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トップページ > 神代ふみあき書庫 > 非赤松椎名系作品 > 恋姫無双外伝 > 真恋姫無双異伝「北郷屋」04
いやー、本当に年一更新になっちゃったw
まぁ、短めですがお楽しみあれw
北食堂は、夜になると北酒場になる。
そんな訳で、俺の知る「北◎場」歌いながら作業していたら、ぜひともみんなの前で歌ってほしいというお願いが山積。
少し恥ずかしかったのだが、華琳殿まで興味シンシンだったので、致し方なくアカペラで歌って見せた。
で、歌ってみると、うちの未亡人って◎酒場の歌詞のような女性が多く、まるでうちの宣伝曲のようであることに気づいた。
で、其れに気づかぬ華琳殿ではない訳で。
物凄い絶賛を送られて、ぜひとも歌謡としてとかなんとか盛り上がってしまっているところで秋蘭殿が軌道修正してくれたから良かったが、あのままだったらアイドル扱いで大陸ツアーさせられたことは間違いない。
いや、ド演歌的な地方巡業か?
で、話はこれに終わらなかった。
華琳殿から作詞作曲の依頼が来た。
つうか、作曲しろ+私が詞をあてる、みたいな感じで。
こりゃ困ったな、と思いつつ、改造月琴でアコースティックっぽくかき鳴らすようにして、覚えている曲を何曲かアレンジしてみた。
剣の修行以外は何も認めなかったジーちゃんだったが、楽器関係は勧めてくれた。
リズム感覚には必要だとか。
それはさておき。
あまりストックは無いけど、印象に残ってる曲を復元しつつ一曲にまとめてみると、それなりに小奇麗にまとまったので華琳殿のところで持ち込んだところ、非常に怒られた。
なにぜかって、既に何らかの歌詞を想定した曲ではないか、と。
まぁそれは間違っていない。
そんなわけで、想定しているというか元々付随していたはずの歌詞を思い出しながら歌ったところ、やっぱりという顔を華琳殿にされてしまった。
「・・・まったく、私の詩の割り込む隙間が無いじゃない」
「でもなぁ、曲だけ書けって無茶だと思うぞ」
「そうかしら?」
「逆に詩だけかいてみてくれれば、曲あててみるけど」
「・・・わかったわ、時間をちょうだい」
そんな会話の末にできた詩が「夢蝶ひらり」。
これに曲をあてるかぁ、どんなの曲があるかなぁ、どんな曲が合うかなぁと悩みつつ、歌詞の高低や語調などを練ってるうちに、いつの間にか曲ができてしまった。
まるで何かに導かれるような、何かに沿わせるような。
自分の月琴もどきだけではなく色々な楽器で伴奏する様に手を入れているところで、華琳殿登場。
満面の笑顔で護衛を引き連れて、店の休憩時間あけに現れて。
ばっと一気に譜面を見据えたところで「にんまり」。
「さすが北郷ね。よい曲調だわ」
初見の楽譜を頭で聞きやがったらしい。
なんという天才。
「歌のフリも曲調も私の詩を意識した良い感じよ」
ぱんぱんと俺の肩をたたいた華琳殿は俺をのぞき込んだ。
「ところで、この曲、誰が歌うことを想定しているのかしら?」
実はこれ、結構困ってる。
何しろこの曲、二人以上のユニットで歌うことを想定した感じでバランスをとってしまったのだ。
詳しく言えば、ピンクク◎ィーよりキャン◎ィーズといった感じ。
同程度の歌の才能を持った二人以上を確保、って結構面倒な話だ。
歌い手三人の巡業芸人なんて・・・。
「あ、にいちゃん、ぴったりなひと、いま、陳留にいる!!」
「そういえば、にいさま、昨日季衣といっしょに見かけました!」
お、なんたることか。
というか、どんな感じなんだ?
