの答え?分かった。
待て!意気地なしじゃなぁど。
わしゃ…ハナの事が……じゃ。
え?はっきり言って!ああ〜!ハナわしの嫁になれ!嫌だ…。
えっ!?偉そうに命令される筋合いはねえ。
え…?へじゃどう言やよかったんじゃ?自分で考えろ!何じゃその言い方は!何でそうなるんじゃ!ハナ落ち着いて。
早よせんと手遅れになるど。
手遅れ?熊さん!俊兄が話があるそうじゃ。
何だ?実は…。
ハナさんと…。
ええ?ハナさんと…。
あっいけね。
今度山行くから鉄砲磨いとかねえと…。
熊さん!親父!鉄砲なんか後で磨いてつかぁさい。
俊兄!ハナと…夫婦にならしてつかぁさい!お願いします!
(熊虎)俊夫でいいのが?うん!俊夫!
(一馬)親父!熊さん!もしハナを不幸にしたらどうなっか覚悟してんだべな!必ず…幸せにします!
(熊虎)約束だぞ!はい!ハハハッ!俊夫さんハナおめでとう!えかったのう!
(俊夫)死ぬかと思った…。
ありがとな。
そして俊夫とハナの婚約パーティーが開かれました。
(一同)乾杯〜!・すいません遅くなって。
(進)どこ行ってた?
(三郎)せっかくだから差し入れに酒でもと思って行ったら店主にこれ勧められて。
(俊夫)ありがとがんす。
(三郎)鴨居商店のウイスキー丸瓶。
今随分売れてんだってよ。
なあ?マッサン。
(進)んだら飲んでみっぺ。
うん!うめえ。
いけるな。
飲みやすいですの。
(熊虎)おらマッサンがウイスキー造るまで洋酒は飲まね。
この国にウイスキーの時代こしらえるのはマッサンだ。
(一馬)姉ちゃんお願い!
(ハナ)ああはい。
食べ食べ…!
(ハナ)食べて食べて。
そんな中突然大阪の鴨居商店から電話が入り…。
分かりました。
英一郎が…亡くなってしもうた。
亡くなった…?
(鴨居)遠いとこからわざわざおおきにな。
何と言うたらええか…。
他人行儀な挨拶はなしや。
これな…あいつが初めて仕込んだ原酒や。
ちょっと飲んでみてくれ。
(鴨居)うまいか?うまいです。
おいしい。
うそつけ!まだ若い!若すぎる…。
心臓の…発作じゃったんですか?あっという間に逝ってしもうた。
英一郎はいっつも2人の話してたで。
この原酒仕込む時も「工場長やったらどないするやろ。
工場長には負けたない」って…。
大将…丸瓶…うまかった。
お前のおかげで丸瓶は売れた。
お前がおらなんだら鴨居商店はウイスキーを造る事もできなんだ。
英一郎も言うてたで。
「早よマッサンが北海道で造るウイスキーを飲んでみたい」て。
納得のいくウイスキーが出来たら英一郎の墓にも供えたってくれ。
頼んだで!はい!おおきに!回想
(英一郎)我が社のウイスキーには人をいとしんだ時間が詰まっています。
私たちもこのウイスキーと共にもっと成長していきたいと願っています。
お〜!頑張って下さい。
(野々村)リンゴブランデーのための蒸溜機?必ず売れる商品なる思います。
あと10万円増資をお願いします!
(渡)ウイスキー造る訳やないやろな?違います。
お許しを頂けるまで造りません。
ほんまやな?はい。
増資しまひょう。
(拍手と歓声)こうして迎えた俊夫とハナの祝言の日。
うれしいです!
(笑い声)ありがとがんした!
(拍手)へじゃハナちゃん。
(ハナ)お父ちゃん。
ん?今まで本当に…ありがとうございました!
(泣き声)
(拍手)え〜最後にわしから…一つ発表があります。
ウイスキーを…造り始める事にしました。
おっ…。
リンゴ汁はまだ思うようには売れとらん。
じゃけどわしゃ本場スコットランドにも負けん世界一うまいウイスキーをこの北海道で造ってみせます!わしに力を貸してつかぁさい!よし!頑張れ!
(エマ)お父さん頑張って!マッサンは大阪の出資者を欺いてウイスキー造りを始めるという賭けに出たのでした。
(拍手)うん!おめでとう。
(俊夫)おお…まっすぐ!
(佐渡)完成や〜!
