2016年も、モバイル業界には大きな動きがありそうです。この1年がどのような動きになるのか。2016年最初の連載として、ここではモバイル業界に起こりそうなことの予想や、注目しておきたいポイントを挙げてみました。

まずは確度が高い話から挙げておくと、各社とも、LTEがさらに高速化される予定です。ドコモは、2016年から3.5GHz帯の利用を開始する予定で、通信方式は、TD-LTEになります。ただし、電波は周波数が高いほど、障害物に弱くなるため、その範囲も狭くなります。そのため、3.5GHz帯はスポット的に、速度を上げるために利用されるようです。

ドコモでは、この周波数を既存の周波数と組み合わせてキャリアアグリゲーションを行い、下り最大370Mbpsの速度を実現する見通し。すでにロードマップは公開されていますが、早ければ夏ごろに、この周波数に対応した端末も出てくることが予想されます。

昨年7月に上海で公開されたドコモのロードマップ
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ドコモほど詳細なロードマップは明らかにしていませんが、3.5GHz帯は、KDDIやソフトバンクにも割り当てられており、各社とも実験を進めています。2016年は、この周波数を使ったLTEの高速化や、それに対応した端末の登場が1つの話題になりそうです。

KDDIは6月に3.5GHz帯のサービスを開始予定
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一方で、昨年末に総務省が発表している、料金値下げのタスクフォースを受けたとりまとめを見ると、こうした新技術に対応した端末が、きちんと普及するのかには疑問符もつきます。すでに総務大臣から各社に要請が出ており、今後は、「低容量の料金プラン」が新設されたり、「端末への大幅なキャッシュバック」ができなくなったりと、さまざまな変化が起こります。

総務省で開催されてきたタスクフォースの様子
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「実質0円」がなくなってしまうのか、はたまた「一括0円」のような大幅な割引ができなくなるのかはまだ不確定ですが、いずれにせよ、端末購入時の負担感が上がってくるはずです。その結果として、各社とも、ハイエンドモデルに偏らないラインナップが求められるようになります。ミッドレンジモデルは、ハイエンドモデルから一部要素だけを採用し、全体としてスペックを落としています。ある意味で、こなれた技術だけを採用した端末とも言えるでしょう。

そのため、各社が最新の周波数で、高速化を実現したとしても、その恩恵を受けられるのは一部だけということになります。2020年に向け、5Gの導入を控えている中で、本当にこうした施策を今行うべきなのかには疑問を差し挟む余地はありますが、キャッシュバック競争が激化していたのも事実。その結果として、どこまで端末の売れ行きや、ラインナップに影響を与えることになるのかは、注目しておきたいところです。

ミッドレンジ端末が各社の主流になる可能性も
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ここからはだんだんと予想に近くなってきますが、ウワサされている廉価版のiPhoneが日本で投入される可能性も十分あります。iPhone 5cでは大失敗したアップルですが、より安価が端末が受け入れられる下地は整ってきています。ある程度、ハイエンドのiPhoneの要素を残した端末であれば、日本でもきちんと受け入られるかもしれません。逆に言えば、現状の価格帯だと、アップルにとっては非常に苦しい1年になるおそれもあります。

端末に関しては、Windows 10 Mobile搭載モデルの登場にも期待しておきたいところ。すでに発表されているように、トリニティのNuAns NEOが1月に発売される予定です。また、まだアナウンスがありませんが、Windows 10 Mobileを搭載した真VAIO Phoneの投入も、それほど遠い時期にはならなさそうです。ほかにも、Acerなど、まだWindows 10 Mobile搭載スマホを発表していないメーカーがあり、これらの登場や、実際問題として、どの程度普及するのかも注目しておきたいところです。

Windows 10 Mobile端末も続々と登場する予定
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MVNOについては、今年も順調にユーザー数を増やしていくでしょう。ただし、料金競争もすでに限界を迎えつつあります。現状の相場でも、データ通信だけなら、3GBで900円台。毎年のように最低料金での容量がアップしてきましたが、そろそろそれも厳しくなっています。それでも、ドコモやau、ソフトバンクといったMNOから回線を借りる際の料金である「接続料」は、年々下落しています。この浮いた費用を、どこまで回線の品質に回せるのかが、今後の焦点になっていきそうです。

また、MVNOの推進は、昨年のタスクフォースでも議論になっており、総務省のとりまとめでは「HSS/HLR」(加入者を管理するデータベースのような機能)の開放に向けた協議を進めていくことが、明記されました。2016年内に実現することが決定したわけではなく、開放が決まったとしてもMVNOがすぐにサービスを行えるものでもありませんが、この協議がどうなっていくのかは見守っていきたいポイントです。

加入者管理機能の開放に向けた協議の加速することが明記された

もしこれが実現すれば、ドコモとauの回線を両方借り、1枚のSIMカードで好きな方に接続するといったサービスも可能になります。日本通信やIIJ、mineoのように、HSS/HLRまで持った「フルMVNO」のポジションを狙っているところもありますが、今後は技術力やサービスの提案力の差によって、MVNOの優劣が明確についてしまう可能性も残されています。

伸びていくMVNOに対し、いわゆる大手3キャリアがどのように対抗していくのか。または、どう協力して市場を広げていくのかにも注目しています。
「LTEは370Mbpsに」、「実質0円スマホが終了」!? 2016年モバイル業界予測とそのポイント(週刊モバイル通信 石野純也)

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