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第三十七話 あなたと私の希望絶望

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 ちょっと違う97管理外世界からの帰還は突然だった。

 

 UKと日本の定期移動中、北極海で異常空間を発見。

 調査に行った俺と嫁と、猫猫姉妹。

 そしてそれが「あれ」だと理解した俺たちは、猫猫姉妹に別れを告げつつ飛び込んだ。

 

 

 結構な賭だったんだけど、戻ることに成功。

 転移先はクラナガンで、俺たちが消えてから半月後であった。

 復旧した通信回線ではやてちゃんに連絡すると、ぐちゃぐちゃに泣き乱れたフェイトちゃんが応答し、「にゃのはぁぁぁぁ、ゆういちぃぃぃぃぃ」と繰り返すばかりで話が進まず、致し方なく通話状態で移動を開始。

 機動第六課に到着すると、まさに黄金特急が嫁を直撃したが、予想の範囲だったらしく受け止めてみせた。

 愛ある関係だと感心しているところ、俺にも突撃してきた特急あり。

 

「ゆーーーーーくーーーーん!!」

 

 がしっと受け止めつつ軽く抱きしめる。

 

「お久しぶり、はやてちゃん」

「・・・ああ、やっぱり無事やったんやね」

 

 感動の再会はそこまでとしつつ、会議室で軽い報告会を実施した。

 まず、俺たちがいなかった半月間での世間の動きはというと・・・

 まさに激動だった。

 まず、あの08MS小隊。

 待機12時間で暴走した。

 俺たちが消えた後、あの異常空間は消えたそうだが、それに併せてFukamiや機動第六課を接収しようと動き始めた部署が暴走し始めたそうだ。

 武装部隊まで出動して機動第六課局舎を包囲したところで登場したのが08MS小隊。

 地域制圧を五分ほどで終えたMS怪人達は、そのままの勢いで本局の小悪党達を刈り取り、衆目の前で「魔法少女」化させて全世界ネットで放映させたり何だったり。

 まさに鬼の所行。

 この行為をおそれた小悪党達は直ちに行動を取りやめ撤回し、謝罪会見まで実施。

 魔法少女にされてさらされるぐらいなら、記者会見で土下座した方がマシと言うことらしい。

 そんな大暴れに満足したMS怪人達は、現在元の部署で溌剌とした活躍をしているとか。

 はやてちゃんもも余りにあっさりと活動をやめるので、訳を聞いてみたのだが・・・

 

「これ以上暴れれば、大隊長の責任範囲を超えるのでな」

 

 と、あらゆる責任を大隊長名義で押しつける来満々の答えが返ってきて驚いたそうだが、それ以上に帰還をみじんも疑っていない事の方が驚いたとか。

 

 とはいえ、不安に刈られて不定期に泣き出すフェイトちゃんはさておいて、はやてちゃんやアリサ、すずかちゃんも無事は疑っていなかったそうだ。

 ただ、帰還時期が不安定なので現行戦力の安定維持に腐心しなければならないことに不安を感じていたという。

 表のMSはいいだろう。

 第六課のほうも問題ない。

 一番の問題は、裏MS,第08MS小隊だ。

 何しろ口頭ではあるが、大隊長から一時的な権限の委任を公式記録で記録されてしまったのだ。

 

 つまり、MS怪人たちの手綱を握らされた。

 それも正規のルートで。

 加えて言えば、手綱を握っていた事実が公式資料で残ってしまったのだ。

 

 八神はやて、最大のピンチ、とか思ったらしい。

 

 もちろん、事件前後の暴走以外に問題は起きなかったのでMS怪人たちの宴は起こらなかったそうだが、それでも、いや、それだからこそ「安全に手綱を握り終えた」事実が大きくのし掛かっているとか。

 

「ゆーくん、責任とってや」

「心底すまん」

 

 手は打っておくべきだろう。

 次席指揮官とかだれか引っ張るか?

