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砂原良徳×山口一郎 捨て身でシーンを変えた電気グルーヴを語る

砂原良徳×山口一郎 捨て身でシーンを変えた電気グルーヴを語る

『DENKI GROOVE THE MOVIE? ―石野卓球とピエール瀧―』
インタビュー・テキスト
柴那典
撮影:永峰拓也

石野くんも瀧も普通じゃないですよね。でも、三人の中では瀧が一番常識人。非常識なのが石野くんと僕。(砂原)

―電気グルーヴはデビューから25年以上活動を続けてきたわけですが、稀有な存在であり続けていますよね。砂原さんから見た石野卓球さんとピエール瀧さんの特殊性ってどういうところにあると思いますか?

砂原:まあ、二人とも普通じゃないですよね。でも、瀧はけっこう常識人なんですよ。三人の時代も一番常識人で、非常識なのが石野くんと僕。ただ、石野くんはリーダーだし、ものごとに対する責任感は強いような気がするな。それ以外は全部特殊ですけど。

『DENKI GROOVE THE MOVIE? ~石野卓球とピエール瀧~』 ©2015 DENKI GROOVE THE MOVIE? PROJECT
『DENKI GROOVE THE MOVIE? ~石野卓球とピエール瀧~』 ©2015 DENKI GROOVE THE MOVIE? PROJECT

山口:僕の印象は、自分がメディアで知っていた電気グルーヴのまんまだなっていう感じでしたね。「仲良いな(笑)」みたいな。普通、初対面のときって自己紹介から始まるじゃないですか。そうじゃなくて、いきなり二人の会話の中に巻き込まれるんですよ。卓球さんが瀧さんをなじっていて、その感想を僕に求められるみたいな(笑)。誰に対してもフラットな人たちというか、先輩も後輩もなくて、中学生男子みたいだなって。だから信頼できるというのはあると思います。

―山口さんと卓球さんは話していてどんな感じになるんですか?

山口:卓球さんは、僕に対する接し方もすごくいじわるなんですよ(笑)。前に田中フミヤさんと卓球さんがいるところに僕が一緒になって。僕は田中フミヤさんとは初対面だったんですけど、昔からすごく好きだったんですよ。そしたら卓球さんが「サカナクションの山口はずーっとフミヤの悪口言っててさ!」みたいに言うんです。「そんなこと言ってないです」と言ったんですけどちょっと気まずい空気になって、卓球さんはその雰囲気を見て笑ってるという。いじわるだなって。

『DENKI GROOVE THE MOVIE? ~石野卓球とピエール瀧~』 ©2015 DENKI GROOVE THE MOVIE? PROJECT
『DENKI GROOVE THE MOVIE? ~石野卓球とピエール瀧~』 ©2015 DENKI GROOVE THE MOVIE? PROJECT

―本当に中学の部室の先輩みたいな感じですね(笑)。

山口:遊び方を知ってるんですよね。大きい空間の遊び方も知ってるし、人と人とのコミュニケーションの遊び方も知ってる。意外とすごく周りを見ていらっしゃるなとも思うし。

砂原:それはある。空気を感じているんだよね。

海外でトライするためには、日本のシーンを成熟させることが重要なんじゃないかと思っているんです。(山口)

―山口さんから砂原さんに、電気グルーヴのときの体験で何か聞いてみたいことはありますか?

山口:日本である程度地位を固めたタイミングで、海外に行って活動したことについて聞きたいですね。それってすごいことだと思うんですよ。自分たちの音楽をそのまま持っていくのはすごく勇気がいることだし、僕らはまだチャレンジしてないことなので。

砂原:1990年代後半って、日本人がわりと海外に出ていたんですよね。ピチカート・ファイヴとかコーネリアスとか。彼らの作品は海外のレコードショップにも置いてありました。電気グルーヴも、石野くんはソロでドイツのレーベルと契約していたし、僕も当時そのレーベルと個人で契約してた。だから基盤はすでにあったんですよ。

『DENKI GROOVE THE MOVIE? ~石野卓球とピエール瀧~』 ©2015 DENKI GROOVE THE MOVIE? PROJECT
『DENKI GROOVE THE MOVIE? ~石野卓球とピエール瀧~』 ©2015 DENKI GROOVE THE MOVIE? PROJECT

―当時の時代性というのもあった。

砂原:あの頃は、やっと日本の音楽が海外に認知された頃だったと思うんですよね。今考えると日本ブームだったのかもしれないけど、僕らとしては自然な成り行きだったんです。もうここはやるしかないよね、みたいな。

山口:僕が思うのは、日本のミュージシャンが海外に向けて作るときに、海外に合わせて作るとまた違うものになると思うんですよ。たとえばK-POPの人たちって、自国よりも海外にウケることを目的にして曲を作ったりするわけじゃないですか。そこで生まれているものって、自分たちの国の文化が培ってきた歴史がさほど重要視されていないような気がするんですよね。

