半世紀ぶりの国産旅客機であるMRJ(三菱リージョナルジェット)が4度目の納入延期となりました。MRJを製造している三菱重工グループは、大型客船事業でも3度の納入延期を引き起こしており、すでに受注金額を超える損失を計上しています。同社の経営は大丈夫なのでしょうか。

2020年度にMRJ事業は黒字化できるか

MRJのポスターと江川豪雄社長(2010年当時)(ロイター/アフロ)

 三菱重工グループの航空機製造会社である三菱航空機は2015年12月24日、国産ジェット旅客機「MRJ」の納入予定を当初の2017年4~6月から2018年半ばに延期すると発表しました。納入延期はこれで4度目となります。

 MRJは、半世紀ぶりとなる国産旅客機で、日本政府も全面的に開発や販売を支援したまさにオールジャパンと呼ぶべきプロジェクトです。昨年11月には念願の初飛行を達成、今後の受注獲得に弾みが付くと思われた矢先でしたが、4度目の納入延期となってしまいました。主翼が必要な強度に達しておらず、型式証明の取得が困難になったことが主な理由です。

 ゼロからの開発にトラブルは付きものですが、心配になってくるのはビジネス面です。同社は2020年度にMRJの事業を黒字化させるという目標を掲げており、現在、営業活動の真っ最中です。さらに納入が延期されるような事態となれば、キャンセルが出る可能性も否定できず、そうなってしまうと、経営目標の達成は極めて困難となるでしょう。

造船部門も3度にわたって納入を延期

納入延期について会見する三菱航空機の森本浩道社長(2015年12月24日、愛知県春日井市で)

 実はトラブルを抱えているのは航空機部門だけではありません。同社の造船部門も3度にわたって納入を延期しており、それに伴って巨額の損失が発生しています。

 同社は、造船部門立て直しのカギとして、米国のクルーズ会社から大型客船2隻を受注しましたが、納期が大幅に遅れ、すでに受注金額を超える約1300億円の損失を計上しています。同社は、納期遅れに対応するため、多くの人員をこの2隻に投入したことから、他の案件への影響も懸念される状況となっています。

 造船事業は長期にわたって受注を確保する必要があり、こうしたトラブルの発生は、事業全体のスケジュールに極めて大きな影響を及ぼします。実は同社は2002年に、建造中の大型客船を炎上させるという事故を起こしており、この時にも損失を計上していますから、大型客船事業における失敗は2度目ということになります。今回、2隻を発注したクルーズ会社は、3隻目以降については欧州の造船会社に発注しており、三菱が連続受注できる見込みはほぼなくなったといってよいでしょう。

 同社はこれまでの利益の蓄積で厚い自己資本があり、大型客船事業の損失が致命的な影響を与える可能性は低いと判断できます。またMRJについても同様で、今のところ同社の屋台骨が揺らぐことはないでしょう。しかし、今後の受注状況によっては全社的な事業ポートフォリオの見直しが必要となるかもしれません。

(The Capital Tribune Japan)

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