(2016年1月6日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領〔AFPBB News〕
アナリストらによると、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領が中央銀行に対する議会の監督権を制限することを決めたことで、同国がハイパーインフレに陥る可能性が高まった。
これは5日に正式発足した野党主導の新議会とマドゥロ氏との権力闘争における最新の戦術で、折しもベネズエラが騒々しい政治、社会、経済危機に見舞われているときに出てきたものだ。
4日に公表されたが、日付は先週になっている大統領令は、中央銀行の理事を任命、解任する権限を含め、中央銀行に対する議会の監督権を剥奪する。
「中央銀行に対する完全な大統領裁量権限は、ベネズエラがハイパーインフレに陥るための究極の手段だ」。ベネズエラ人経済学者でハーバード大学の客員教授を務めるフランシスコ・モナルディ氏はこう話す。「憲法で独立した中央銀行が確立されている国にあって、マドゥロは中央銀行を自分自身の造幣局にした」
物価統計は非公開だが・・・
インフレ率は秘密にされてきたが、先月になってマドゥロ氏は100%に近い数字だと述べた*1。だが、首都カラカスに本社を構えるコンサルティング会社エコアナリティカの首席エコノミスト、アスドルバル・オリベロス氏は、推定で国内総生産比(GDP)比20%に上る財政赤字を埋めるための紙幣増刷に煽られ、インフレ率が12月末に200%の壁を突破していたと言う。
店頭では物資不足が続く〔AFPBB News〕
ケイトー研究所のハイパーインフレの専門家、スティーブ・ハンキ氏は、シナリオはそれ以上に悪いと主張し、インフレ率は年率換算で382%に達していると試算する。
ハイパーインフレは多くの場合、月間インフレ率が50%を超える状態として定義されている。
*1=ベネズエラ中央銀行は2014年に公式物価統計の公表をやめた