この写真は、母の財布の中にあった小銭です。買い物の際、お札でばかり支払いをした結果、小銭だらけになるという認知症の典型的な症状のひとつです。今回は小銭ではなく、もっと大きな介護にかかるお金に関するお話です。
一般的な介護にかかる費用はどれくらい?
認知症の人は買い物の際、お札ばかりを使うことで、財布の中が小銭だらけになる
家計経済研究所発表の 「在宅介護にかかる費用(2011年)」 によると、1カ月平均で6万9,000円です。これには訪問ヘルパー、デイサービスなどの介護サービス費、医療費、おむつ代など介護サービス以外の費用が含まれています。また 「認知症の状態別にみた費用」 では、認知症軽度の方で1カ月平均2万8,000円~6万7,000円、中度の方が2万9,000円~5万9,000円、高度の方が5万7,000円~12万6,000円という結果です。
生命保険文化センター発表の「生命保険に関する全国実態調査(速報版・2015年)」によると、介護期間(介護が終わるまでの期間)の平均は、4年11カ月です。上記1カ月平均を使って計算すると、在宅介護にかかる総費用は407.1万円となります。
住んでいる地域や介護される人の症状、治療方針によって介護費用は大きく変動します。また介護施設を利用すると、毎月数十万の費用がかかります。平均値は、介護のための貯金額の目安にはなりますが、各家庭まったく違うものと考えるべきです。
ここでわが家の1カ月にかかる介護費用を見ていきましょう。
著者の1カ月にかかる介護費用
月2回ほど岩手県へ帰省するので、交通費が一番かかります。ピーク時は交通費だけで月10万円を超えましたが、介護サービスを利用することで帰省頻度を減らし、月4万円になりました。またJR東日本の場合、「えきねっと」でネット予約が可能で、最大35%オフで購入できます。
認知症のお薬代は、健康食品も購入しているため、余計に費用がかかっています。もっと節約が可能ですが、認知症治療に関しては軽度である今のうちに試すことに意味があると考え、攻めの支出をしています。
お金の問題のすべてを解決してくれる「エンディングノート」
本人の判断能力がある場合、エンディングノートを作成しておくことをおすすめします。エンディングノートには、資産状況や今後の介護方針、延命治療、葬儀やお墓について記載をします。銀行口座がどこにあるか、口座番号を記載する欄もあります。年金収入や支出金額がわかると、介護者の自己負担額が見えてきます。
資産の話をしづらいとは思いますが、エンディングノートを利用して聞き出してみてください。あるいは書いてもらって保管し、いざというときにチェックする方法もあります。
わが家は祖母の命日がくると、母のエンディングノートを更新しています。希望は延命治療を行わず、可能な限り自宅で過ごしたいそうです。当事者抜きで考えてしまいがちですが、本人から聞いてしまうことで実は介護もラクになるし、費用の予測ができるようになります。
亡くなった祖母は認知症が進行し、延命治療も葬儀もすべて家族による代理判断にしました。祖母が本当はどうしたかったのか、今でも聞いておけばよかったと後悔することがあります。
こういった条件をクリアにしておくことで、介護費用のシミュレーションが可能になり、金銭的援助がどれだけ必要かも見えるようになります。
できることなら「介護される人のお金」を使いたい
介護費用を誰が負担するのかを考えた場合、自己負担せず介護される人のお金を介護費用にあてるべきです。生活費や教育費など、介護者自身の家族の生活状況が変わってしまうようなことは、できるだけ避けたいです。
もうひとつは、亡くなった場合の遺産相続です。遺言書があれば違いますが、基本は介護をしたしないに関わらず均等に配分されます。それならば相続争いが起きる前に、ご本人のためにお金を使ってあげた方が幸せではないでしょうか?
お金がまったくない場合、生活保護申請となりますが、思っている以上にハードルが高いです。援助できる親族を探し、持っている資産を売却し、ありとあらゆる手を使ってもダメな場合に生活保護となるためです。私は介護費用を一切出しておらず、すべて母の貯金でやりくりしています。
唯一、介護に備えられるものが「お金」
いずれ介護する可能性がある場合、今からできることは何ですか? という質問をよく受けるのですが、私は「お金を用意しておくこと」といつも回答しています。どういう病気やケガで介護が始まるか、誰にも分かりませんし、介護サービスの利用も病気次第で大きく変わります。
わが家の場合は、認知症の祖母(要介護3)が子宮頸がんで入院することになったとき、半年で約100万円を使いました。何の準備もしていなかった私は、自分の貯金で何とかしたのですが、今後どれだけかかるのかと不安に襲われました。
その後、成年後見制度を利用して、最終的には祖母からお金が戻ってきました。もし初めから資産状況が分かっていれば、先の見えない不安に襲われることはありませんでした。
介護が始まると、仕事を失って介護者自身の収入が減ることもあります。介護を受ける人の介護費用も大切ですが、介護者自身の収入減にも注意が必要です。私は、2度の介護離職を経験しています。1度目の介護離職でお金の大切さを痛感したので、会社員以外で副業を始めました。そのおかげで、今はなんとか生活できています。
次回、最後のコラムでは、認知症介護者のメンタル面についてお話します。特に認知症の場合、メディアが報じるネガティブな情報の影響から、介護が思っている以上に大変になることがあります。認知症介護を少しでも軽くする方法についてお伝えします。
(介護ブログ「40歳からの遠距離介護(http://40kaigo.net/) 」運営・工藤広伸【くどひろ】)
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