河川流量減 水力以上に火力や原発稼働に悪影響
欧州の研究チームが試算結果を発表
地球温暖化が進んで干ばつなどで河川の流量が減ると、水力発電所以上に火力や原子力発電所の稼働に悪影響が出るとの試算結果を、欧州の研究チームが4日の英科学誌ネイチャー・クライメート・チェンジ電子版に発表した。今世紀末には火力と原子力の発電容量が20世紀末と比べ最大で約2割落ち込む恐れがあるとしている。
2010年に世界でつくられた電気のうち、水力発電によるものは17%。火力(石油、石炭、バイオマスなど)▽原子力▽地熱−−の各発電も蒸気を冷やすのに水が必要で、これらで発電量の81%を占める。日本の火力発電所や原発は海水を使うが、海外では河川の淡水利用が中心だ。
チームは、現在使われている2万4515の水力発電所(世界の発電容量の78%)、1427の火力・原子力・地熱発電所(同28%)を抽出。地域の河川の流量や水温の変化をシミュレーションし、影響を予測した。
その結果、温室効果ガス削減の有効な対策を取らなかった場合、米国や東南アジア、欧州中央部、南米南部などの河川は、今世紀半ばに干ばつなどで流量が減少する。面積は全体の約8%にとどまるが、この地域には水力発電所が集中立地しているため、74%の施設が悪影響を受け、世界全体の発電容量が今世紀半ばに最大3.6%、今世紀末には6.1%減るとされた。
さらに火力・原子力・地熱の場合は、流量が同じでも水温が上がれば冷却効率が悪くなる。影響を受ける施設は最大86%に及び、発電容量は今世紀半ばで12%、今世紀末には19%減るとされた。
発電に使う水の消費量は、世界の人口増に伴って今後40年間で2倍になるとの試算もある。研究チームは「発電効率を上げたり、水循環のシステムを作ったりと、影響を軽減できる手段はある。火力や原子力を今後も使うのであれば、今から水不足に備えた対策を検討すべきだ」と指摘する。【大場あい】