ことしも国際ニュースの幕開けは中東の混迷だった。地域大国のサウジアラビアとイランが対立を深めている。

 中東各地で紛争や混乱が続くなか、両国が本来果たすべき責任は重い。とりわけシリアとイラクの情勢打開には、両国の関与と協調が不可欠である。

 ここは歩み寄りの道を探るときである。争いが激化すれば、中東和平、テロや難民対策、原油市場など、あらゆる国際問題に深刻な打撃を与える。国際社会は、米国を筆頭に積極的な仲介と調整を急ぐべきだ。

 サウジとイランの反目の歴史は長い。サウジはイスラム教の多数派スンニ派の盟主を自認する一方、イランは少数派シーア派を代表する大国である。

 今回の発端は、街頭デモを主導した罪でサウジがシーア派指導者を死刑にしたことだ。イラン国内で怒った群衆が、サウジ公館を壊し、放火などをした。サウジは断交を宣言し、バーレーンやスーダンも同調した。

 もともとサウジとイランは、地域の覇権をめぐってあつれきを強めてきた。その節目はやはりイラク戦争だった。イラクの政権がスンニ派からシーア派に移って以降、イランの影響力が大きく伸び、サウジの警戒心は増大した。

 シリアとイエメンの内戦は、両国の代理戦争の側面があるほか、中東各地でそれぞれが自国に近い勢力に肩入れを続けている。スンニ派とシーア派の宗派対立はいまや、中東を覆う最大リスクの一つとなっている。

 今回の対立が、国内で両派が緊張関係にあるイラクやバーレーンなどに波及すれば、中東全体が動揺する。約15%のシーア派人口を抱えるサウジ自身の国内の安定への懸念も拭えない。

 そもそも、こうした問題があらわになった背景には、中東での米国の影響力の衰えがある。かねて米国との緊密な関係を誇っていたサウジは、米国が近年イランと対話を進め、核開発をめぐる合意を結んだことで、いっそうの焦りと不満を募らせていた。

 そうした経緯からも、米国の責任は重いというべきだ。イランへの警戒心を強めているのはユダヤ国家のイスラエルも同じである。サウジやイスラエルに自制を求め説得するのは、依然米国が率先すべき仕事だ。

 ロシアが仲介の意向を示してはいるが、ここは国際社会が一致して対処する態勢を固めるべきだ。米欧とロシアは国連安保理などで協調行動を論議すべきだろう。そうした作業を、日本を含む国際社会も支えたい。