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トップページ > 神代ふみあき書庫 > 非赤松椎名系作品 > 短編集 > ちーととりっぱー「帝国生まれのフー」そのはち
えーっとお待たせしました。
更新です。
同盟経済が悲鳴を上げている。
というか、総選挙で旧政治家や保守層が完全敗北。
議席の大半を占めていた与党や政治グループが議席のほとんどを失ってしまった。
まぁ、同盟の左前を主導したようなものなのだから仕方ないと言えば仕方ないが、これにあわせて主戦派と呼ばれる政治層は一気に瓦解したと言える。
なにしろ崩壊しつつある同盟経済は軍需産業を支えるだけの経済的体力がないからだ。
これは経済的に搾取されているからとかそういうわけではなく、経済政策の舵取りで大失敗したから、と言える話だった。
振り返れば、あそこでこうすればよかった、ああすればよかったと言う繰言は100年でも経過しない限り愚痴と不満屋の酒飲み話に過ぎないわけで。
自称歴史家達は歴史の転換点は既に過ぎ去ったとか言っているそうだ。
では、過ぎ去ったからと言って破滅したかと言うとそうではない。
やはり節目と転換点が存在するのだ。
今回の総選挙で政府となった「自由表現会」は、大胆な方針転換を行った。
悪逆非道で専制君主な地獄の国であるはずの帝国と、ドラスティックな交流を開始することを発表した。
そう、帝国との三角和平である。
現在、同盟側海賊領域は、帝国に対する反抗勢力ではないことが帝国政府に認められている。
そういう意味では、同盟の勢力の半分以上を帝国に押さえられているという見方もある。
しかし、同盟両側の既存文化圏であると言えれば、それは好調絶頂の隣接商業地域の恩恵を受けられると言うことになる。
つまり、海賊領域との和平を結べば、自動的に帝国への道が開かれることになるわけである。
これについて反対派閥がいなかったわけではない。
軍部等は大反対であったが、財務関連部署が完全にその法案を支持し、それ以外は国家の崩壊であるとまで強気となった。
今現在、軍部がクーデターを起こしても、なんら上手くいく要素がないということもあり、政府方針に従わざるえない軍であったが、これにあわせて除隊者も少なくなかった。
「あんな腐ったやつらの宇宙にいけるものか」
そんな台詞に溢れていたと言う。
とはいえ、経済はこれで上向きになるに違いない、そんな期待に溢れた同盟領であった。
もちろん、その背後でほくそ笑む影一人。
「いいわぁ、いいわぁ、海賊領×同盟領。これでご飯三杯いけるわ
腐の計算師、安定の暴走であった。
更にいえば、帝国領域も絡めた三つ巴まで組み込むその想像力には、「一勢力」の賞賛が集まったらしいが、細かくは誰もわからない。
腐の拡散ともいえる状況へ一石を投じる事業が展開した。
オーディーン乙女ロード。
掛け算の得意な出版社と筆者と販売店が一つになった、ある種の夢の国。
仮面に顔を隠した貴腐人たちが集う、ある意味の戦場。
同志は同士と共に同志を見つけ、そしてせまっ苦しい喫茶スペースで熱心に談義を深め、そして更なる深みにはまってゆく。
一見、なんの実りもないはずの空間が、千金に値する世界であると認識され、そして多くの貴腐人たちが嵌まり込んでゆく。
身体的にも政治的にも大きな問題ではないはずの空間。
そこは間違いない腐海でありながら摘発されえない天地であった。
「であったではない」
「義兄上、これは平和維持のための対価です」
「重すぎる対価じゃ」
なにしろ、この乙女ロード。
オーディーンの地域経済を猛烈な勢いで底上げしているのだ。
直接買い入れに来ている人員もさることながら、今まで通販人口に含まれていなかった貴腐人達の購買力がモノを言い、帝国内の運輸業に鞭が入りまくっているのだ。
オットーやガイエスムーンに加わる消費型経済の旗手ともいえる「腐」経済は、富裕層の懐を直撃しまくっていたりする。
そう言う意味では、現在の王宮はその購買層の中心があり、読書会や鑑賞会が引っ切り無しに行われていたりする。