(拍手と歓声)ありがとうございます。
地元で取れる水大麦そしてピート。
ハイランドケルトに負けないメイド・イン・ジャパンのウイスキー造りが始まったのです。
マッサンとエリーが北海道余市にやって来て8年がたちました。
(エマ)また戦争の記事?戦争なんかとっととやめてオリンピックやればよかったのにね。
スポーツで勝ち負けを決めればいいのよ。
(政春)エマ…そがな事を女学校で言うたらいけんど。
もちろん。
言う訳ないでしょ。
気ぃ付けよ。
はい。
思うた事をズケズケと。
(エリー)言いたい事ははっきり言う。
ん?私たちがあの子に教えてきた事よ。
・「大好きな人々大好きな明け暮れ」・「新しい『大好き』をあなたと探したい」
(俊夫)ええ具合に熟成が進んどります。
おお!俊兄も分かるようになったんか?お坊ちゃまのウイスキー造りを手伝うようになって15年。
今じゃ酒と言やウイスキーじゃ!ハハハハハッ!ほうじゃのう。
おお…ハハハッ!
(進)んだらついに完成か?
(熊虎)ああもうじきだ。
今は毎日朝から晩までブレンドとやらをしてる。
(チエ)ブレンドって?いろんな樽のウイスキーを混ぜ合わせんだ。
同じ工場でも仕込んだ日や保管する場所同じ倉庫の奥か手前かによって全然違う味になるんだとよ。
(三郎)そのブレンドってのはうまいんですか?当たり前だべ!6年も熟成させたんだ。
出来た。
(一馬)やった!亀山ウイスキー完成だ!スコットランドから帰国して20年。
マッサンが目指したウイスキーがついに完成したのです。
(俊夫)おめでとうがんす!
(エマハナ)おめでとう!いや頑張ったかいがあったな。
(ハナ)別にお父ちゃんが頑張った訳じゃねえべ。
ハハハハハッ…。
お母さんも飲んでみたら?
(俊夫)ほうじゃ。
エリーさんこそ飲んでつかぁさい。
おいしい。
(拍手)さあ今夜はお祝いだ!マッサン…どうしたの?このウイスキー…売れるんじゃろうか?昔と違う。
ウイスキーのおいしさをみんな分かってるよ。
このウイスキーは丸瓶よりははるかにクセもスモーキーフレーバーも強い。
これも同じように売れるとは…。
マッサンが信じた味でしょ。
私も信じる。
(エマ)どうですか?
(ハナ)おいしいよね?どうせ高いんでしょ?ウイスキーは。
手間ひまかかってんですから。
これ造るのに6年もかかってんだよ。
買う側にとってはそんな事関係ないからね。
だからそれを確かめに来たんですよ。
(上杉)あの…ウイスキーには目がないんですよ。
一杯よろしいですか?上杉さん…。
(上杉)しがない物書きです。
いかがですかのう?うまい!え?ハイランドケルトに似てますね。
わしゃまさにその…ハイランドケルトの味を目指してブレンドしたんです。
(上杉)道理で!北海道にはお仕事で?亀山さんを訪ねてきました。
鴨居商店をお辞めになって北海道に行かれたと聞きましてね。
本場スコットランドで学ばれた亀山さんが北海道でどんなウイスキーを造っておられるんだろうともう居ても立っても居られなくなりましてね。
ああ…。
亀山さんには是非頑張ってもらいたい。
えろう勇気が湧いてきました。
さあもう一杯!どうぞ。
ありがとうございます。
亀山さんジャパニーズウイスキーの歴史を作って下さい。
何があっても諦めてはいけませんよ。
はい!数日たったある日。
これじゃこれ!「日本のハイランドケルト」。
わしらのウイスキーの事を書いてくれとる。
「本場スコットランドのハイランドケルトにも負けん」いうて書いてある。
ハハッ!アハハッ…マッサンすごい!
