グレーテルのかまど「中原淳一のクリスマスケーキ」 2015.12.30


(かまど)キラキラ輝く大きな瞳。
鮮やかな衣装が印象的な女性たち。
これらの絵が描かれたのは今から50年以上も前。
描いた人の名は…画家ファッションデザイナーそして…戦後間もなく創刊した雑誌の編集長として女性が「美しく生きる」ための情報を提案し続けました。
彼が発信した衣・食・住のノウハウ。
それは当時の女性たちの圧倒的な支持を受けました。
その中の一つにまだなじみがなかったクリスマスケーキの記事があります。
毎日の食べ物にさえ不自由していた時代のクリスマスケーキ。
今日は中原淳一が提案したクリスマスケーキと共に女性たちに美しく生きる事の意味を伝えようとした中原淳一の思いに迫ります。
光る石をたどれば行き着く不思議な家にあのお菓子の家のヘンゼルとグレーテルの末えいが暮らしています。
彼らが振る舞うおいしいお菓子の物語をご賞味あれ。
「グレーテルのかまど」へようこそ。
うれしい時悲しい時もうひとふんばりしたい時一口頬張ると何だか元気が湧いてくるのがスイーツ。
その一つ一つに思いがけない誕生のドラマやその味を愛してやまなかった人々の物語が秘められています。
そんな不思議なスイーツの物語を我が家のかまどで最高においしく焼き上げましょう。
こよいひもとくお菓子は「中原淳一のクリスマスケーキ」。
流行に敏感なこの街に中原淳一の魅力を伝える店があります。
女性や花をあしらった文具や雑貨中原がデザインした洋服が並び今再び注目を集めています。
母娘の親子3代でファンだという方も。
いつでも華があって夢があってそして一番自分の一番いい年代に戻れるっていう。
かえって新しいというか。
シンプルでありながら華やかででも華やかでありながら華美でない。
「美しくある事」がいかに大切かを追求した中原淳一。
女性たちへ多くの言葉を残しています。
中原淳一は33歳で出版社を立ち上げ「それいゆ」「ひまわり」など女性向けの雑誌を発行。
編集長としてコンセプト作りから表紙のイラスト作家や女優への原稿の依頼まで自ら手がけました。
時代を先取りした洋服のデザインも次々と発表。
誰もが自分で作って着られるように型紙も付けました。
少女たちはみんな「おかっぱ頭」の時代。
表紙にはかわいらしく見えるヘアスタイルを描き読者が自分で結って楽しめるよう丁寧な解説記事を載せました。
またたとえ狭い部屋でも美しく暮らせるような具体的アドバイスも。
シーズンオフに安く生地を手に入れてカーテンを手作りしたり余り布をタペストリーにしたり。
戦後物のない時代に中原淳一は女性たちに向けてさまざまなアイデアを示し美しく生きる事を呼びかけたのです。
あらヘンゼル君何見てるの?え?いやこれさ姉ちゃんが夢中になってたから何かなあと思って…。
ああちょっと!それ「それいゆ」じゃないの。
知ってんの?知ってるわよ。
その雑誌ねもう50年以上も前に日本中の女性たちが夢中になって読んだ超超超人気雑誌なのよ。
へえ〜。
この女性もすごく色気というか品があるしさおしゃれだしさ。
そんな前なんだ。
そうよ。
なんか今どきの人みたいだよね。
うん。
ちょっと似てるわよ。
えっ似てる?あっ似てる…目が逆だったけど。
アハハハ!そのイラストを描いたのは中原淳一さんというすごい才能のある人なんだけども。
その雑誌の編集長でもあってアートディレクターでもあってライターでもあってファッションデザイナーでもあるのよ。
何それ…。
すごいマルチの才能でしょ。
すごいね。
すばらしい人なのよ。
あっそうだかまどかまどこれ見て。
あら。
じゃあ美しく生きるって事をこのキッチンの中でもできちゃうかもしれないから考えてみましょう。
このキッチンで?はい。
