JAXA、火星衛星「フォボス」探査
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2022年に、火星の衛星に向けて探査機を、開発中の新型ロケット「H3」で打ち上げる計画をまとめた。
目指すのはフォボスで、火星の歴史や衛星の成り立ちを探るため、約10グラムの石や砂を採取し、打ち上げから約3年後に地球に持ち帰る計画だ。火星の衛星への離着陸に成功すれば、世界初となる。JAXAによると、探査計画には東京大や北海道大、神戸大などの大学が参加する。
火星にはフォボスとダイモスと呼ぶ衛星二つがあり、火星からの距離はフォボスの方がダイモスに比べて約3分の1と近い。このため、フォボスの表面には、太古の火星に隕石いんせきが衝突した際に飛び散った火星の石などがより多く堆積している可能性がある。
いよいよ日本も火星に目を向けだした。火星の衛星へのサンプルリターン計画である。これが成功すれば、いよいよ火星有人飛行である。その前に、「宇宙ステーション」そして「月面基地建設」などがある。
そうなると、狭い宇宙船の中で生活するだけではなく、宇宙空間でも穀物をつくり、動物を飼育するなどの自給自足ができる設備が必要になる。宇宙ステーションや宇宙基地で、野菜や家畜を飼育する...それが「スペースコロニー」である。
スペースコロニーとは?
スペースコロニー(Space Colony)は、1969年に当時アメリカのプリンストン大学教授であったジェラルド・オニールらによって提唱された、宇宙空間に作られた人工の居住地である。
スペースコロニーは、1969年にアメリカのプリンストン大学にて、ジェラルド・オニール博士と学生たちのセミナーの中での、惑星表面ではなく宇宙空間に巨大な人工の居住地を作成するというアイデアから誕生した。1974年にニューヨーク・タイムズ誌に掲載されたことから広く一般に知られるようになった。
地球と月との引力の関係が安定する領域「ラグランジュポイント」に設置され、居住区域を回転させて遠心力によって擬似重力を得る。コロニー内部には地球上の自然が再現され、人々が地球上と変わらない生活ができるようになるという構想である。
例えば直径約6kmの円筒形のスペースコロニーが地球と同じ重力(1G)を得るには、1分50秒で一回転すればよい。これはかなりの高速だが、地球と同じだけの重力を必要としないのであればさらに低速でよい。
地球全体での人口の爆発的増加・資源枯渇などに対する解の一つ(他、確率は少ないが巨大隕石や彗星といった他天体衝突に対するリスク・ヘッジ)として注目されたが、冷戦構造が終結し各国の宇宙開発投資が抑制されていること、特に先進国においては出生率低下傾向が続いていることなどから、今のところ現実のプロジェクトとして具体化してはいない。
また、仮に百万人収容できるスペースコロニーを建造できたとしても、世界の人口は一年に8000万人前後増加しているため、一年に80基ものスペースコロニーを建造してやっと人口増加分を吸収できる計算である。
スペースコロニーの問題点
さらに、建築材料は月や小惑星から持ってくるとしても、居住する人間は地球から衛星軌道まで運ばねばならない。人数と費用を考慮すると軌道エレベータのような新規の輸送手段が必要である可能性もある。以上のような理由より、費用対効果の面から考えると、人口爆発の解決策として有効であると単純には言えない。現在では単に宇宙空間への植民手段の一つとして認識されている。
なお、日本では一般的に「スペースコロニー」という呼称が多く用いられているが、海外では植民地を意味するこの単語が敬遠されることもあり、「スペースハビタット(Space Habitat:宇宙居住地)」「スペースセツルメント(Space Settlement:宇宙隣保事業)」などの別の名前で呼ばれる事もある。
夢のあるスペースコロニーだが、自給自足の生活を達成するにはまだまだ課題が多い。じつは、地球上でスペースコロニーの実験を行ったことがある。その実験では外界と隔てた、巨大な閉鎖空間にビオトープをつくり、その中に人、植物、家畜、海などを入れ、8人の科学者が2年交代で共同生活をする実験を行った。
しかし、その結果は散々なものだった。空気はよどみ、家畜は死に絶え、植物は枯れ、コーヒー豆が少し収穫できた時には、科学者たちは大喜びした。
実験は100年間継続される予定であったが、実際には最初の2年間で途切れてしまった。第1回は1991年9月26日から1993年9月26日まで、その後第2回は1994年に6ヶ月間一時的に行われたのみである。いったい何が問題だったのだろうか?
