【CESレポート from ラスベガス】プレス向け事前発表会で見つけた、2016年注目のプロダクトたち

2016.01.06 09:00

「CES」=Consumer Electric Showは1967年にニューヨークで初開催された家電コンベンション。かつての主役はテレビやビデオ、オーディオでしたが、ここ最近ではセルフドライビングカーやコネクテッドホーム、スタートアッププロダクトの展示がホットな話題を呼ぶイベントとなっています。IoTという言葉もCESがキッカケで広まっていったとも言えるでしょう。今年も、現地時間1月6日(水)〜9日(土)アメリカ・ネバダ州ラスベガスにて開催。
SENSORSからはWeb編集長・西村真里子もラスベガスに飛び取材中。早速、現地からのレポートをお届けします。

デジタルの世界が生活に浸透し、「テクノロジーが優れているだけのもの」より「人々の生活が楽しくなるプロダクトやサービス」へのニーズが高まっています。CES 2016でも、その傾向がより顕著に表れていました。
私は2013年より毎年参加し定点観測していますが、今年はどのようなプロダクトが話題を呼ぶのか?を探るべく、早速プレス向け事前製品紹介会場へ。ここで解禁された情報のうち、ニーズが高まりそうなプロダクトを紹介してまいります。

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◼︎ウェアラブル、ドローン、VRが本格普及する時代へ

2015年冬にNew York TimesがGoogle Cardboardを配布したことも話題になりましたが、VRへのニーズが高まり今年は前年比440%の伸びを予想しています。今年はウェアラブルデバイスも中国などでも普及し始めた事をキッカケに、かつての成長牽引デバイスであったスマートフォン、タブレット、PCよりも注目を集めていきそうです。

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CESによるテクノロジートレンド2015年・2016年比較

CES 2016事前製品紹介(CES Unveiled)で展示されたプロダクトもウェアラブルデバイスが多く、まさにHEAD TO TOE。頭から足の先まで、また外見から内臓までトラッキングできるプロダクトが100製品ほど紹介されていました。当記事では厳選して紹介していきます。

◼︎フェラーリを手がけるデザイン会社によるレーザー増毛デバイス

まずはHEAD TO TOEのHEAD、ヘアケア製品を紹介します。2000年創業のヘアケア専門会社が今年のCESで紹介していたのは、レーザー照射の増毛プロダクトHAIR MAX。2005年から500人程の被験者を対象に実験したところ、90%が効果を体感したそうです。発表会場でも行列ができていましたが、他にも似たのデバイスが展示されている中でHAIR MAXが行列を作っていたのはフェラーリのデザインも担当するピニンファリーナが手がけたデザインだからでしょうか?デザインと機能も含めて「使ってみたい」という気持ちにさせますね。

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人体に安全なレーザーを照射して頭皮の活性化を行う。ヘッドバンド型(右)とブラシ型(左)がある。

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照射してみると数秒に一回ブルブルと刺激が来るが、痛みなどは伴わない。飽きず使う続ける事が成果を生むのだろうと思ったプロダクト。

デザイン面が優れていたプロダクトをもうひとつ紹介します。フィリップ・スタルクがデザインしたWisTikiも展示されていました。このプロダクトは鍵や財布、ペットなど、紛失したり迷子になると困ってしまうものに対してタグをつけてスマホから管理するためのものです。"スタルクデザイン"といえばかつてはカルテルの家具を買って喜ぶものでしたが、Parrot社を始めとして最近ではスタートアッププロダクトのデザインに進出し、楽しむことができます。小型で邪魔にならない、そして持ってて嬉しいし役立つ--デザインが優れていると、他のプロダクトとの差別化要因として大きく働くことが、CESで多くのプロダクトを見ていると体感できます。

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スタルクデザインの小型タグ。3mmほどのデバイスで財布のなかやキーホルダー、ペットの首輪につけて楽しむことができます。

◼︎シールで測定。リモートでもスマホで確認できる体温計

働くママは保育園で待っている子供の体調が気になるもの。このTEMP TRAQ CONNECT、シール型の体温計があれば遠隔地にいても子供の体調が確認でき、変化をすぐに察知できます。薄さ1mmほどの薄型のシールデバイスの中にはマイクロコンピューターやフレキシブルに曲がるバッテリーを搭載。体に優しくフィットした形で体調管理ができます。子供だけではなく高齢者をはじめあらゆる年代の方々に利用が出来るので、遠隔地に大切な家族がいて常に体調を確認したい場合、このシール型デバイスが安心をもたらしてくれます。マイクロコンピューターはINTEL? AMD?と確認したところ、そこは教えてくれなかったのですが...身につけるものなので信頼できる中身であることを期待します。

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シールサイズ。厚みは1mmもないほど。これだと装着していても違和感がないウェラブル測定機器。

Withingsは日々忙しく過ごしている人にありがたい、そんなプロダクトを展示していました。コメカミに当てるだけで即座に測定できるもので、体調管理もスムーズに行えますね。