そういえばここの花はなんか変わったような気もする…。
変わった事に気付きましたか?うん。
その花をちょっと1輪キッチンの方にも。
1輪切る?添えてみたらどうかなと思って。
はい1輪切ったけど。
かわいい〜。
一輪のその素敵さ大切さちょっと感じてみてよ。
うん…。
感じてみた?その大切さかみしめながらいってみましょう今日。
もうすぐクリスマスだし。
中原淳一は終戦直後読者にクリスマスを楽しもうと提案しています。
砂糖が貴重品だった当時手に入る材料と身近な花を飾って少しでも美しくと提案しました。
こちらは「ひまわり」1948年12月号に載ったクリスマスケーキ。
当時庶民には手が届かなかった生クリームの代わりに卵と牛乳で作るカスタードクリームだけを使ったユニークなケーキです。
え〜1948年ってさ戦後間もない頃だよね。
そう3年後よ。
その食べるのにも大変だった時期にクリスマスケーキのレシピをしかもテーブルセッティングと共に雑誌に載せてたんでしょ。
すごくない?すごいのよ。
という事で今日は中原淳一さんが提案したクリスマスケーキに挑戦してみようと思うのよ。
かなりユニークなものです。
なになに?フフッ心して取り組んで下さい。
分かりました。
では早速あれいっちゃって下さいませ。
あれね。
は〜い。
美しくするだけじゃないからね。
いつも以上に心を込めて下さいよ。
分かりました。
さてスポンジ作りから始めます。
ここでオキテ下さい。
あれ?今までってさ全卵使ってたよね。
全卵使ってたのよ。
だけど今日は白身だけで泡立ててほしいの。
中原さんの本にそう書いてあったから。
まねしてみる。
よし!いつもだったらハンドミキサーでやるでしょ?初めてじゃない?うん。
実はねその当時50年以上も前のレシピあるでしょ。
それに「分けて混ぜて下さい」って書いてあるのは多分白身だけで混ぜた方が泡立てやすかったんじゃないかと思うの。
確かにもう既にちょっと泡立ってるもんね。
バニラエッセンスも2〜3滴。
軽く混ぜたら…はいそれでスポンジ生地出来上がりです。
よ〜し!それで型に流し込んでいきましょ。
OK。
ではオーブンで焼きますよ。
よ〜し。
180℃で20分です!分かりました。
スタート!中原淳一は1913年敬虔なクリスチャンの家に生まれました。
幼い頃から絵が得意でいつも2人の姉のそばで絵を描いたり人形遊びをして楽しんでいたといいます。
19歳で少女雑誌の挿絵画家としてデビュー。
一躍人気者となりました。
しかしその活動は戦争によって中断されます。
中原も召集され苦しい月日が流れました。
1945年終戦。
東京に戻った彼の目に映ったのは一面の焼け野原。
そして命をつなぐ事に追われ「美しくする事」を忘れた女性たちの姿でした。
中原は私財を投じて女性向けの雑誌を作る事を決意。
終戦から僅か1年後の…「ソレイユ」とはフランス語で太陽に向かってまっすぐに伸びるひまわりの事。
創刊の日を8月15日とした事にも中原の強い意志が表れています。
巻末にはこんな文章を載せました。
「戦争よ!さよなら」。
更にこんな言葉も…。
そういう事か。
人間だから花を飾るって事なんだね。
うんそうね。
ヘンゼルにも一輪の花の意味が少しずつ分かってくるんじゃないかしら?さてさてスポンジが焼ける間にスポンジに塗るクリーム作りをしますよ。
じゃあ今日はなんとカスタード風味のクリームを作ります。
あっカスタードはもう大丈夫だよね。
シュークリームの時にやったし。
やったんですけれどやったんですけれども。
シュークリームはカスタードを中に詰めたでしょ。
今度はスポンジの周りに塗るわけよ。
うん。
まあでもなんか一応経験してるから大丈夫…。
難しいかな?難しいです!ともかく最初は基本のカスタード作りから始めるわよ。
