修繕積立金が値上げされる5つの理由とその対策

経年劣化しないマンションはありません。その劣化を抑え、快適な住環境を保つために、修繕工事があり、そのための資金として修繕積立金を毎月積み立ています。

しかし、残念ながら多くのマンションでは修繕積立金が足りておらず、値上げを実施しているのが現実です。

修繕積立金が値上げされる5つの理由、そしてその対策を紹介します。

修繕積立金が値上げされる理由

修繕積立金が値上げされる5つ理由

1分譲時の修繕積立金の初期設定価格が低い

マンション分譲時の初期設定価格が低いためです。ではどのくらい低く設定されているのでしょか?

(修繕積立金の適正価格と分譲価格)

適正価格:200円/㎡
分譲時価格:85円/㎡

70平米の3LDKのマンションで例えると、月額14000円が必要ですが、5950円しか徴収していないことになります。

実際には購入時は基金という形で修繕金を集めていたり、機械式駐車場によって計算方法が変わるため、これほど単純ではありませんが、適正価格に対して全く足りていません。

また初期価格が低いため、将来不足分を取り戻す必要があります。そのため、値上げ率がより大きくなってしまいます。

2修繕積立金の値上げはすで決まっている

修繕積立金の積み立て方式は、均等積立方式と段階増額積立方式の2つがあります。

均等積立方式は必要な修繕金を計画期間が割り、毎月同じ金額を払う方式です。そのため、期間中は修繕積立金が変わることはありません。国交省のガイドラインにおいても、均等方式が望ましいとされています。

しかし、多くのマンションでは後者の「段階増額積立方式」が採用されています。これは徐々に値上げをする方式です。

「分譲時の価格設定が低い」のは、段階方式を取っているからです。マンション購入時、修繕積立金の値上げ計画について説明を受けているはずですが、「10年後のことだから」とあまり意識しないのが現実なのではないでしょうか?

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3修繕の工事費が上がっている

高齢化社会によって労働人口が減っています。それに伴い施工を手がける職人の方の人口も減っています。人手不足によって人件費が高騰し、修繕工事費も値上がりしているのです。

この人手不足に加え、オリンピックや震災復興需要で工事そのものが増えているため、どうしても建築費は上がってしまいます。

ある施工会社の執行役員の方から「前回の大規模修繕で1億円かかったのであれば、次回は2億円かかってしまうかも知れないと」との話を聞きました。

これは極端な例かもしれません。今後建築現場における外国人雇用を拡大させるという、方針を政府は打ち立てているので、人件費は多少緩和されるかもしれません。

ただ現時点で言えることは、それほど修繕工事費の価格は上がっているということです。

4グレードアップ工事は長期修繕計画に組み込まれていない

ある程度マンションの年数が経過すれば、当時は最新だった設備もどうしても古くなってしまいます。リニューアル工事で特に多いのは玄関とバリアフリーの工事ですが、これは長期修繕計画には組み込まれていません。

長期修繕計画に組み込まれていないということは、毎月の修繕積立金として積み立てていない、ということです。

多くの銀行ではマンションの管理組合向けにローンを貸し付けており、不足する予算を銀行ローンで補った場合、修繕積立金から返済していくことになります。そうなれば、修繕積立金の値上げはせざるをえません。

5修繕工事費の価格が必要以上に高い

自主管理のマンションを除いて、少なくとも何かしらの業務を管理組合は管理会社に委託しています。

そして、管理会社に修繕工事を委託する管理組合もあるでしょう。国交省が発行しているマンション総合調査によると4割の管理組合は管理会社に修繕工事も依頼しています。

管理会社に任せることはワンストップで出来る、普段も任せている、何かあったときに安心、などのメリットはあると思いますが、その分割高になります。

支払う額が増えれば、将来の資金は不足し、修繕積立金を値上げするという流れになっていきます。

修繕積立金の値上げ対策

修繕積立金の値上げ対策は、マンションの収入を増やす、余計な支出を削減して修繕会計に回すの2点です。

修繕積立金の値上げをせずに収入を増やす方法は限られていますが、実現できれば多少なりとも修繕会計は改善します。まマンションの支出を減らすことができれば、その余剰を修繕会計に繰り入れることができるため、結果として値上げの抑制につながります。

マンションの収入を増やす方法、支出を減らす方法としては、以下のようなものがあります。

修繕積立金の値上げ対策

駐車場をサブリースで貸し出す

駐車場サブリースとは、駐車場を貸し出すリース会社が一括契約で管理組合から駐車場を借り上げます。リース会社は自社のマージンを乗せて外に貸し出し、管理組合には毎月一定額をリース料として支払うというものです。

リース料は月額使用料の40%と言われ、2万で貸し出している駐車場があれば、約8千円程度の収入になります。

あとはマンション屋上に携帯のアンテナを設置するなどの方法もあります。いくらマンションの会計が改善するとは言え、セキュリティや健康面への心配などで、反対される方も多くいらっしゃるため、簡単には導入できないもの事実です。

管理委託費の見直し

マンションの管理費で多くを占めるのは管理会社への管理委託費です。この管理委託費を削減できれば、修繕会計は大幅に改善され、値上げも抑制できるでしょう。

例えば、年間100万削減できれば、30年後には3000万円多く積み立てれらることになります。

管理費削減は一筋縄では行かないでしょうが、マンションの資金問題を解決する上で効果は大きいです。

保険の見直し

マンションの保険契約の内容は分譲時点から見直しされていますか?分譲時点では管理会社が管理組合の代わりに保険契約を結んでいるため、過剰仕様になっているかも知れません。

また内容の見直しまでしなくても、保険契約の契約期間を変更するだけで保険料を下げられるかもしれません。もしマンションの保険が1年契約になっているのであれば、5年契約に変更するだけ、期間の割引が受けられれますので、その分管理費を下げれらます。

電気料金の見直し

マンションの照明器具をLED化する、マンションの電子ブレーカーを導入する、などの方法があります。

LEDに変更することで電気量が抑えられ、電気代が下がります。電子ブレーカーも同様に、マンションの電気の基本料を下げることができる仕組みのため、電気代を削減できます。

他にも、賛否両論はありますが、一括受電で電気をまとめて買って安くするなどの方法があります。

修繕工事の施工会社選び

『4割の管理組合は管理会社に工事を依頼している』と前述しましたが、施工会社と管理会社の間には、どうしても工事を発注する管理会社(元請け)と工事を行う施工会社(下請け)という関係が存在します。

管理組合主体で修繕工事を行う施工会社を探せば、施工会社は元請けとして工事できるため、修繕工事費はぐっと安くなるでしょう。管理組合自らが自分たちで探す手間を惜しまなければ、工事は下げられます。

修繕工事費が高ければ将来の不足を招きますが、安く抑えれればその分時期工事費に回せます。

修繕積立金の値上げについて

修繕積立金が足りないというのは、残念ながら多くのマンションに当てはまります。

一回目の大規模修繕では、修繕積立金は足りるかもしれません。しかし、2回目の大規模修繕では改修範囲が増えるため、一回目の大規模修繕以上に工事費は掛かるでしょう。

中古で買ったばかりのマンションなのに、先日の総会で修繕積立金の値上げが決まった。
これから子供も大きくなり支出が増えるのに、このタイミングで修繕積立金が値上げされるのは困る。

普段暮らしている中では、修繕積立金の不足にはなかなか気づけません。しかし、確実に見えないところで修繕積立金は不足しています。

自分たちのマンションを守るのは住んでいる組合の方、区分所有者の方しかいません。まずは、できることから始めるのがスタートではないでしょうか?

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