「すでに幾つかの部屋が常駐即売会会場にされておるわ」
「なるほど、王宮ならば課税が無いと」
「そうではないわ」
がっくり肩を落とす皇帝陛下。
うん、結構つらい環境なんだろうなぁ。
なにしろ後宮には皇帝陛下以外の侵入が出来ない。
で、貴腐人たちは皇帝陛下が仲間だと思っている。
つまり、そういうことだ。
心労あまりある日常が義兄上の命を縮めることの無いように一応手を回しておこう、うん。
そのテコ入れとは、簡単に言うと、腐世界に対するカウンター、そう「萌」である。
ルパードくんにその話を振ってみたところ、非常に困惑した顔で「そんなもののなにがいいんですか?」と全く理解できていないようであった。
やはりあれだ、認知されていないとはいえ某謀略家の血筋だけにリアルが充実しているから理解できないのであろう。
しかし、しかしだ。
金はあって権力はあって地位がある、それでも乙女から愛されない存在は数多にあり、そして癒しを求めている。
オットーやガイエスムーンで下地を作ったこの帝国であれば、かならず花開くであろう事は間違いない。
そんなわけで、まずは家庭用端末で出来るゲームという題材から切り込むことにした。
基本は鉄板の恋愛AVG。
幼なじみのお隣さんとつかず離れずの日常で現れる美形の隣人。
姉も美人で好意的で。
揺れる幼なじみとの関係、隠されていた人間関係。
ドラマチックでエロコメで、そして選択の時!!
まぁあれだ、うちとジークの関係を一部TSして、ちょっと妄想を込めた。
その影響か、テストプレイをしていたジークがドップリのめり込んでしまった。
やばい、と思ったときにはもう遅かった。
手遅れだった。
「ラインハルト様、わたしはこの画面の向こうで生きたいです」
「ジーク、そっちは妄想だけの夢幻世界。帰ってこい」
「・・・らいんはるとさまぁ・・・・」
泣き濡れるジークというのも希なので、隠し撮りして姉上に送ったところ大量の入金がラインハルト口座に入ってきたりして、もうなにがなんだか。
ともあれ、テストプレイをジークだけではなくルームメイトにもさせたのだが、世界は悪化した。
「これ、有料でネット販売予定だけど、いくらで買う?」
「い、い、い、いくら出せばミルちゃんは俺のものになるんだぁ!?」
「み、み、ミルちゃんは俺の嫁だぁ!!」
「じゃぁ、アン姉は俺のものだぁぁぁ!!」
混沌とした空間になりました。
やはり下半身燃えさかる十代は違うなと言うことで、ゲーム序盤の無料版と入金DL制の全シナリオ版を準備してサーバーを立ち上げ、DL販売を開始したのだが・・・。
販売一週間でルパード君が「是非とも全宇宙でパッケージ販売をしましょう!!」と通信してきた。
「あー、ルパード君や。きみ、理解できなかったよね? 萌」
「・・・不覚にも泣きました、チー子エンド!!」
どうやら全シナリオをクリアーしたらしい。
そして旧銀河帝国産の家政アンドロイドエンドまで行き着くとは、どうやら彼も十分理解したようだ。
「私は、私は! 今までなにもわかっていなかったんです!!」
ぶんぶん腕を振り回して語る「チー子」愛は、もう完璧に踏み外した者の言動であった。
さすがである。
この波、さすがに貴族の中年層以上には届かなかったが、貴族や軍人一般市民にいたる男性層に強く広がり、そしてパッケージ版は国境を越えた。
そう、経済疲弊の中にあった同盟社会に深く深く侵攻したのだ。
当初、有害アプリケーションとして規制される流れであったが、第一党である「表現自由会」がそれを制止。
監査版を政府ルートで販売すると発表した。
まぁエロコメ部分に手を入れず、固有名や地名にパッチを入れた程度であったが。
政府公認で売り出されたエロコメゲーは、料金の一部を政府がピンハネしているとはいえかなりの勢いで拡大し、そして根を張った。
エロコメゲーが文化として根を張った、この段階で第二段階に移行する。
まずは、続編作成の情報だ。