「んー、顔はかわいいのに、歌が微妙」
「フリもかわいいんですけど、微妙でした」
「そうか、微妙だったか・・・」
思わず首を傾げると、なぜか店の入り口で大声が。
「だれが微妙よぉぉぉぉ!!!」
三人の少女の真ん中の娘が、絶叫していた。
「あ、微妙三人組」
「こ、こら、季衣。もうちょっと言い方を」
「言い方とか、柔らかい言葉で首を絞めるような言い方をぉぉぉぉ!!!」
きしゃーーーと飛びかかってきた少女を、するっと片手で受け止めた季衣は、くるりとまわしてたたせる。
「あのね、声も顔もすごいのに、歌がだめってもったいないんだよ?」
どうやら季衣は、心底彼女たちがもったいないと思っているらしい。
この辺は華琳殿の教育がいき届いているのであろう事がしれる。
「だ、だ、だ、だって、私たちみたいな流しの芸人には詩文を練る時間なんて・・・」
「ですが、声もすてきなのに、詩文が練れないだけで評価が低いのは、かなり損ではないですか?」
「・・・うううううう」
流琉の真剣な言葉を聞いて、がっくりうなだれる少女。
曰く、収入を得るために公演を重視、芸の練り込みが不足する、収入が不足する、臨時雇いで仕事をする、芸の練り込みが不足する・・・と負のスパイラル。
店先にいたのも、この北食堂が割と良い収入になると聞いたのと、未亡人などの時間拘束範囲が狭い人間でも生活できるという噂を聞いて雇ってもらいたくて来たとか。
「おねがい、短期でも長期でもいいの、雇ってもらえないかしら?」
「あのねぇ、できれば雇ってもらえないかなぁ~」
「・・・姉さん、もっとちゃんとしてください」
とりあえず、店は店員一同に任せて、俺は三人の面接をすることにしたのだが、なぜか華琳殿まで臨席してる。
なんでさ。
とまぁ、何でも何も、どう考えても理解できる話だ。
あれだあれ、歌い手採用試験。
いろいろと質問する華琳殿もノリノリで、なんだかプロデューサー気分であるものと知れる。
「・・・そうなの」
「はい、是非とも芸事を、芸能を磨く時間を私たちに投資してください」
三女の張梁の懇願を聞いて、華琳殿は俺をみた。
にやりってかんじで。
まぁ試してみますか。
「・・・実は、うちの北食堂では、夜間の「酒場」時間に歌なんかを披露させてもらってる」
ぺろーん、と改造月琴を鳴らした後、北◎場を歌ったところ、ひどく驚いた顔で俺を見つめる三姉妹。
「で、こちらにいらっしゃる陳留太守、曹孟徳様と一緒に歌曲をつくったのが『これ』」
ふわっと見せたのは「夢蝶ひらり」の楽曲譜面。
視線がもの凄い勢いで俺の手元に集中しているのがわかる。
「書いたはいいけど、この楽曲、二人以上で歌う曲に鳴っちゃったんだけど・・・」
「「「!!!」」」
目を見開くどころか毛穴が開いたかのような三人に俺はほほえんだ。
「歌ってみたくない?」
「「「はいはいはいはいはい!!!!」」」
もの凄い勢いで食いついてきた三人に、華琳殿と共に曲の流れと歌唱指導をしたところ、感動の涙を流す三人であった。
「どうしたのかしら?」
「・・・太守様がここまで芸事に親身になってくださるのを感じて感動しているのです」
「ちぃ・・・、私たちの詩文の才能だと、こんな素晴らしい言葉はつながらないし」
「曲もすごいです、すごく流れるような感じなのに切々しててぇ」
「ああ、確かに詩文は私が書いたけど、楽曲は北郷の手によるものよ?」
にこやかなフリ。
三姉妹の視線は肉食系になった。
「・・・あ、あの、北店主。私たちに定期的な楽曲提供をお願いできないでしょうか?」
「んー、俺も才能あふれるってわけじゃないしなぁ」
「そんなこと無いわ! 『北◎場』も『あ◎鐘を鳴らすのはあなた』も『そうだ◎。』だって、方向性も想いも言葉も、きらきら光ってて、とってもすごかったんだから!!」
サンプルに聞かせた再現曲を、彼女たちは食い入るように聞き、記憶に刻みつけたようだった。
「そうね、私も北郷の持ち歌があれほどあったとは思わなかったわ」
「いやいや、手慰み程度の・・・」
「今度、うちの娘たちの前で歌ってちょうだい」
「・・・えー」
「ちぃたちも聞きたいです!!」
「おねえちゃんもぉ!」
「・・・お願いします、北店主」
あー、なんだかなぁ。
「まぁ、うん、とりあえず、三姉妹採用と言うことで」
「「「「・・・あ」」」」
とりあえず、本来の目的をごり押しすることで誤魔化したのだが、翌日、季衣と流琉に押し切られることになったのは、間違いなく華琳殿の策略に違いない。
陳留太守のお目通りを済ませた三姉妹は、北食堂では美人三姉妹のウエートレス、北酒場では専属歌い手として大いに盛り上げることとなった。
突如始まった「おひねり」は定番となり、拍手喝采の演目では三姉妹の臨時収入となるのだが、割と結構な額が集まったらしく、最初は俺に上納金だとかなんだとかいってきたのだが。
「それは、君たちの技量が増したという証だ。君たちが受け取る権利がある」
「「「!!!」」」
感動に打ち振るえた三人は、早朝や昼間の休み時間に練習を重ね、その芸の力をましてゆくようだった。
「・・・ねぇ、店長。ちょっと相談があるんだけど」
「相談? なんだい、地和?」
「・・・うん」
結構順調な活躍をしている三姉妹の次女、張宝こと真名地和が、結構真剣な顔でこんな事を言ってきた。
「・・・ちぃ達、このまま北酒場の専属のままでいいのかなって思うの」
なるほど、と感じさせられた。
三姉妹の中でもっとも芸事に真剣なのは次女だったか、と。
「確かに、
「・・・い、いやいやいや、そういう話じゃなくて!!」
「え、ちがうの?」
「ちぃ達だって大きな
思いの外冷静で驚いた。
では、悩みって何?
