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トップページ > 神代ふみあき書庫 > 非赤松椎名系作品 > 夫婦でニューゲーム > 第三十五話 無敵は素敵
えー、もう書かないんですかぁ?
あの夫婦結構好きなんですけどぉ、みたいなメールがたまっていましたが。
書いてますよ書いてます、ええ、かきましたw
というわけで、夫婦でニューゲーム、お楽しみください
急いで管制室に飛び込むと、報告が津波のように押し寄せる。
大凡纏めると、次元湾曲空間がミッドチルダ全体に発生している、というものであった。
中でもクラナガンでの密度は濃く、一般人への外出禁止令と予備役の非常呼集が発令。
機動第六課もその召集受付窓口になっていて、ご近所の予備役がどんどん集まっているという。
「旦那ぁ、なぜか主婦率が高い件について」
「嫁、気にしたら負けです」
理由は考えない。
たぶん、うちの部隊の通常訓練の内容が漏れている影響なのが知れるだけだから。
「本局と地上本部との回線を密にするんや! 訓練生は完成補助に回りぃ!」
「「「「「マム、イエスマム!!」」」」」
情報収集に走る隊員達をみつつ、はやてちゃんが俺に頭を寄せた。
「何が起きてるん?」
「んー、魔力の飽和崩壊って感じじゃないから、一種の自然現象か外部干渉か、かな?」
「ゆーくん、物騒なこといっとらんか?つうか、飽和崩壊ってなんなん?」
「そうでもないわよ、はやて。飽和崩壊なんて起きる前にモーズアプリが魔力転送するだろうし」
「アリサちゃんや、うちも知らんモーズの機能について聞きたいんやけど」
「ふっふっふ、聞きたい、聞きたい? はやてちゃんききたい?」
「スズカちゃん、うちはアリサちゃんから聞きたいんや」
激痛に耐えるかのような仕草で頭を抱えるはやてちゃん。
ああ、彼女は立派に
「報告です」
「きくわぁ」
ゆっくりと頭を解放したはやてちゃんはまじめな顔で向き直った。
報告された内容から検討するに、人的被害は発生していないようだが、次元湾曲空間が徐々に転移しつつも大きくなっているようで。
小さい段階で海の次元艦がアルカンシェルによる攻撃を加えたそうだが、攻撃により一時的に四散したものの間をおかず再度発生し、次元艦を飲み込んだそうだ。
飲み込みの速度自体は遅かったそうで、脱出は完全に成功したそうだが、最新鋭艦を無駄にした現実において一つの現実が存在した。
魔法による攻撃が効果なし、というもの。
「あかん、次元艦も太刀打ちできんしアルカンシェルも効かん。お手上げや」
といいつつ、はやてちゃんはなぜか嫁を見ていた。
「あれやなぁ、やっぱ、アルカンシェルも越える砲撃魔法を試してみんとあかんやろなぁ・・・」
「やめとけって、はやてちゃん」
「せやけどなぁ、なんか本局からうちの戦力出して牽制して見せろみたいな話がガンガンくるんよ」
うちの戦力、というと、やはり最強戦力は嫁。
前世から続く無限の研鑽で、正直個人の砲撃魔法としては規格外すぎるレベルに達している。
加えて言えば、地上設置型とはいえ魔導力炉で作られた純粋魔力によるアルカンシェルにも、通常砲撃魔法で打ち勝っているという事実が今回の要求に力を加える。
そう、単純な攻撃力は次元艦を越えるという砲撃魔法使いが所属しているのだから、頼りたい気持ちも分からないでもない。
とはいえ・・・。
「却下ですね」
「せやなぁ」
「えーっと、大切に思ってくれる旦那の気持ちはうれしいけど・・・」
俺とはやてちゃんの言葉に、なぜかモジモジし始める嫁。
なぜに?
