“高齢マンション” シリーズ4
〜敷地の元所有者の影響大〜
修繕阻んだ大家意識
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マンションの中には敷地の元所有者が、完成後に住戸の所有者となるケースは珍しくない。こういったマンションでは築年数が経過し、大規模修繕工事などを迎えた際に問題が表面化することがある。
東京都心のCマンション(約45戸)は約30年前、「等価交換方式」で分譲された。等価交換方式等価交換方式は、土地所有者がマンションの建設用地を提供し、開発業者から土地代の代わりに、土地代に相当する分の住戸を得る方式。開発業者は、残る住戸を一般に分譲して利益を得る。Cマンションでも、元土地所有者が約3分の1の住戸を所有し、自身が住む住戸以外はすべて賃貸している。
問題が深刻化したのは3年前。建物内で漏水が頻発するなど老朽化が目立ってきたため、管理組合ではこの年、大規模修繕を計画していた。とこらが、元土地所有者がその数年前から滞納していた管理費や修繕積立金が多額に上ることが明らかになった。
「前回の大規模修繕が自分の思う通りにならず、管理組合のすることがすべて気に入らなかったようだ。」と組合役員の一人は言う。
滞納は大規模修繕に必要な費用のほぼ3分の1になるため、工事のめどが立たず、管理組合は支払いを求める訴訟を起こして和解が成立。最終的には1000万円以上に膨れあがっていた滞納額の全額の支払いを受けた。今は大規模修繕を終え、建物は見違えるようになった。
NPO法人・集合住宅管理組合センター(東京)によると、東京都心部で20〜30年前に建てられた小規模マンションは、等価交換方式によるものが多いという。元土地所有者は、管理組合の議決権を複数持つことが多い。中には過半数を超える議決権を持つ場合もあるため、その意向が組合運営に対して大きく影響する。
常務理事の有馬百江さんは「元土地所有者は、分譲後も大家のような意識を持っていることがあり、時には深刻な問題にもなる。すべての所有者にとって住みよいマンションが元土地所有者にとっても利益になることを伝え、話し合いを続けることが大切。」と話す。
また、等価交換方式のマンションは管理規約で、共用部の駐車場を元土地所有者に無償で使用する権利を定めたり、管理費や修繕積立金を元土地所有者だけ低く設定したりしているケースもある。長年見過ごしたままだと、修繕積立金などへの影響は大きい。
この点については2002年の区分所有法の改正で、不平等な管理規約が無効となる判断材料が明文化された。区分所有法に詳しい弁護士の山上知裕さんは「元土地所有者が支払うべきだった金額についても請求できる手がかりができた。等価交換方式で分譲され、長年手つかずになっていた問題も、区分所有法を交渉の武器にして解決を図ってほしい。」と話している。