左から:砂原良徳、山口一郎

―そういう形でグローバルに進出するミュージシャンは多いですね。

山口:でも僕らには素晴らしい先輩方がいて、日本の音楽シーンで培われたルールがある。そのパッケージのまま海外にトライするためにも、一層日本のシーンを成熟させることが重要なんじゃないかと思っているんです。

砂原:今、きゃりーぱみゅぱみゅみたいに、日本ならではの特殊性を持ったものが海外に受け入れられているケースはありますよね。ただ、普通の日本のポップスを海外に持っていくのは難しいかなと感じます。日本独特のルールがある気もするし。当時の僕らはそもそも聴いてきた音楽が圧倒的に海外のものが多かったので、それをそのまま自然に海外でもやった感じなんですよね。

山口:今の若い子たちは洋楽を全く聴かない人たちも多いですからね。

砂原:僕らが中学生の頃は海外の音楽ばっかり聴いていたから、海外でやるのは普通なことだった。タワーレコードとかで売ってるCDも、輸入盤がほとんどで国内盤はほとんどなかったし。YMOも当たり前に海外でやったりしていたから、その頃と今とは全然違う感じがしますね。

山口:僕は、これからの時代にダンスミュージックやテクノやエレクトロニカがメインカルチャーになることはないと思うんです。だけども、メインカルチャーの中での良い違和感として作用していくと思うし、そうあるべきだと考えていて。

―山口さんは「未来の音楽に嫉妬したい」とよく言っていますよね。やっぱりまだまだ音楽は進歩していくはずだし、若い世代が作り出すそれを楽しみにしたいという気持ちがある?

山口:変なやつが出てきたらいいですよね。自分たちが想像してなかったような、海外から見ても面白いものを作るような若い人が出てきてほしいし、それが日本でも爆発する瞬間が生まれたらいい。その根っこのところにダンスミュージックやテクノやエレクトロニカがあればいいし、自分らがその礎になりたいなと思います。

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作品情報

『DENKI GROOVE THE MOVIE? ―石野卓球とピエール瀧―』
『DENKI GROOVE THE MOVIE? ―石野卓球とピエール瀧―』

2015年12月26日(土)から全国で2週間限定公開
監督:大根仁
出演:
電気グルーヴ
天久聖一
Andi Absolon
ANI(スチャダラパー)
Bose(スチャダラパー)
CMJK
DJ TASAKA
日高正博(株式会社スマッシュ代表取締役)
ケラリーノ・サンドロヴィッチ
道下善之(株式会社ソニー・ミュージックアーティスツ)
中山道彦(株式会社ソニー・ミュージックアーティスツ代表取締役)
小山田圭吾
SHINCO(スチャダラパー)
砂原良徳
山口一郎(サカナクション)
山根克巳(LIQUIDROOM)
山崎洋一郎(『ROCKIN'ON JAPAN』総編集長)
WESTBAM
配給:ライブ・ビューイング・ジャパン

プロフィール

砂原良徳(すなはら よしのり)

1969年9月13日生まれ。北海道出身。電気グルーヴに91年に加入し、99年に脱退。電気グルーヴの活動と平行して行っていたソロ活動では、95年にアルバム『Crossover』、98年にはアルバム『TAKE OFF AND LANDING』、『THE SOUND OF ‘70s』を2作連続リリース。01年に電気グルーヴ脱退後初となるアルバム『LOVEBEAT』をリリース。02年には幕張メッセで行われたフェスティバル“ELECTRAGRIDE”でキャリア初となるソロライブを披露。その他にもACOのシングル「悦びに咲く花」、映画「ピンポン」の主題歌となったスーパーカーのシングル「YUMEGIWA LAST BOY」などのプロデュースや数多くのCM音楽などを手掛ける。09年には映画「ノーボーイズ、ノークライ」(主演:妻夫木聡/ハ・ジョンウ)のサウンドトラック『No Boys, No Cry Original Sound Track』をリリース。2010年には元スーパーカーのいしわたり淳治とのユニット<いしわたり淳治&砂原良徳>を結成し、相対性理論のやくしまるえつこをボーカリストに迎えてシングル「神様のいうとおり」をリリース。2011年4月には10年振りのオリジナルアルバム『liminal』をリリース。2015年には高橋幸宏、TOWA TEI、小山田圭吾、ゴンドウトモヒコ、LEO今井とともにMETAFIVEを結成し、2016年1月にアルバム『META』をリリースした。

山口一郎(やまぐち いちろう)

1980年生まれ。北海道出身。サカナクションのボーカリスト兼ギタリスト。2005年に活動を開始し、2007年にメジャーデビュー。日本語を巧みに扱う歌詞とフォーキーなメロディーを土台にロックバンドフォーマットからクラブミュージックアプローチまで様々な表現方法を持つ5人組のバンドとして活動を行う。2015年、クリエイター・アーティストと共に音楽に関わる音楽以外の新しい形を提案するプロジェクト「NF」を恵比寿LIQUIDROOMで定期開催。10月には11thシングル『新宝島』がリリースされた。リリースとほぼ同時に全国ツアー『SAKANAQUARIUM2015-2016 "NF Records launch tour"』がスタート。2016年3月まで各地をまわる。

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