市民団体の活動拠点の運営を行政が市民団体に任せる。全国的にも注目されたそんな取り組みを、市民の代表であるはずの市議会がやめさせるのか。

 さいたま市の複合ビルにある市民活動サポートセンター(サポセン)の運営主体が4月、NPO法人「さいたまNPOセンター」から市当局に移る。

 サポセンを利用する団体のうち、護憲や反原発、北朝鮮による拉致被害者の救出などを掲げる14の団体について、市議会が「政治的な活動をする団体が優先的に使っている」と問題視したのが発端だ。市議会は昨年10月、自民、公明両党などの賛成多数で、市の直営とするよう条例を改正した。

 政治的な団体による優先利用という指摘に対し、サポセンの運営協議会は「団体の登録、利用内容や公平性に問題はない」と否定した。市議会での議論はわずか数日。全国各地の市民団体が抗議文や反対の意見書を出したのも当然だろう。

 市民による公益的な活動を促そうと、1990年代後半、議員立法と党派を超えた賛成でNPO法(特定非営利活動促進法)が誕生した。選挙での特定の候補者や政党への推薦、反対を目的とすることなどは禁じる一方で、課題解決への取り組みや政策提言は「施策」と位置づけられ、それを推進する中で政治的な争点となっているテーマを扱うことは公益的な活動の一部とされた。この解釈は当時の国会審議で確認され、法の運用を通じて定着している。

 条例改正を主導した自民党市議は「政治活動は自由であるべきだ」と語りつつ、「サポセンへの利用登録後の活動を行政が監視するシステムがないことが問題」と強調した。

 しかし、行政による監視とは何だろうか。市民団体は情報公開によって多角的なチェックを受けつつ、行政と対等の立場で活動するというのがNPO法の趣旨だ。条例改正に反対した議員が「一歩間違えると公の機関が政治活動の自由を規制することになりかねない」と危惧したのはもっともである。さいたま市の事例をNPO法の狙いを損なう一穴にしてはならない。

 サポセンの管理運営を巡っては、「市長は市民活動団体を指定する」という規定を市が独断で削除し、企業や市の外郭団体も運営できるようにしていたことも明らかになった。

 市民団体側は、市議会や市当局との直接対話を求めている。市民の代表であり、公僕であるという自覚があるのなら、すぐに市民団体と向きあうべきだ。