バイオスフィア2計画
バイオスフィア2 (Biosphere2) とは、アメリカ合衆国アリゾナ州オラクルに建設された、巨大な密閉空間の中の人工生態系である。
名称は『第2の生物圏』の意味であり、建設の目的は人類が宇宙空間に移住する場合、閉鎖された狭い生態系で果たして生存することが出来るのか検証することと、"バイオスフィア1"すなわち地球の環境問題について研究することであった。 なお、バイオスフェア2と記載される場合もある。
バイオスフィア2は砂漠の中にそびえ立つガラス張りの巨大な空間に、熱帯雨林、海、湿地帯、サバンナなどの環境を世界各地から持ち込んだ動植物で再現している。日光によって空気が膨張し気圧が変化するのを防ぐために、巨大な気圧調整室が設けられた。建物の面積は1.27ヘクタール、最高部の高さは約28メートルあり、これまでに建設されたこの種の施設として最大のものである。
しかし、温度の上昇は防ぐべくもなく、冷却と照明に関しては外界からの電源供給に頼っている。夢としては太陽光などでまかないたいらしい(宇宙に作るなら放射線を防ぐ施設なども必要になる)。
実験はこの中で農耕、牧畜を行い食料と水分、そして酸素を自給自足することを最大目的としている。目的達成のために様々な科学的分析なども自らの手で行わなければならないが、廃棄物はすべて狭い生態系を循環するため、通常考えられないほどの高濃度で、食料を介して口に入る可能性がある。従って試薬なども安全性に十分な配慮がなされている。
バイオスフィアの歴史
実験は2年交替で科学者8名が閉鎖空間に滞在し、100年間継続される予定であったが、実際には最初の2年間で途切れてしまった。第1回は1991年9月26日から1993年9月26日まで、その後第2回は1994年に6ヶ月間一時的に行われた。
第1回のミッションで実験生活を行ったのはアビゲール・アリー、ロイ・ウォルフォード、ジェーン・ポインター、リンダ・レイ、マーク・ネルソン、サリー・シルバーストーン、マーク・バンツリオット、ターバー・マッカラムの8名である。実験が継続不可能になった背景には次のような問題がある。
酸素不足: 事前の計算では大気は一定の比率で安定するはずであったが、土壌中の微生物の働きなどが影響して酸素が不足状態に陥った。また日照が不足すれば、当然光合成で酸素を生産することが出来ず、不足状態は慢性的なものになった。
二酸化炭素: 酸素が不足している状態では二酸化炭素が増え、光合成が行われるはずであったが、二酸化炭素の一部が建物のコンクリートに吸収されていることが途中で判明した。
一時的に炭素過多な状況になった場合、植物を刈り入れ乾燥させることで炭素を固定し、その後必要なときにそれを使う方法が用いられていたが、コンクリートに吸収された二酸化炭素は用いるすべがなかった。
食糧不足: 多くの植物は、以上述べてきた大気の自律調整の難航や日照不足から、予想していたほど生長しなかった。バナナやサツマイモなどが栽培されたものの、家畜の多くは死に、結果として、バイオスフィア2の食生活は後半に至るほどに悲惨なものとなった。
コーヒーなどの嗜好品がごく稀に収穫できたときには、科学者たちは狂喜したという。心理学的側面これはしばしば宇宙空間でも問題になることであるが、外界との交流を一切断ち切られた空間では情緒が不安定になり、対立構図が生まれる。食の不満足や、安全面での不安がそれをさらに強めたといえる。
150億円を地元の資産家らが投じて建設されたバイオスフィア2が8人の人間を短期間しか生存させることができなかったことは、いかに生態系を模倣することが難しいかを物語っている。
例えば熱帯雨林の木はすぐに枯れてしまったが、これはバイオスフィア2の中に風がなかったため、木が自らを支えようと幹を強くすることを怠るようになったためだという。このように生態系は様々な複雑な要素が微妙なバランスを保って維持されているのである。