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コメカミにあててすぐに体温がわかるWithings

◼︎ネイルサロン泣かせ?5秒で完了ネイルアート

女性は毎月ネイルサロンにお金がかかってしまう...そんな方には朗報です!複雑なネイルアートも5秒で完成してしまうプロダクトが展示されていました。現在はサロン向けのプロユースとして紹介されていますが、2年以内にはホームユースのプロダクトもリリースするとのこと。本当に5秒で完成するの?!と思ったら、実演でYES, 5秒で完成。これは欲しい!自分で撮影した写真やイラストもスマホから取り込めるらしい。ネイルサロンに行く手間暇を考えたら、ちょっと奮発してでも欲しくなっちゃいます。

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ちょっと複雑なデザインもたったの5秒。プリンター技術の発達は美容の世界も変えていきそうです。

◼︎寒暖の差はスマホでコントロール。スマートシューズで冬も足元ほっかほか

今年のラスベガスは寒く、夜の散歩もちょっと躊躇するほど。そのような寒い夜でもこの靴があれば安心!なスマートシューズも展示されていました。スマホで靴の中敷ヒート温度をコントロールして、足元から体を温めてくれるスニーカーです。コンセプトはいいのですが、重い。いうなればスノボブーツを履いて歩くような重さになるので、まだまだ改良は必要ですがいままでのデータトラッキングするだけの受動的なスマートシューズから、積極的に足を温める能動的なプロダクトへ変換したのは2016年だからこそ?でしょうか。女性向けパンプスバージョンのプロトタイプもあったので、今後も楽しみです。

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◼︎LEAP MOTIONを超える?おもちゃはよりフィジカルアクティビティに接近する

スマホやPCの売り上げが鈍化傾向にあるなか、世界的に成長している産業のひとつがおもちゃ産業のようです。マインドストームを始めとするデジタルトイは子供ひとりひとりにあわせてカスタマイズ可能ですが、今回展示されていたZIROも新しいデジタルカスタマイズトイとなりそうです。こちらはロボットに装着できるモジュールとグローブのセットになったおもちゃで、デバイス間をシンクロさせると体動にあわせておもちゃをコントロールできます。お人形遊びもこのキットがあるとより没入型の遊びに変化しそうですね。

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グローブを装着し、自分が作ったおもちゃとシンクロさせるとコントロール可能。LEAP MOTIONよりも可動範囲の自由があり、より直感的に楽しめました。

◼︎各国メディアから注目を集めるCerevoの新商品群

岩佐琢磨氏率いるCerevoブースは事前発表時から多くの人だかりができていました。今回紹介していたのは、3Dプリント技術を用いたIoTロードバイク「ORBITREC」と、自走するプロジェクター搭載の可変型ホームロボット「Tipron」の2新製品。ORBITREC(オービトレック)はオーナーの体にフィットする自転車フレームを安価につくるために、チタン焼結型 3D プリント技術とカーボンファイバーチューブを組み合わせた構造を利用し、本格的なレースでも使えるようです。軽量オーダーメイド・フレームにも関わらず、最短納期1カ月以内、価格7,000ドル以下とのこと。画期的なプロダクトをリリースした岩佐社長はひっきりなしに各国の取材を受けていました。

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本格レースでも利用できる、3Dプリンター活用のIoT自転車ORBITREC

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可変型ロボットプロジェクターTipronティプロン。プロジェクターにも生命が宿りはじめます。

◼︎デジタルが浸透し、本格的に生活を楽しむためのデバイスの登場

4年目のCES Unveiled会場の展示ブースを体感し、より生活に身近なプロダクトが勃興してきた印象を受けました。ドローンや3Dプリンター、ウェアラブルデバイスの登場当初に比べると驚きが少なかったのですが、それは裏を返せばテクノロジー先行の突飛なアイディアよりも、使ってくれる人の幸せを願う、生活者のユースケースをしっかりと考えたプロダクトがではじめたということともいえます。これはデザイン思考とマーケティングをしっかりと考えたプロダクトがより必要になる時代ともいえます。当記事では紹介できなかったのですが、アイディア勝負のプロダクトよりも、既存のインフラを活用したプロダクトも出始めています。

今年のCESではスタートアッププロダクトの展示は昨年の375社から増加し500社になったそうです。そんな競争が激しくなるデジタルデバイス市場で生き残るためには、ユースケースをしっかりと考えたプロダクトが大切であることを改めて認識させられました。ラスベガスからの続報はまだまだ続きます!

取材・文:西村真里子

SENSORS.jp 編集長
国際基督教大学(ICU)卒。IBMでエンジニア、Adobeにてマーケティングマネージャー、デジタルクリエイティブカンパニー(株)バスキュールにてプロデューサー従事後、2014年に株式会社HEART CATCH設立。 テクノロジー×クリエイティブ×マーケティングを強みにプロデュース業や執筆活動を行う。スタートアップ向けのデザイン&マーケティングアクセラレーションプログラム「HEART CATCH 2015」総合プロデューサー。 http://events.heartcatch.me/

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