(エマ)上杉さん書いてくれたんだ。
うん。
ああ。
大阪の出資者に連絡取ろう思うとる。
黙ってウイスキー造りを進めてきた事を報告せんにゃいかん。
大丈夫!きっと分かってもらえる。
あんなにすばらしいウイスキーを造ったんだから。
・北海道の亀山です。
折り入ってご相談がありまして。
・ご都合のよろしい時にこちらから伺いますんで。
(野々村)芳利さんと日程を決めてまたこちらから連絡します。
ところが数日後…。
こちらから大阪にお伺いすると伝えたはずじゃったんですが…。
これまでこの工場の事を任せきりにし過ぎてたという話になりましてね。
見に行こうという事になったんですよ。
(渡)それで相談っちゅうのは何や?はい…。
この工場で造ったウイスキーです。
ちょっと待ちいな。
何を言うてんねんな。
申し訳ありません!まさか出資者の我々に黙って…?すいません!アホンダラ!ごめんで済んだら警察要らんわい!ごめんなさい。
だけどマッサンウイスキーを造る夢を実現するために北海道に来ました。
あんたらの夢に出資したやないねや。
利益を上げてもうけるために金出してんねや。
この商品は売れます。
必ず売ってみせます。
ですからこの機会にリンゴ関連の商品を全てやめてウイスキー一本で勝負さしてつかぁさい。
まずは一口わしが造ったウイスキーを飲んでみてつかぁさい!結構クセが強いですね。
そのスモーキーフレーバーこそ本場スコットランドの味なんです。
渡さんも是非…。
わしはええわ。
これもし飲んでコロッと変わったら…その手には乗らへんで。
(野々村)どうでしょう?ここまでお膳立てしてしまった商品を売らんいう手はないと思うんですけど。
う〜ん…。
(ドアが開く音)・ただいま!
(エマ)ただいま!お帰り。
久しぶりやな。
(エマ)野々村のおじさん!すっかりおねえさんになって。
おなかすきませんか?私におもてなしさせて下さい。
いや…エリーちゃんがおもてなしを?はい。
(福田)ウイスキーを売り出せない?
(チカ)この会社の実権を握っている出資者が首を縦に振らねえから…って工場長が。
(福田)え〜!?
(チカ)もう駄目かもな…って工場長が。
(野々村)これはすごい!
(渡)おおこれはエリーちゃん大したもんや。
(渡)頂きます。
はい。
(野々村)頂きます。
うん…うまい!あっよかった。
(渡)これはイカの塩辛か?えらいちょっと真四角なんやけどな。
その方がおいしいってマッサンが。
あっそうか。
ハハハハハッ…。
せやけどあんた幸せ者やな。
西洋人の奥さんにここまでしてもろて。
これで幸せにできへんかったら罰当たるで。
そのためにも是非ウイスキーを売り出さしてつかぁさい。
今エリーちゃんの料理の話やってんねやないかいな。
これでウイスキーがパーになって会社がパーになったらおらたち何のためにマッサンにこの土地託したんだ?…って俊夫は言ってなかったか?会社がパーになってもおらとの結婚はパーにせんといてくれ!…って泣いてた。
自分の事ばっかしじゃねえか。
(オルガン)シッシッ!
(エマ)・「マックスウェルトン岸邊は、」・「誓ひ交す、」
(エリーエマ)・「Gi’edmeherpromisetrue−」・「Whichne’erforgotwillbe,」・「AndforbonnieAnnieLaurieI’dlaymedownanddee.」
(拍手)ハハハハハッ…!ありがとうございます。
2人との出会いがなければ私たちはここまで来る事できませんでした。
勝手にウイスキーを造ってしまった事本当にごめんなさい。
だけどマッサンの造ったウイスキーはとてもおいしいです。
是非飲んでみて下さい。
そして売り出す事お許し下さい。
お願いします。
芳利さん。
(戸が開く音)・
(一馬)親父!
(ハナ)お父ちゃん!
(渡)何や?あんた。
あんたらマッサンを信じてマッサンに金を預けたんだべ?だったらとことん信じてやったらどうだ?北海道にマッサンが来た時マッサンは言った。
ウイスキーの里じゃそう言われる土地にしたい思うとります!
(熊虎)おらそのマッサンの言葉を信じてこの土地をマッサンに託した。
んだからな〜んも口出ししねえ。
ただ信じて待ってる。
人が人を信じるってのはそういう事でねえべか?お願いします!お願いします!お願いします!はあ…。
分かった!エリーちゃんすばらしいおもてなしやったな。
ありがとうございます。
(渡)エマちゃんおおきに。
亀山さん。
ウイスキー一本で商いするんやったらそれ相応の覚悟を持ってやってもらわな困ります。
言うまでもありません。
このウイスキーに…全てを懸けとりますけん。
いよいよ出荷の準備に入ります。
(一同)あっ…!この余市の町をニシンの頃より更に活気のあるウイスキーの里にしたい思うとります。
どうか皆さんよろしゅうお願いします!
