破壊的変化に取り残されないために、
リーダーが率先して経験せよ
リーダーは未知の物事、つまり破壊的変化に対して適切に判断するのが難しい。ならば変化の実情を、みずから学び経験してはどうか。アンソニーはアプリ開発を勧める。
リーダーがその地位を獲得しているのは、現在の(あるいは過去の)ビジネスに熟達してきたからである。そのため当然ながら、市場の破壊的な変化に遭遇する時、それに関する直接的な経験を持ち合わせていない。新しくて異質な物事に対する洞察力が欠けていると、進歩が遅れるだけで済めばよいが、最悪の場合には戦略上の重大な失策に結びつく。
では、リーダーはどうすればよいのか。デイビッド・グレッドヒルの場合は、プログラミングを学ぼうと決心した。
グレッドヒルは、シンガポールのDBS銀行でグループ・テクノロジー&オペレーションズ部門のエグゼクティブ兼ヘッドという職に就いている。DBSは3000億ドル超の資産を有し、時価総額約350億ドルというアジア有数の銀行だ(2015年9月時点)。同社のCEOピユシュ・グプタは数年前から大胆な変革プランを推し進めており、特にデジタル技術への取り組みに重点を置いている。
デジタル面を強化したい銀行にとって、スマートフォンは明らかに重要な成長分野である。DBSはモバイル機器のみで利用可能な銀行サービスを、インドなどの市場で提供する方法を積極的に模索していた。グレッドヒルは「第4世代」の技術者であり、コンピュータとエレクトロニクスに関する学位を取得してはいるものの、正式な教育を受けたのは数十年前、スマートフォンとアプリが登場するはるか以前だった。
「私がプログラミングをやっていたのは20年前で、当時そのようなものは影も形もありませんでした」と、グレッドヒルは言う。「私はスマートフォンの内部で何が起きているのかを深く理解できず、そのままではテクノロジー部門のリーダーとして任務を果たすのが難しかったのです」
やがてグレッドヒルは、自分でアプリをつくってみることを決意した。そのきっかけとなったのは、ある晩の出来事だ。
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