「あのね、昼間にも歌が必要かなって、そういう相談」
「あー、そういう話か」
「うん、そういう話」
地和は、歌の提供相手が酔っぱらいのおっさん達だけなのが不満なのだという。
日のあるうちならば治安の良い陳留の町中、いや近隣村からも歌を聴きたい人が集まるはずだ、と。
「んー、確かにその通りかもしれないなぁ」
「でしょでしょ!」
とはいえ、毎食食堂で食事をしないと聞けないのでは意味がない気もする。
「なんで? ただで聞くとかあり得ないんだけど」
「いやいや、歌ってさぁ、労働じゃないし勤労でもないよね?」
「・・・ええ。でもちぃたちの生きる術だしぃ」
「それは露天で歌ってたからだろ? 今は修行期間、謂わばお試し期間なのにお金を取る? そっちの方があり得ないんじゃないか?」
「・・・うぐぅ」
どうやら自分たちはまだ成長しきっていないと感じているようで、反論はない。
「じゃ、じゃぁどうするっていうの?」
「ん、うちの店とは関係ない場所で歌って、客を集めてみないか?」
「・・・え?」
そう、純粋に歌の力で、歌だけの力で、北食堂や北酒場関係なしで。
「・・・で、でも・・・」
「自信がないのはわかる。でも大丈夫だ」
「・・・なんでそこまで言い切れるの?」
「だって、俺、張三姉妹の歌、大好きだから」
「!!!!」
真っ赤になった地和。
しばらく視線を泳がせていたが、ぐっと拳を握りしめて叫ぶ。
「やってやろうじゃないの!!!」
後に、張三姉妹こと数え役満姉妹の決意としてファンに伝説として語られる一幕はこうやって生まれたのであった。
この一件、華琳殿に相談したところ、陳留の守衛軍で会場を設営するとか言い始めた。
なんで、と聞いてみると・・・
「ちょうど良い話なのよ」
曰く、宿営地の設営訓練を新人隊で行いたいのだが、何の目的もないとダレてしまうのだとか。
もちろん、華琳殿の軍が温いはずもないのだが、やはり目の前に目標があったほうが成果を出せやすいとか。
「じゃ、逆に会場の席の一部を華琳殿に任せると言うことでいいのかな?」
「ええ、報酬はそういう方向で良いわ」
ぱん、とハイタッチ。
なぜか華琳殿の好む挨拶になってしまったハイタッチ。
桂花殿が華琳殿とやりたいらしいのだが、うまくタイミングをつかめないらしい。
頑張れ筆頭軍師。
ノリと勢いだから細かな忠告はできんぞ。
「・・・ぐぬぬぬぬぬ」
部屋の隅で悔しそうにこっちを見ている筆頭軍師殿であるが、この光景で理解できるのは桂花殿の残念さだけですから。
それはさておき。
会場設営をしてくれる新人部隊のために、北郷食堂は出張出店をすることにした。
酒は設営終了後につけると言うと、華琳殿まで少し盛り上がっている。
「ねぇ、北郷。あの火酒、出すのよね?」
「えーっと、一応、限定数で・・・」
火酒、結構な人気で在庫不足になりつつあったりする。
持ち帰りたいという人も多く、遠く西涼からや南端孫呉の彼方からなんて客もおり、断りづらい。
増産、といっても、食べて消費できる糧食を原料としている点で言えば、酒は趣味の飲み物。
いまだ食事に事欠く庶人がいるという大陸で、その糧食から酒に変えてしまっていいのかという迷いがある。
だからこその限定なのだが、逆に自分の食べる食事の分を差し出すので作ってほしいという兵が続出し、なんともはや、という感じであった。
酒は基本、最近が生み出す結果だ。
穀物が作り出す糖分を最近がアルコールに変える事によって生まれる。
灰によるアルカリ選別で菌の選別を行って、酒の菌だけを寄り集めた後に生まれるのが、「水酒」。
これの水分を分離精製して残りが「火酒」。
蒸留に気合いを入れれば度数が上がるが、燃料費もバカにならない。
そう、希少価値があるから高いわけではないのだ。
手間や保管、そして燃料代を上乗せするとどうしても高くなってしまうのだ。
これを回避するためには、大量生産がはじめから高純度で作るという手法ぐらいしかないのだろうけど、どちらも目処は立っていない。
それはそれとして。
張三姉妹による野外ライブは、成功のうちに終わった。
昼間と夜の二本立てで実施したのだが、客層もかぶりつつ満員御礼となり、入場チケットを買えなかった子供や老人も少し遠い席ながら楽しんでくれたと思う。
この結果は三姉妹を慢心させたかと思いきや、色々と反省点や演出の可能性を思いついたようで、次があるなら色々とやりたいと構想が様々に書き留められていった。
熱い、沸騰しそうな熱気が彼女たちからあふれ、それを見ていた華琳殿も頬を赤く染めている。
こと、熱意とか熱気というモノは伝わる・・・
「いいわぁ、鳴かせてみたい・・・」
華琳殿、自重!!
OU:3人
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