じゃあまずはボウルにお砂糖と薄力粉を入れて下さい。
しっかり混ぜて小麦粉のダマを取って下さいね。
じゃあねオキテいってちょ!はい!バター!?カスタードクリームにバター?どういう事?なぜバター入れるかというとクリームがすごく滑らかになるのバター入れる事で。
更に?そうそう。
という事はケーキに塗りやすくなるわけ。
さっき周りに塗るって言ったでしょ。
その上に味わいが濃厚で口どけも良くなるわけよ。
ほ〜いい事ばっかだなあ。
いい事ばっかですよ。
これね中原淳一さんのオリジナルレシピにはないのよ。
実は。
だけどバターを加えてみました。
かまどスペシャルだ。
よ〜しOKかな。
OKかなOKです。
「カスタード風味のクリーム」完成です!ちょっと一息ティーブレーク!中原淳一が提案したスイーツの楽しみ方をご紹介!人形作家で料理研究家の牧野哲大さんはかつて雑誌「ジュニアそれいゆ」の料理ページをご担当。
中原の思いを直接受け継いだ方。
今回は中原が大好きなマーガレットを使った飾り付けを紹介して頂くわよ。
1つ目はロールケーキ。
アプリコットのジャムを巻き込んだ定番のロールケーキにマーガレットの花をあしらいました。
まるでお花畑のようね。
う〜ん乙女チック!続いてはフルーツポンチ。
グレナデンシロップが鮮やか!レモン汁を加えて爽やか〜な喉ごしの一品よ。
星形のリンゴもおしゃれ!ふだん使いのサラダボウルもマーガレットで素敵なパーティーウエアに変身!このアイデアクリスマスでも活躍しそうね!そして中原がイメージしたクリスマスケーキを牧野さん流に生クリームでアレンジ!日常の中にあるものの中でそれを美しく相手を楽しくさせるという事はやっぱり淳一先生の願いであったと思うんです。
ねえこの作ったスイーツにさちょっと花を添えるだけで雰囲気がガラッと変わるよね。
うん。
華やかになるというか。
見た目大事だよね。
大事よ。
だってうれしくなるし。
じゃ焼けたスポンジを取り出してみましょうか。
OK。
どうですか?上手に焼けてると思います。
じゃあ型から外して冷めるのを待ちましょう。
ではケーキの完成作業に入りますよ。
OK!じゃあスポンジにクリームを塗っていきます。
が…。
中原さんの描いたクリスマスケーキのイラストを参考にしながら進めていきますよ。
まず上にクリームを塗ってちょうだいね。
ああでもやっぱりちょっと違うんだな。
そうでしょ。
シュークリームの時のカスタードとは全然違うでしょ。
何かねうん…。
じゃ今度側面塗っちゃって。
結構分厚く塗ってるけど。
うんいいのいいの。
じゃあ側面を仕上げていくわよ。
下から上にちょっと分厚く塗ったやつをすくってみるみたいな削ってみるみたいな。
こういう事ね。
そういう事そういう事。
うんいい感じですね〜。
それで文字を書いてほしいんだな。
文字?難しそうだなこれ。
難しいよ〜。
ピンクの食用色素で…いいですね〜。
この手作り感満載。
素敵なケーキです。
はい。
よっしゃ〜!はいじゃあ同じクリームで飾りを付けてアクセントにジャムも置きましょ。
アラザン…。
アラザン。
よし!出来ましたね〜!ああ緊張した。
フフフ…。
よ〜し完成です!いやいやいやまだ完成じゃないのよこれがまた。
中原淳一さんが伝えたかった思いを少しでも感じるためにこのケーキにお花を飾りたいと思います。
ここでオキテをどうぞ。
はい。
お花を飾り付ける目的というのは自分もうれしいんだけどそれを見た相手の心を豊かにするために…。
確かに。
そんな心が相手に伝わるように思いを込めて飾ってって下さい。
なんか幸せになるもんなあ。
うれしいよね。
もらった方すごくうれしい。
うれしい。
こんなのもらったら。
こんな感じかな?あ〜きれい。
きれい!よし!中原淳一のクリスマスケーキ完成です!
