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整理前作品No.7

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どもども、神代です。

いろいろと思うところあって、GSアンリミテッドを正式公開にすることにしました。
細かいところで足りない漢字は避けられませんが、まぁ楽しければいいか、とw




 

 事の始まりは、俺が事務所に行く途中のことだった。

 

 バランスの崩れた霊道を修正したり、悪霊化寸前の霊を慰撫したりしていたところ、妙な気配を感じた。

 なにごとかいな、と思ったのだが、美神さんより言われている言葉を思い出す。

 

「・・・何も無償救済が悪いわけじゃないわ。でもね、それに誰もが頼るようになっては駄目。意味があり理由が在り、誰にも恥じない事情があるならいいわ。でも、可哀想とか哀れとか、そういう理由で物事に介入するならGSをやめなさい」

 

 実に含蓄のある言葉だった。

 

 そう、たとえば唐巣神父。

 あのひと、S級のくせにDランクの仕事をロハでやってしまうのだ。

 協会からは「他人の領分を侵すな!」と怒られてるし、同業者からは非常に嫌われている。

 DクラスにはDクラスの仕事をするGSがいるし、SにはSの仕事があるのだ。

 住み分けと言うわけではないが、必要な領分といえる。

 せめて神父もそれなりの値段をとればいいのに。

 これはお袋に御注進だな、うん。

 

 それはさておき。

 

 妙な気配がしたので、するっと身をかわすと、そこに白刃が通る。

 禍々しい霊気を感じたので、そのまま踏みつけると、なぜか折れた。

 どうやら霊気を高めた影響で依代側の刀身が物理的に弱くなっていたらしい。

 まるで玩具のように、ぽっきりいった。

 呆然と折れた刀を見つめていた男の、時代劇の素浪人っぽい男の顎を掠るように蹴り上げると、そのまま崩れ落ちた。

 ボクシングの顎掠り、の応用。

 わりと人間型なら妖怪にも通じる技だ。

 小竜姫様にも効いただけに、わりと多用してる。

 で、このまま呪縛ロープで締め上げて一丁完了。

 

「・・・あ、美神さんですか? ちょっとご相談が・・・・」

 

 携帯で美神さんに連絡を取った所、五分もせずにコブラに乗って現れた。

 

「そう、なるほどね。実は今日の仕事って、連続霊能者辻斬り事件の情報収集だったんだけど・・・」

 

 苦笑いで美神さんが見詰める先には、廃人同様に真白になった男と、ぼっきり折れた霊刀があったりする。

 

「こりゃ協会通して警察に通報ね」

「判りました、警察系の第一報は俺から、協会への照会は美神さんお願いします」

「まぁ順当ね」

 

 その場で処理をはじめつつ、生垣の向こうの気配に意識を飛ばす。

 

「(美神さん、なんかいますね)」

「(ええ、なんかいるわね)」

 

 気配的に小動物なのだが、なんとなく毛色の違うモノを感じる。

 あらゆる歴史をみれば「シロ」なのだろうが、おキヌちゃんの事も考えると少し違う気がする。

 おキヌちゃんに重みが増したように、何らかの影響がこの場面にもあるかも知れない、そう思って何気なく気配を探っていると、こっそり出てきたのは大きな猫と子猫。

 頭の中にひらめくのは、多くの横島忠夫の記憶。

 そう、妖怪猫の親子、ではないだろうか、と。

 

「美神さん、この子達、介抱しちゃダメですかね?」

 

 結構切りつけられたらしく、親子とも共けがをしている。

 

「あー、解ってると思うけど、この猫達、妖怪よ?」

「つまり人語を解し、状況説明が出来る協力者である可能性が高い、ということで」

 

 はぁ、とため息をついた美神さんは、苦笑いで猫に向かい合う。

 

「うちの弟子があなた達を治療したいと言ってるわ。私は今回の事件について知ってることの証言をしてほしい。報酬は猫の姿なら三食昼寝付きの屋内警備。どう?」

 

