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高齢マンションの今 〜高齢マンションが抱える色々な問題点〜

“高齢マンション” シリーズ3

〜修繕積立金ないまま老朽化〜

戸別に説得 資金難克服


※イメージ画像です

宮崎市の中心部から車で西へ5、6分。分譲マンション「大塚レストハイツ」(32戸)は外壁が薄い茶色に塗り替えられ、新たに設置されたベランダのアルミ製のフェンスが輝いて見える。築28年になるが、今年春から夏にかけて初めての大規模修繕を行い、見違えるようになった。

工事に入る前は老朽化が激しかった。ベランダの鉄製のフェンスがさび、その影響でひびの入ったコンクリートの一部が落ちそうになっている箇所が目立った。実際、台風が通過した直後、10〜20センチ四方のコンクリートの魂がベランダや外壁からはげ落ちているのが見つかったこともある。「人に当たっていたらと思うとぞっとする。しかし、資金がなく難しかった。」と、修繕委員会の元委員長、児玉和夫さん(61)は振り返る。

建物の修繕が必要だが、資金不足。こうした状況は、築年数が経過し、住民の高齢化などが進むほど深刻になる。NPO法人・全国マンション管理組合連合会(京都市)の事務局長、谷垣千秋さんは「大規模修繕工事に必要な資金が不足しているという管理組合は半数近くあるのではないか。」と指摘する。

昔のマンションは分譲会社側が売りやすいように、販売時に修繕積立金を設けていなかったり極端に少なく設定したりするケースが多く、手つかずのままになっている場合もあるという。

レストハウスの場合も分譲当初から修繕積立金を徴収していなかった。屋上の防水工事など小規模な工事は管理費の余剰金と一時金で賄っていたが、大規模修繕は手つかずのまま。総会のたびに、修繕積立金の必要性は話題に上ったが、役員は1年交代のため問題が先送りされていた。

転機は2年前。NPO法人・宮崎県マンション管理組合連合会に相談して、安全性を確保する為に必要な大規模修繕の内容が分かった。

手持ち金では約2400万円足りないため借り入れが必要で、その返済のために修繕積立金の徴収が必要なこともはっきりした。高齢者も多いことから月1万円がぎりぎりの金額と判断。総会の議決後も、修繕積立金の入金開始や借入金の返済開始など節目節目で、児玉さんが中心となって各世帯を回り、説明の文書を手渡した。

同連合会会長の布谷清澄さんは「新たな費用の負担には、住民一人一人が大規模修繕の必要性を認識することが必要。そのためには、外部の専門家に建物がどの程度老朽化しているのかを診断してもらい、その情報を住民間で共有することが大事」と強調する。

レストハイツでは大規模修繕の後、住民の間の会話もより弾むようになった。「大きな難題を乗り越えて、住民のきずなも強まった。」と児玉さんは話している。



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