その後のバイオスフィア
1995年にバイオスフィア2の運営はコロンビア大学に委託され、2003年まで教育施設として利用された。2003年時点で1200人以上の大学院生らがこの跡地で生態系に関する研究活動を行っている。
2005年には建物周辺の土地と共に売りに出され、2006年に宅地開発業者によって購入された。2007年からはこの施設をアリゾナ大学が利用している。
見学者を積極的に受け入れている(有料)。解説付きのツアーでレインフォーレスト、地下の機械類、西の圧力調節ドーム、居住棟を見ることができる。見学者数は2004年4月15日で延べ200万人におよぶ。
複雑な生態系のしくみ
生態系(ecosystem)は生物群集やそれらをとりまく環境を、ある程度閉じた系であると見なしたとき、それを指してこう呼ぶ。
生態系の生物部分は大きく、生産者、消費者、分解者に区分される。植物(生産者)が太陽光から系にエネルギーを取り込み、これを動物などが利用していく(消費者)。遺体や排泄物などは主に微生物によって利用され、さらにこれを食べる生物が存在する(分解者)。
これらの過程を通じて生産者が取り込んだエネルギーは消費されていき、生物体を構成していた物質は無機化されていく。それらは再び植物や微生物を起点に食物連鎖に取り込まれる。これを物質循環という。
ある地域の生物を見たとき、そこには動物、植物、菌類その他、様々な生物が生息している。これを生物群集というが、その種の組み合わせは、でたらめなものではなく、同じような環境ならば、ある程度共通な組み合わせが存在する。
それらの間には捕食被食、競争、共生、寄生、その他様々な関係がある。捕食-被食関係のような生物間のエネルギーの流れを食物連鎖と呼ぶが、近年ではその複雑さを強調して食物網が用いられることが多い。
食物網を見渡すとき、植物、それを食べる植食者、さらにそれを食べる肉食者というように生きたものを起点とする食物網がある。これに対して、生物の遺体や排出物を起点として微生物がこれを利用し、さらにそれを他の生き物が利用する食物網がある。前者を生食食物網 (grazing food web)、後者を腐食食物網 (detrital food web) と呼ぶ。実際には両者は所々でつながっており完全に独立したものではない。
どちらの食物網においても植物による光合成を起点として、エネルギーが何段階もの生物を経由していくことがわかる。これらを生産者、一次消費者、二次消費者あるいは一次分解者、二次分解者というように呼び、このような段階を栄養段階 (trophic level) という。
通常ある生態系における生物群は他の生物間や環境とバランスのとれた関係になっている。新たな環境因子や生物種などの導入は著しい変化を及ぼし、生態系の崩壊や在来種の絶滅などを引き起こす事も考えられる。
逆に、極端な環境に生息する真正細菌や古細菌の生息する環境は、その場に適応できる生物種が少ないために生態系が非常にシンプルな場合がある。例えば、Candidatus Desulforudis audaxviator という真正細菌は、生態系がこの1種で完結しているとされている。
参考 Wikipedia: バオスフィア
宇宙からの発想―ビッグバンからスペース・コロニーまで | |
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ロケットの科学 日本が誇るH-IIAからソユーズ、アリアン、長征など世界のロケットを完全網羅 (サイエンス・アイ新書) | |
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