(チャイム)おっ姉ちゃん帰ってきた!花で飾ったクリスマスケーキ出来てるよ〜!カスタード風味が香る花のクリスマスケーキ。
見た目にも味わいにも作った人の愛情があふれる優しいケーキです。
中原淳一は1958年昼夜たがわぬ激務の末心筋梗塞で倒れます。
この時まだ45歳。
その後中原は仕事を離れ千葉県館山市で療養生活を送りました。
ここでも彼は地元の人々が「美しく生きる」ための手助けをしました。
漁師の妻が結婚式に出ると聞けば着付けからお化粧まで全て自分でやってあげたり…。
大やけどで髪の毛を失い絶望していた若者に出会った時には病院の紹介から治療費の面倒まで見た事もあったといいます。
中原淳一の長女芙蓉さんがそんな父の思いを語ってくれました。
ひまわりに象徴されるようにやっぱり明るく花開いてほしいというようなね。
そのために自分ができる事だったら何でも手助けをしたい。
そういう思いもあったんだと思います。
1983年中原淳一はここ館山で永遠の眠りにつきました。
70年の生涯でした。
海岸に彼の死後地元の人が建てた石碑がありました。
そこに刻まれているのは中原淳一の詩。
「もしこの世の中に風にゆれる『花』がなかったら人の心はもっともっと荒んでいたかもしれない」。
中原淳一は「美しく生きる事」を生涯のテーマとしてそのために誰もが実践できるノウハウを考え発信し続けました。
「美しくありたい」と願う気持ちが人間らしさ心の豊かさを与えてくれるものだと信じていたからです。
今日の「グレーテルのかまど」いかがでしたか?美しく生きる事を願い続けた中原淳一。
今の僕たちはものがあふれている生活を送っています。
だからこそ身の回りのものをいとおしみながら生きていく事が僕らの美しく生きていく事なんじゃないかそう感じました。
ではまたこのキッチンでお目にかかりましょう。
じゃちょっと失礼して。
いただきます!はいどうぞ。
よいしょ。
いただきま〜す。
おお〜!ん?カスタードクリームがすごく濃厚なんだけど食べやすいっていうか。
どっか懐かしい感じもするし。
どう?そのお花の感じ。
お花がちょっとあるだけで食べる前から幸せになるというか。
こういう一つ一つが大事なんだね。
和むね。
その近くにある素朴なマーガレットも素敵でしょ。
素敵だよ。
かまどのさ美しく生きる事は何なの?私?お花飾るのすごい好きなの。
かまどっぽいでしょ?かまどっぽいか?かまどっぽいでしょ。
2015/12/30(水) 10:30〜10:55
NHKEテレ1大阪
グレーテルのかまど「中原淳一のクリスマスケーキ」[字][デ][再]

大きな瞳、色鮮やかな衣装をまとった女性たち。中原淳一の描くその姿は50年以上たっても決して色あせない。女性が美しく生きることを願った中原のクリスマスケーキとは?

詳細情報
番組内容
1913年生まれの中原淳一は、雑誌の編集長、イラストレーター、ファッションやインテリアのデザイナーなどその仕事ぶりは多岐にわたる。終戦直後創刊の雑誌「それいゆ」は仏語で太陽の意味。「窓辺に一輪の花を飾るような心で見てほしい」とつづったその言葉には、一体どんな意味が込められていたのか。「美しく生きる」ことが生涯のテーマだった中原淳一。彼の提案するクリスマスケーキを通して、中原が理想とした世界に迫る。
出演者
【出演】中原芙蓉,瀬戸康史,【語り】キムラ緑子

ジャンル :
情報/ワイドショー – グルメ・料理
バラエティ – 料理バラエティ
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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