(拍手)中身の味もええがそろそろ…ウイスキーの商品名決めた方がええのうお坊ちゃま。
北海道果汁略して「ドウカ」。
「ドウカ」はどうかな〜。
え?いいんでね「ドウカ」。
(熊虎俊夫)えっ!?こうしてみたら?
(一馬)この「H」は?
(エマ)北海道の「H」。
ハイランドケルトの「H」。
ええのう!おお!のう?ハハハハハッ…!よっしゃ。
待ちに待った初出荷。
マッサンのウイスキーが世に出る日がやって来ました。
おめでとうお父さん!おめでとう!
(ローズマリー)エリー…。
郵便です。
一方ドウカウイスキーは発売から半年近くたっても一向に売り上げが伸びませんでした。
また返品か?
(俊夫)…はい。
・
(一馬)勝手に入られたら困ります!
(俊夫)どうしたんですか!?おっ社長。
今日はな大麦の代金絶対払ってもらうからな!今月分の社員の給料もまともに払えるかという状況でして…。
えっ…。
もう少し待ってつかぁさい!どうしたんじゃ?俺たちの給料は後回しにして業者の支払いやみんなの給料を優先して下さい。
みんなありがとう!ところが…。
(渡)何の話か分かってはるな?まだなかなか結果を出せず…。
何を寝ぼけた事言うてんねん。
結果はもう出たがな。
負けや負け大負けや!会社は畳んでもらうで。
あんたはな賭けに負けたんや。
貯蔵庫にはまだ6年分のウイスキーが眠ったままです。
そのとおりです。
もっぺん…やり直さしてつかぁさい。
是非そうして頂きたい。
ほんまですか?別の商品に作り直して売って下さい。
会社を畳むのはそのあとです。
もう一つ今いる30人の社員工員を半分にして下さい。
半分?そりゃ無理です。
もしそれができないならあなたに工場から出てってもらいます。
そんな中マッサンを訪ねてきたのが…。
(大作)亀山政春いてますか?そこまで追い詰められるとは…。
どないするんや?迷うとります。
大将んとこの丸瓶何で売れたんじゃ思います?宣伝か…?年月じゃ思うとります。
鴨居商店の貯蔵庫にはいろんな熟成期間の原酒がそろうとります。
それを確かな感覚を持った大将がしっかり吟味してブレンドしたんが丸瓶じゃと。
ウイスキー造りはず〜っと先の未来へ続く夢なんです。
今わしらが造って仕込んどる酒はわしらがこの世からおらんようなったあと遠い未来に生きてくるんです。
50年…100年後にはもしかしたら…本場スコットランドを超えるようなジャパニーズウイスキーが出来とるかもしれん。
答え出とるやないか。
全社員…ニシン御殿に集めてくれ。
え!?我がドウカウイスキーは倒産の危機にある。
もちろん全ては社長であるわしの責任じゃ。
ほんまに申し訳ない!ただこれからもこの会社を続けていくために…人員整理を行う事にした。
(一同)えっ!?今から名前を呼び上げる人はこの会社を辞めてもらう。
「福田栄一さん田中マツさん遠藤チカさん…」。
(足音)・
(俊夫)お坊ちゃま!わしにも手伝わしてつかぁさい。
お坊ちゃまを信じてどこまでもついていきまさ!やるど!へい!
(一馬)マッサン大変です!海軍さんが来た!やはりこんなものか。
「こんなもの」?実は欧州の戦争の影響で洋酒の輸入が難しくなってきてなウイスキーを大量に確保しておく必要に迫られている。
全て海軍で買い上げよう!
(俊夫)えっ!?まっウイスキーの味も分からんような連中にはこの程度でも十分だろう。
今日からここを海軍指定工場とし今後ここで生産されるウイスキーは全て海軍の買い上げとする。
よろしいかな?行くぞ。
(2人)はっ!