 もちろん、暴走爺どもは排除して。

 

「それはそれとして、どこに消えとったんや?」

「あー、説明が難しいの」

 

 ということで、レイハさんやアルトに記録された様々な映像を見せると、はやてちゃんも結構引いていた。

 

「うっわぁ、無茶してきたなぁ」

 

 苦笑いのはやてちゃんだったが、自分や自分の両親のことを思いやってくれているのがうれしいと言ってくれた。

 

「せやけど、このクライドさんをパパ呼ばわりはまずいんちゃうか?」

「正直、グレアムさんがどこまで黙っていられるかが鍵なの」

「あれやあれ、リンディさんが『泥棒猫』とか乗り込んできたり、その背後でクロノ君とうちが仲良くなってたり、あかん、ワクワクしてきたわ」

 

 どうもはやてちゃんも昼メロ思考らしい。 

 とはいえ、あの世界と今が繋がっていないのは確実らしく、逆におもしろい場所に行ってきたものだと感心された。

 

「にゃのはぁ、おとうさんの病気が治ってよかったねぇ」

 

 いまだ甘えんぼモードのフェイトちゃんをなでながら、嫁もほほえむ。

 

「うん、たぶんぜんぜん関係ない人ってぐらい離れた関係なんだろうけど、でも、助けられてよかったって思うの」

「そうですね、嫁」

「うん」

 

 とまぁそれはそれとして。

 管理局へ帰還報告やら平行世界への転移やら帰還手法やらなんやらの報告書を纏めたところ、是非とも研究したいとか何だとか申し出が殺到してきて、危うく学校の出席日数が不足するところであった俺と嫁であった。

 

 

 

 とりあえず、出席していない期間を休学扱いにして、復帰試験でクリアーするという反則を通したところ、通信教育組からは大いに受け入れられた。

 まぁ、単なる不登校ではない、柵で身動きがとれない系の生徒にとって、短時間で解決できる裏技はすばらしいものと思えるとか何とか。

 教育という点で言えば反則もいいところだろう。

 しかし卒業資格という点で言えばありなわけで。

 何しろ日本国内では保健室登校で出席日数だけを基準に卒業させちゃう場所だってあるのだから。

 無論、人格形成という部分においての不安はあるが、集団教育という場所以外でも人格形成はされているわけで。

 少なくとも、年三度ほどの面接に頼る形ではあるが、最低限クリアーしていることになっている。

 

「・・・だんな、わたし、今期から一芸ルート」

「はぁ、すでに学習が追いつきませんか」

「なの」

 

 うちの仲間内で一芸ルートに舵を切ったのは嫁とはやてちゃん。

 どちらも根性虫なので努力に時間が必要なタイプ。

 そのため、ミッド系の法規やルールなどの学習で時間がイッパイいっぱいになっている。

 逆にフェイトちゃんは天才肌で、学校教育や学習は結構楽々こなしているが、向き不向きがあり、管理局の資格試験系は弱いらしく半泣きになっている。

 

「ゆーいちぃ、たすけてぇ・・・」

「はいはい、筆記試験は合格点にしましょうねぇ」

「がんばるぅ・・・」

 

 まぁ、ミッドでも驚くほど低い年齢での資格取得を狙っているという点もあるので、二三度は落ちることは前提なのだが。

 試験の内容を身に感じて、実地試験を経験して、その傾向を見極めるという方向性はありなのだが、毎回本気のフェイトちゃんの心が折れないことを祈るばかりというかなんというか。

 

 

 

 

 第97管理外世界でのゴタゴタを納めて、あらためてミッドに戻ったところ、各方面からのお祝いと、表のMS教導部隊拡張+設置期間延長依頼が山のように集まっていた。

 設立当初から設置延長は声高に集まってきていたが、終了生が原隊復帰したとたんにその声がさらに高まった。

 やっぱあれだろう、引き締まった「それ」をみて、自分にも経験させろと叫んでいるに違いない。

 だって、嘆願メールの大半は「懇願」だものなぁ。

 

 実際、管理局の各戦闘部隊だけではなく、教導隊や事務部隊まで希望部署があがっており、その中の一部隊を見て嫁が目を細めていた。

 

「えーっと、庶務ですよね?」

「旦那と出会ったとき、所属していたところなの」

「おお」

 

 嫁は一時期魔法の力がポンコツになった時期があるそうだ。

 回数にして二回。

 一回は無茶に仕事をしてぼろぼろになったとき。

 もう一回は、義娘、ヴィヴィオと盛大な親子喧嘩をした後にと言う。

 この親子喧嘩、と聞いてなぜかはやてちゃんとフェイトちゃんが顔をひきつらせていたけど何故だろう?

 それはさておき、内部監査のトップクラスが山ほど在籍しているところなので、できれば教導してあげたいというのが嫁の希望だった。

 

「んー、理由は適当に考えますけど、MS教導ですよ?」

「平行して事務処理教導もするの」

「平行して?」

 

 思わず俺が聞くと、嫁はうれしそうにほほえんだ。




というわけで、ちょっと色々なものにつながって今回お終い。

おつかれさまでしたー

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