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 「初の水爆実験に成功」とした北朝鮮の発表に、怒りや戸惑いの声が広がった。62年前の米国の水爆実験で被曝(ひばく)したマグロ漁船「第五福竜丸」の元乗組員は「恐ろしい」と口にした。

 「核兵器を持てば国を守れると思っているのだろうが、一度でも被害に遭えば核実験などという馬鹿なことはしないはずだ」

 静岡県焼津市のマグロ漁船「第五福竜丸」の乗組員だった見崎(みさき)進さん(88)=静岡県島田市=は強い口調で語った。1954年3月1日、米国が太平洋・マーシャル諸島のビキニ環礁で行った水爆実験に遭遇。爆心から約160キロ離れていたが、実験でサンゴ礁が吹き飛ばされた「死の灰」(放射性降下物)を浴び、乗組員23人が被曝した。

 「水爆の威力はそれほど大きく、広い範囲に被害が出る」。被曝から半年後に無線長の久保山愛吉さん(当時40)が死亡。見崎さんは帰港後、1年2カ月間入院した。「当時よりも今の爆弾の方が何倍も威力があるだろう。何発か落ちたら日本は終わりかもしれない、と思えば恐ろしい」

 元乗組員小塚博さん(84)の長男の妻(58)=静岡県牧之原市=は「父はビキニの事件のことで、精神的、肉体的な重荷を背負い、人生の後半のほとんどを費やしてしまった。家族としてつらく胸がいっぱい」と振り返り「子どもたちや、後に続く人のために、核実験はやってほしくなかったし、水爆を使うような世界にはしてほしくない」と涙ながらに訴えた。