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くらし☆解説 「4月から家庭の電力も自由化」

関口 博之  解説委員

▽くらし☆解説、岩渕梢です。テーマは、「4月から家庭の電力も自由化」。関口解説委員です。
 
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関口さん、ホラ貝の音とこの絵、どういう意味ですか?

▼4月から家庭用の電力も小売りが自由化されます。
これはつまり、電力の「戦国時代」が幕を開けるということなのです。
大手電力の地域独占が崩れ、8兆円と言われる市場の奪い合いになります。

▼それは、裏返せば、私たち7800万世帯が、電気をどこから買うか、選べるようになるということでもあるのです。 
既に今月から、その事前予約も始まっているので、今日はこの話をしたいと思います。

▽新たにどんな会社が入ってくるのでしょう?
 
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▼まず、よそのエリアの大手電力、東京における関西電力という例です。
それから都市ガス・LPガスの会社、石油元売り、再生可能エネルギーを手掛けてきた会社、通信や携帯会社、住宅メーカー、鉄道会社なども名乗りを上げています。
こういうところが、これからは「小売電気事業者」と称するようになります。

▽でも、発電はどうするのですか?

▼自前の発電所を持つ所もありますが、他社の発電所と長期契約したり、太陽光や風力で発電した電気を買い取ったり、更に、大手で余った電気などを融通しあっている卸電力取引所を通じて調達することもできます。

▽各家庭の側では、新しい会社に切り替える場合、工事か何か必要になるのでしょうか?
 
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▼電線などは今のままで大丈夫です。
インターネットの光回線のように新たにケーブルを引いたりする必要はありません。
ただし、最初に会社を替える際には、原則、スマートメーターへの切り替えが必要になります。
スマートメーターは30分毎に使用量を測って、それを電力会社に自動送信する機能があります。
取り換え費用はかからず、今の電力会社が変えてくれます。

▽料金やサービスでも、自由化で新しいものが出てくるのでしょうか?
 
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▼はい。まず想定されるのが「セット割」です。
例えば、電気とガスをセットで、といったプランが出てきます。 
両方ともウチから買ってくれたら、これだけ割り引きます、さらに、通信料金もセットにすればもっと割り引きます、という形です。

▽安くなるなら助かりますね。
 
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▼そうですね ただ電気、ガスのどちらでどれだけ割り引いたか、までは出さなくて良いので、例えば2つこみこみでいくら、トリプルセットでいくら、となると本当に得なのか、どれだけ得なのか、かえって分かりにくくなるかもしれません。
 
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▼一方、迎え撃つ側の大手電力会社では、これまで以上にきめ細かい時間帯別料金、つまり、ピークを避け、安い時間帯に使えば得になるという新プランを作ったり、各種のポイントサービスと提携して、電気料金で貯めたポイントが買物などに使えるようにするといったことも考えています。

▽具体的な料金はいつ頃出てきて、ズバリどの位安くなりそうなのでしょう?

▼今月から五月雨式に、各社の料金メニューが出始めるはずです。
「1割下げるのはなかなか難しい」という声が多いが、さてどうなるか、ですね。

▽料金だけでなく、再生可能エネルギーの電気を買いたいという人もいるかもしれません。

▼そうしたことも可能になるのが、自由化のメリットです。
それには小売電気事業者が示す「電源構成」をチェックするといいと思います。
 A社という架空の会社を想定した、表示の例がこちらです。
 
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▽図にある「FIT電気」というのは何ですか?

▼FITというのは固定価格買い取り制度のことです。
太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーのうちでも、この制度を利用しているものは「FIT電気」と表示しなければなりません。
この制度は、再エネの普及のために、割高な電気を予め決めた価格で電力会社が買い取っている仕組みです。
その費用は電気料金に上乗せされ、国民全体で負担しています。
標準世帯で月に470円程 その意味でこれは「みんなのもの」なわけです。

▼ですから、これをあたかも自社だけの売り物のように、「グリーン」とか「クリーン」とか「きれいな電気」といって宣伝することはできません。
でも、この買い取り制度を使わず、その会社が直接買い入れた分は、もちろん堂々と「太陽光」と書いて構いません。

▽実際に再生可能エネルギーを中心にして電気を売るという会社も出てくるでしょうか?

▼地域の電気は地域で賄うという発想で、再エネの地産地消に取り組む事業者も出てきています。
その点では、再生可能エネルギー活用の後押しにもなりそうです。

▽一方では、逆に心配も浮かんでくる新規参入した会社が、ちゃんと安定的に電気を送ってくれるのか、停電しやすくなったりしないのか、気になるのですが。
 
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▼その点は大丈夫です。
電気はどこの会社、どこの発電所で発電されたものも、結局、大きなプールで一つになり、そこから各家庭などに届けられます。
この大きなプールを受け持つのが送配電事業者です。
この役目、実際には、大手電力の送配電部門が引き続き担うことになります。
ですから電気の質、つまり電圧や周波数も今と変わりませんし、新会社だと、停電しやすいなどということもありえないのです。

▽電力会社をA社、B社、C社と変えていってもいいのですか?

▼全く問題ありません。
ただ、携帯などと同じく何年間は解約できないといった契約期間を設けるところもありますから、解約の条件などは事前に確認しておくことが必要です。

▽それにしても、そもそもなぜ今、電力の完全自由化なのでしょう?
 
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▼電力の自由化は、2000年に大規模工場から始まっていて、段階的に小規模な工場やスーパー、商業ビルなどと対象が拡がってきました。
そして今回、家庭や商店まで全てとなるので、いわば総仕上げにあたります。
▼自由化で競争が促されれば、電気料金が下げられますし、下がらないまでも、上がるのを抑える効果はあります。
また、消費者が参加することにも意義があるのです。
海外では、電力使用のピーク時に節電すると、キャッシュバックを受けられる仕組みを作っている例もあります。
消費者の選択が、将来の電源構成や発電比率を決めていく事にも、つながるでしょう。
さらには、新しいビジネスチャンスも開けます。
通信の世界では、自由化によって、インターネット、SNS、スマホやアプリと、今までなかったサービスやビジネスが花開きました。
この可能性も大きいと思います。

▽ただ、電力会社を選べと言われても、今まで経験もないことで、戸惑う人も多いと思うのですが?

▼そうだと思います。大事なことをまとめてみました。
 
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まず、選べる=選ぶことができるというだけであって、今のままでも、もちろん何ら問題はありません。 
何もしないと電気が来なくなってしまう、などということは一切ありません。
▼ですから、自由化が始まるのは4月だが、何もあわてる必要はなく、じっくり考えて、吟味してから選んでも全く構わないのです。
▼また海外の例では、小売り会社がたくさん表れると、各社の料金や対象エリア、特徴などを比較するインターネットのサイトも登場しています。
日本でもいずれ家庭向けの電力会社を一覧比較できるようになると思います。

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