「流れ弾で都市破壊で壊滅。逃げまどう市民、混乱する政治、泣き叫ぶ子供、目に浮かびますね」
「せやなぁ」
「ひどいの、ひどすぎるの!!」
まぁ冗談はそこまでとして、防御を捨てた最高出力なら威力は上だが、実戦力ではない。
そうなると・・・
「なぁゆーくん」
「まぁ、召集するしかないかなぁ」
むー、と腕組みしている俺へ何故か周囲の視線が集中する。
「だ、大隊長、ま、まさか・・・」
「裏MS」
「「「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁ」」」」」
それはパニックという言葉を絵に描いたかのような光景。
心弱い系はそのまま倒れたし。
あれだ、あれ、成層圏イズナ落とし。
あれがいろいろと不味い角度でトラウマになってるっぽい。
運良く死者はいなかったけど、一生残るトラウマを刻んだ事実は変わらない。
『『『『その言葉、まっていたぞ!!!』』』』
どこからともなく響きわたる雄々しき声。
そう、管理局の各所の主要部分に散っている、自称魔法少女達の「雄々しき」声であった。
『大隊長、召集こそが唯一の選択じゃ!』
『我ら08MS小隊はすでに準備万端じゃ!』
『ふははははは、わしなど期待しすぎて腹筋が痙攣しておるわぁ』
通信機を通していないのに、なぜか指揮所に響きわたる声に、機動第6課の指揮所は恐怖に彩られていたりなんかする。
「みなさん、現在08MS小隊への派兵許可はでていません。もちろん、表の01から07も同様です」
『そんな、大隊長。この暗黒に覆われた闇夜を照らせるのは、我ら魔法少女だけじゃ!!』
『『『『『しかり、しかり!!』』』』』
暴徒寸前の勢いだが、散らす他無い。
「1時間後に待機命令を大隊長権限で行使します。待機期間は12時間。その間に出動がなければ現行任務へ復帰してください」
これが譲歩できる最大の所だ。
これ以上は無理。
そんな俺の判断を効いて、08MS小隊員たちは引いて見せた。
納得しておく、と。
ただし、12時間の待機中に事件が進行したら、大隊長令を無視してでも出動する、と。
で、責任はこっち持ちだとか無茶ぶり。
あの三提督でも匙を投げる08MS小隊はすでに臨界状態。
聞いていた嫁ですら真っ青であった。
「とりあえず、威力偵察って事で、嫁、つきあってくださいね」
「・・・やさしくしてね?」
この状況で、この手のボケができるのだから、うちの嫁はたいしたものである。
単純に言って、この次元湾曲空間。
明らかにおかしいモノがあった。
何しろ自然発生しているにしては、俺と嫁を追いかけすぎるのだ。
まるで俺たちを囲い込むかのように追いかけてくるモノだから、アルトを機動状態で運用してしまったほど。
「旦那、このままだとジリ貧なの」
「あー、とりあえず召集しますか」
「せめて私が撤収してからにしてほしいの」
「逃げ切れませんけどねぇ」
こんな会話をしているが、アルト経由で現在もデータ収集をしており、この次元湾曲空間が魔法を拒絶する方向性を持っている事がわかった。
つまり、この次元湾曲空間に捕まると、魔法で維持しているモノが崩れるということだ。
「・・・ということは、MS召集は不味いって事ですね」
「安心したの、とっても安心したの!!」
すでに逃げ場のない包囲状態で、何を安心しているかはおいておいて。
俺たちは魔力によるバリアジャケットから、物理による強化服へ切り替えていた。
魔法がだめなら物理で殴ればいい、ときわめて脳筋発想であったが・・・
「いける、旦那、いけるの!」
ゆっくりとした動作からの中国拳法による突き、八極拳における
魔力も何もこもっていない、ただ純粋なクンフーによる一撃が不思議物体を叩き伏せたのだ。
この画像はミッドチルダ全体に放映されており、高町「拳聖」なのはとか、拳王なのはとか、ラオウなのはとかテロップが流れ、はやてちゃんは大爆笑だったと言うが、それは少し未来で聞く話。
それを見て俺も物理装備から棍を取り出す。
嫁みたいな積み重ねはないが、物理方向で増幅される強化服からの一撃は、次元湾曲空間を消滅に至らせた。
「はやてちゃん、聞こえる?」
『きこえてんでぇ』
「とりあえず、レベルをあげて物理で殴れということで」
『了解や。あと魔法で存在してる物質は却下やな』
「うん、結構不味い感じで崩壊してる」
視界の中には、魔法によって生み出された合金製のコミュニケーターなどがバラバラにされていたりする。
逆に、俺と嫁の強化服は、純日本部品でスカ産だったりするわけで、魔法物質はいっさい使われていない。
一応、MS関係者のバックアップ装備は「強化服」なので表のMS部隊も含めて今回の事例に対応できるのだが、すべてを打ち砕く事への忌避感もある。
単なる勘だが。
「旦那、なんか不味い気がするんだけど」
「あー、嫁、私もそう感じてます」
そう、この背中がぞくぞくする感覚。
間違いなく、破滅的な何かが迫っている感じだ。
たぶん、あのときと同じ。
あれ、そう、あれ。
「はやてちゃん、ちっと不味い感じじゃない?」
『ゆーくん、まじやばや。なのはちゃんとゆーくん中心で次元湾曲空間の密度があがっとる』
「あー、それって簡単に言うと?」
『次元漂流する可能性が高いつうことや』
不意にいろいろと事象が思いついたが、現状の解決にはつながっていない事は間違いない。
足下に科学的な情報アンカーや空間認識用の情報収集を開始しつつ嫁を見つめる。
「さってと、嫁。とりあえず、キスをする時間ぐらいはありそうなんだけど」
「抱きしめあってキスすることを要求するの」
わりと絶望的な感覚はある。
しかし、それでも嫁と、なのはと一緒なのだ。
この抱きしめた先にある連れ合いと共にあるなら、天国だろうと地獄だろうと変わらぬ住処になるだろう。
「じゃ、はやてちゃん、しばらくMS部隊頼んだよ」
「はやてちゃん、あとのことおねがいなの」
悲壮感も何も感じられない通信の後、嵐のような次元湾曲空間の来襲のなかで二人が消えた。
深見祐一、高町なのは。
ミッドチルダでも有数の商社「Fukami」の跡取り息子とその嫁。
彼らが次元湾曲空間の中に消えたという情報が伝播するに従って、管理世界は大いに揺れたのだが、二人には分からない話であった。
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