前回メインキャラは、先輩とか知り合いとしてちょこっと出演し、そして前回セーブデーターがあると少し展開が違うとか、前作踏襲という要素を込めて制作する事にしたのだ。
この制作情報だけでGDPがあがったというのだから、訓練されすぎだろう。
が、この先に待つのは制作延期の情報。
この情報で帝国の株式が軒並み安になると言うのだから連動しすぎ。
もちろん、制作自体は順調で、制作延期というのもブラフ。
本来の制作納期にはちゃんと間に合っている。
ただ、前倒しで発表された発売日が早すぎたのだ。
この延期のお詫びとして、パッケージ版の初回特典には前作ヒロインの抱き枕カバー+今作ヒロインの抱き枕カバーをつけることを発表すると、帝国経済が盛り返しまくった。
すでに予約数を満了しているはずの初回特典版にさらなる予約が入り、要求量は制作パッケージの2000倍になってしまった。
うれしい悲鳴のルパード君。
帝国辺境の秘密工房で大量制作が始まり、どうにか二作目のパッケージ版発送日に間に合ったと言うほど。
初回版がなぜこんなににも、ということになったかというと、どうやら「観賞用」「保存用」「実用用」にするために買い集めた貴族が多かったらしい。
で、あぶれたアプリの方は配下の貴族子弟や派閥下位の者にワケるとか。
恐ろしくもおぞましい貴族の柵。
人気のパッケージ版をさすがに幼年学校で使うわけには行かない級友たちは、DL版で渇きを癒し、萌を育てているわけだが、全員が全員二作目に流れたわけではない。
まず、「ファース党」、第一作目こそ基本にして基礎、すべての根元にして「全」があるとしている極右カルト。
続いて「バン党」、簡単に言えばリアルBL派閥。
そして「ライン党」、報われぬ放置状態。つうか、このラインハルトとBLしたいそうだ。
関わらんけどね。
この本作流通にあわせて、ムック、アイテムの販売を平行して行い、版権もとである「ミューゼル商会」へ多大なる収入を叩き込んだわけだが、この辺からユーザーの暴走が始まった。
始まりは、そう、痛車。
大規模農場の巡回用車に「@@」ちゃんの絵を描きました、という書き込みがネットにアップされたことだろう。
これをみた「うらやましい」者たちで痛車が増産され、その規模は大きくなり、そして惑星外往還用シャトルが「痛」仕様になったあたりで爆発した。
貴腐人たちが。
私たちも負けていられるか、とばかりに痛車、痛シャトルが生まれてゆき、これにあわせて投資介入されて耐熱カッティングシートやら発色カッティングシートの開発。
これならいけるかな、ということで、遙か過去の知識から、地上車の装甲が電光パネルになっている地上車を発表したところ、それはそれは恐ろしい勢いの受注になった。
すでに一般地上車を加工して販売する流れではなくなってしまったので、業界三位あたりのメーカーを買収することで話を進めているのだが、さすがに一号車販売には間に合わないので、一号車は義兄上へ納入し、二号車は各の派閥トップへ。
痛表示地上車は企業買収が終わった以降に順次ディーラーを通して販売しますと言うことにしている。
これに負けるな、と軍令部がとうとうやってしまった。
痛艦隊、「○Nちゃん」と「N○ちゃん」。
威風堂々とした艦隊の横にプリントされた「○Nちゃん」と「N○ちゃん」。
フィギアヘッドも「○Nちゃん」と「N○ちゃん」。
張り切りすぎであった。
これに加えて、ガイエスブルグ要塞にはガイエスムーンが、イゼルローン要塞にはイゼルローンAがプリンとされ、見学ツアーまで軍令部主催で行われるとかもう戦争してないだろおまえ等、みたいな感じである。
帝国国内暴走を快く思わなかった有識者、というか年齢層が高い貴族達は、この流れを断ち切る切ることを決意。
夜会や密会を通じ、超党派の貴族連合が一つの決断をした。
自分たちも乗れる「萌」の開発依頼を「ミューゼル商会」に依頼するという決断を。
この瞬間、銀河の歴史に暗くて深い溝と歴史が刻まれることになったのであった。
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