(一馬)工員を削減する必要がなくなった…って事ですよね?ほうか。
ほりゃほうじゃ。
(一馬)今すぐみんなに知らせましょうよ。
(俊夫)おお!えかった。
そして…。
(ラジオ)「臨時ニュースを申し上げます。
帝国陸海軍は西太平洋においてアメリカイギリス軍と戦闘状態に入れり。
帝国陸海軍は本8日未明…」。
ついに日本とエリーの祖国スコットランドを含む連合国との戦争が始まったのです。
・「大好きな人々大好きな明け暮れ」・「新しい『大好き』をあなたと探したい」マッサンの工場は海軍の指定工場となり軍隊に納めるウイスキー造りで大忙し。
出荷量をもっと増やせないか?まだまだ酒が不足しているのだ。
(政春)じゃけど6年物の原酒には限りが…。
今我々が必要としているのは質より量だ。
どんどん造ってくれ。
分かりました。
(ラジオ)「巡洋艦1隻駆逐艦2隻。
中型輸送船3隻。
撃破…」。
(チエ)表に貼っといたよ。
後で商店街にも配ってくるから。
(熊虎)ああすまねえな。
このご時世に働き手募集するなんてマッサンの工場もすごいね。
(三郎)お国のために酒を造る。
誉れですよ誉れ!ハハハハハッ…!おっエリー。
(進)どうしたんだ?
(チエ)血が出てる!おい!
(エリー)石を投げられて…。
(進)誰に?男の子たち。
「非国民」「国に帰れ」「鬼畜」。
どこの悪ガキだ。
見つけたらただじゃ済まねえぞ。
(ハナ)んだけど石投げた子どもだけ責められねえよ。
何で?町の至る所に「鬼畜米英」って貼り紙があるもの。
エリーは日本人だ。
なあ?エリー。
(エマ)何これ!誰?こんな卑劣な事したのは!どうしてそんなひどい事!石を投げた子どもたちは外国人は敵だと教えられてる。
しかたない。
お母さんは敵じゃない。
今の日本はどんどんおかしくなってる。
コロッケの事は油揚げ肉まんじゅう。
カレーライスは辛み入り汁かけごはん。
カレーライスをカレーライスって言って何が悪いの?エマ!外でそがぁな事言うたらいけんど。
お父さんの言うとおり思っている事を口にする時場をわきまえなさい。
お母さん時々ずるい。
「言いたい事ははっきり言え」って言ったり「場をわきまえろ」って言ったり。
エマ!ごめんなさい。
エマがお母ちゃんの事を大事に思うんじゃったら余計な事を絶対外で口にすな。
英語で話するんも…この家の中だけじゃ。
はい。
わしゃ2人の事を絶対守るけん。
フフフッ…。
頼りにしてます。
ウイスキー工場採用面接の日。
(秀子)お母ちゃん。
あさってまでにはご連絡さしてもらいます。
はい。
(一馬)ご苦労さまでした。
次の方どうぞ!その花の名前知ってる?ナデシコ!そう。
こんにちは。
こんにちは。
亀山エリーです。
私中村秀子。
みんなにはデコって呼ばれてます。
(美紀)主人は出征して先月戦死の公報が…。
お国のためとはいえあんたも大変だな。
娘と2人食べるものにも着るものにも困ってるんです。
エリーの買い物手伝ってもらえ。
エリー…?
(熊虎)社長様の嫁さんでエゲレスのスコットランド出身だ。
熊さん…。
ん?イギリス?
(秀子)羨ましいな。
女学校行ってんだ?最近あんまり楽しくない。
愛国教育ばかりで。
エマ!でも行ってみたかったな女学校。
たくさん本が読めるでしょ?それに私学校の先生になりたかったんだ。
先生に?うん。
・秀子!何してるの?そんな所で。
面接終わった?すいません。
秀子の母で中村美紀です。
亀山エリーです。
(秀子)こっちがエマ。
そんな気安く…おまけにごちそうになるなんて。
お母ちゃんがここに何しに来たか分かってる?本当に申し訳ありませんでした。
デコ…お土産持って帰って。
本当ですか?やめて下さい!すいません。
でも本当に結構ですから。
ほら行くわよ。
(俊夫)何人雇う事にしたんでがんす?12人じゃ。
ええっ!?そがにようけ…。
戦争で潤うとるうちの工場がちいとでもようけの人に還元するんはわしらの務めじゃ。
明日からビシビシ鍛えてやろうわい!ハハハッ…。
お皿はここ。
…とフォークナイフスプーンここにあります。
これ本物の銀ですか?舶来のものもたくさんあるんですね。
うわ〜!白いお米だ!
(美紀)やめなさい。
はしたない。
ただいま!あっお帰り。
デコ!エマ!
(エマ)来て。
デコ明日からずっといるんでしょ。
うれしい。
お父さんありがとう!・こんばんは〜。
今の声…。
まさか!キャサリン!キャサリンどうしてここに?
