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野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて

日本の利益となる輸入価格下落が
なぜ成長につながらないのか

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第44回】 2016年1月7日
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日本経済に最も大きな利益をもたらすのは、資源や国際商品の価格が下落することだ

 新年は波乱の幕開けとなった。株式市場は、昨年の夏以来の大きな変動となった。これは、世界経済が大きな不確実に直面していることの反映だ。

 ただし、変動は、アメリカ金融正常化後の新しい均衡を求めての市場の模索である。重要なのは、金融正常化によってもたらされる新しい動きを検出し、それを適切に活用することだ。以下では、日本にとっての最も重要な動きは、資源価格や商品価格の下落であること、それを経済成長に結び付けるには国内物価の引き下げが必要であることを指摘する。

資源・国際商品価格の下落は
日本にとって最大の利益

 株価が今後どのように推移するかまったく予測ができないが、アメリカの金融正常化は投機の時代の終了を意味するので、株価に影響が及ばないはずはない。今後、ニューノーマル(新しい均衡)に向けての模索が続けられることになるだろう。

 ただし、株価の下落は、経済のムードには影響しても、実体経済に直接の影響を及ぼすことは少ないだろう。株価の下落は、これまでバブルで膨らんでいた株価が正常な水準に戻りつつあることを示すものだ。これは、とりわけ中国の株価について言えることである。

 アメリカの金融正常化が引き起こす動きの中で、日本経済に最も大きな利益をもたらすのは、資源や国際商品に対する投機が縮小し、これらの価格が下落することだ。

 これまで、金融緩和によって投機資金が供給された結果、資源や国際商品に対する投機が増加し、その価格が実需によって正当化されるよりかなり高い水準になっていた。

 ところが、金利が引き上げられると、レバレッジ投資で投資額を膨らますための短期資金の調達が困難になり、投機が減少する。このため、資源価格や国際商品価格が下落する。

 この影響は、日本の輸入価格にはっきりと表れている。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて

アメリカが金融緩和を終了し、日欧は金融緩和を進める。こうした逆方向の金融政策が、いつまで続くのだろうか? それは何をもたらすか? その先にある新しい経済秩序はどのようなものか? 円安がさらに進むと、所得分配の歪みはさらに拡大することにならないか? 他方で、日本の産業構造の改革は遅々として進まない。新しい経済秩序を実現するには、何が必要か?

「野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて」

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