(キャサリン)シ〜ッ!お久しぶりです。
種子です。
訪ねてきたのは大阪の友人キャサリンでした。
うちはチャーリーと一緒に英国に行く事に決めた。
エリー一緒に行こ。
今の日本で外国人が暮らしていくのは大変や。
憲兵や特高も隙あらば逮捕したろうって戦争に反対する者や外国人に常に目光らせてる。
スパイ容疑で取り調べ受けたら拷問で命を落としてしまう人もおるらしい。
落ち着いて聞いてや。
マッサンと離縁するんや。
交換船に乗って英国に渡れるのは英国籍の人だけや。
そやから英国に行くにはまずマッサンと離縁して英国籍に戻さなあかん。
あくまでも戦争が終わるまでの形だけの離縁や。
じゃけど…。
捕まったらどうするの?拷問されたらどうするの?エマ…お父さんが守ってくれる。
お母さんだけでも逃げて。
お願いだから船に乗って!お母さんは何も悪い事してない。
あんたの気持ちはよう分かる。
そやけどな人間死んだら終わり。
命を落としてしもうたら何もかも失ってしまう事なるんやで。
お互いにや!わしら冷静になってよう話し合いますけん。
何言ってるの!マッサン!話し合う必要ない。
エリー。
私はここにいる!ごめんなさい。
失礼します。
お母さん。
エリー。
(キャサリン)エリー。
今度の船が最後になるかもしれん。
何かあってからでは遅い。
はい。
わしらの人生何じゃったんじゃ。
わしがエリーを連れて帰ってきた事が悪かったんかのう…。
わしと出会うてしまったばっかりに…。
そりゃ違いますで!エリーさんは自分で日本に行く言うて決めんさったんじゃろう?絶対後悔はしとりまへん!なら…何で離れんにゃいけんのじゃ。
おかしいじゃろうが。
わしが今あるんはのうエリーのおかげなんじゃ。
わしゃまだ何も恩返しできとらん。
今一番大事なんはエリーさんの身の安全でがんす。
このまま日本におってほんまにエリーを守りきれるんかいうて。
わしゃ怖い。
怖ぁてしかたない。
・失礼します。
すいません。
この部屋だけまだお掃除が…。
この部屋はプライベートの部屋だから私が掃除します。
分かりました。
失礼致します。
・待て!お母さんは船に乗った方がいいと思うの。
英国籍に戻すには何日もかかるんじゃない?間に合わなくなったらどうするの?本当にお母さんの事考えてる?ええ加減にせえ!お父さんはちゃんと考えてくれている。
知っとるじゃろうが。
お母ちゃんはわしの世界一の嫁さんじゃ。
お母ちゃんにとって一番ええ方法をわしゃちゃんと考えとる。
大丈夫大丈夫。
エリー…死んだらいけんのじゃ。
・マッサン!これ何?離婚届じゃ。
マッサン…本当にそれでいいの?・
(足音)これは一体何事ですか?亀山エリーのスパイ容疑で家宅捜索する。
スパイ?大阪の住吉聖アンデレ教会の女と何を話した?大阪の古い友人で久しぶりに再会して…。
何を話したかと聞いとるんだ。
何だその目は…。
貴様!国家に刃向かうのか?こがぁな事が許されるんですか?会話の内容については黙秘するんだな。
一緒に英国に渡らないかと…。
で?妻は…私と別れ…英国に帰ります。
帰りません。
どっちだ?敵国人はおとなしく国に帰ればいい。
それともまだこの国でやる事でもあるのか?捜索開始!
(一同)はっ!やめて!何で…何でこんなひどい事ができるの!?エリー!抵抗するなら連行するぞ!絶対抵抗すな!どうしてマッサン…我慢できない!死んだらいかんのじゃ!お父ちゃん。
ひでえ事しやがる。
助けに行かなきゃ。
抵抗すりゃするほど向こうの思うつぼだ。
じゃどうすんの?うん…。
敵国とひそかに手紙のやり取りもしとるそうだな。
持ってこい。
寝室の引き出し2段目の引き出しだ。
はっ!何でそがな事知っとるんじゃ!発見しました!やめて!返して下さい!お願いします!ご苦労!押収する。
エリー!エリー!みんな聞いたな?連行しろ!
(一同)はっ!触るな!エリーを連れていくんならわしも連行してつかぁさい!貴様!あっ!マッサン…。
敵国人の女に惑わされて皇国臣民として恥ずかしいと思わんのか!エリーはこの国で誰よりも日本人になろうとした。
正真正銘の日本人です!こんな目をしたこんな服を着た日本人がどこにおる!お父さん!エマ!下がっていろ!来るな!抵抗する者はみんな連行だ!亀山エリーはわしの妻です!国家に盾つく気か?わしら夫婦は生涯…この国で生きていきます!エリーを連れていくんならわしも連れていけ!やめて!マッサン大丈夫!鬼畜が本性現したな。
私を連行して下さい。
私はここにいてはいけないのですか?どうしてここにいてはいけないのか私に分かるように教えて下さい!私が日本人ではないからですか?私はあなたと同じ人間です。
私は亀山エリーです!私にはこの国に愛する夫がいます。
愛する娘がいます。
ここには私の家族がいます!ここは私のふるさとです!連れ帰って徹底的に取り調べる。
連行しろ!離せ!マッサン。
おいエリー!エリー!大丈夫!
(エマ)お母さん!エマ。
お母さん!アイラブユーディア。
早く連れていけ!お母さん!大丈夫!エリー!・待て!何の騒ぎだ!一体何事だ?この英国人をスパイ容疑で取り調べます。
我が国の情報を敵国に流した容疑であります。
取り調べは手紙の内容を確認してからでも遅くはないと思うが…。
しかし…。
ここは海軍省指定工場だ。
この人がスパイだとしたら我々の監督不行き届きという事になるが…そう言いたいのか?分かりました。
では手紙を調べた上で出直します。
行くぞ!はっ!エリー!お母さん!エマ。
けがはないか?ありがとうございます!誤解するな。
日頃からあいつらの乱暴なやり方が目に余ると思っていただけだ。
日本に…おってくれ。
エリーが捕まるならわしも一緒に捕まる。
この手…離すなよ。
今日本はエリーが生まれた国と戦争しとる。
じゃけどエリーは誰よりも日本人の心を持ったスコットランド人じゃ。
どうかわしらに力を貸してつかぁさい。
よろしくお願いします!おら応援すっから!ありがとう。
(熊虎)全力でエリーを守るだけだ。
(俊夫)うん!わしがおったらそがな奴らトントントンッて蹴散らしとったんだ!
(笑い声)
(拍手)よかったね。
どうしたの?それにしても特高は何で家ん中まで…。
いや…。
エリーさんが手紙を置いていた場所まで知ってたなんて…。
ああ…。
(美紀)申し訳ありませんでした!
(俊夫)ん!?私が…教えたんです。
私の主人はマレーの戦いでエリーさんの国の人に殺されたんです。
悔しかったんです。
日本人の私たちが食べるもの着るものもなくて苦しんでるのに外国人のエリーさんはこんな立派な家に住んで何不自由なく…。
ごめんなさい。
私美紀さんの気持ち分かりませんでした。
間違っていたのは私です。
昨日のエリーさんの姿を見てよくそれが分かりました。
エリーさんは私たちと同じ人間なんだって事が。
ありがとう。
日本で生きていく事を決意したエリーとマッサン。
間もなく迎える暗黒の時代に2人は懸命に立ち向かっていくのです。
2015/12/30(水) 13:20〜15:00
NHK総合1・神戸
マッサン 愛と冒険の日々をもう一度!「第16週〜第20週」[字]
マッサンとエリーが帰ってきた!連続テレビ小説「マッサン」を第16週から第20週までダイジェストでお送りします。北海道・余市で理想のウイスキーをつくれるのか!?
詳細情報
番組内容
昭和8年、北海道へやって来たマッサン(玉山鉄二)とエリー(シャーロット)は以前出会った熊虎(風間杜夫)を訪ね、ウイスキーづくりの資金調達のためリンゴジュースの製造を始める。そんな中、鴨居(堤真一)の息子・英一郎(浅香航大)の訃報が届く。鴨居と再会したマッサンは、出資者の許可がないままウイスキーづくりを開始するも全く売れず、会社は倒産の危機に陥る。人員整理しかないという状況のなか、海軍が現れて!?
出演者
【出演】玉山鉄二,シャーロット・ケイト・フォックス,八嶋智人,小池栄子,濱田マリ,優希美青,堀井新太,酒井若菜,温水洋一,螢雪次朗,北大路欣也,西川きよし,風間杜夫,堤真一 ほか
原作・脚本
【作】羽原大介
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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