 一度、まるで人間のように顔を伏せた親猫は、もう一度ゆっくりと頭を下げた。

 

「そう、なら正式な契約は事務所でするって事で、警察が来たら撤退ね。横島君、軽くヒーリングしてあげてちょうだい」

「ハイ、美神さん」

 

 言われるままにヒーリングをして、美神さんのコブラの助手席に載せる。

 

「じゃ、美神さん、お願いします」

「そっちも気をつけてね」

 

 ちゃ、とゼスチャーで合図を送り合い、そして俺はいまだ灰状態の素浪人風の男に向き合った。

 

「つうわけで、辻斬りワンコ。お縄につけよ?」

「・・・」

 

 警察庁の特殊資料室に所属するオカルトスワットがやってきたところで現場引き渡しをし、簡易書面で報告書を渡したところで感心された。

 曰く、GSなんていうやくざ商売相手だと、こういう書面化が弱いので苦労するそうだ。

 逆に俺の簡易報告は時系列に沿った事件進行と証拠品まで付随されているので向こうも書面化しやすいとか。

 あと霊視で人狼と思われる事実証明と、叩き折った霊刀がそれを裏付けるはずだという説明まで付けたところ、大いに感謝された。

 まぁ、この手の霊視鑑定だけでも結構な値段を請求されるしなぁ。

 とはいえ、細かな収入のために事件の進行をとどめたくなかったので美神事務所の方針にあわないが、サービスしておいた。

 一応研修中とは言えGS免許持ちなのでその辺は信用を持ってもらえる。 

 

「ご協力感謝します」

「はい、後はよろしくお願いいたします」

 

 向こうは敬礼、俺は会釈で別れ。

 急ぎ足で美神事務所まで行き着くと、なぜか割烹着の若奥さんと少年がいた。

 

「お助けいただきありがとうございます」

「ございます!」

 

 化け猫親子のミイさんとケイ君。

 書面契約で美神除霊事務所の守護契約をしたそうだ。

 とはいえ、防衛ではなく警備。

 結界の維持管理や悪意ある接近への警戒などである。

 さすがに神族や魔族すら相手にする可能性があるので、肉の壁扱いはできない。

 だてに一流を名乗っているわけではない。

 

「お助けいただいた上に、済むところまでお世話いただくなんて、もう、なんとお礼を言っていいか・・・」

「にいちゃん、ねえちゃんありがとう!」

 

 ケイ君は基本的に子猫状態で愛嬌を振りまきつつ周辺情報の収集と猫社会での監視協力体制を敷いてもらう。

 猫缶や煮干しなどの配給は計画的に行うし、ミイさんもその辺をフォローしてもらったりスればいいだろう。

 

「・・・何気に配役考えてたのね」

「いやぁ、美神さんなら雇ってると思ってましたから」

「まぁ、ね」

 

 あははは、と頬を掻く美神さんのかわいいことかわいいこと。

 あらゆる記憶の中の「横島忠夫」が「うそだぁぁぁ!人間もどきだぁぁぁ」と叫んでいるのがわかる。

 意識はなくなっても、彼らの記憶はいまだ俺のみのうちにあるのだ。

 

「・・・というわけで、横島君。GS協会経由の諸経費計算するから手伝って」

「はい、美神さん」

 

 といっても、時間外労働とか使用機材とか一切無いので、内臓が千切れるほどの規定請求になってしまった。

 

「んー、横島君。服とか切れてない?」

「一切損傷なしです」

「あれよね、あれ。横島君が規格外だから、この事件自体の算定評価が異常に低くなりそうなのよねぇ」

「えーっとすんません」

「問題なのは協会の算定方式なのよ。今のままだと、短期間でもの凄く強くなった人が評価されないの。もちろん、時間が教育する実力ってモノもあるから、霊力ばかりの問題じゃないんだけど」

 

 ふむー、と腕組みの美神さんの目の前に、ミイさんがお茶を差し入れた。

 

「あら、いい匂い。ありがとう」

「いいえ。はい、横島さんもどうぞ」

「ありがとうございます」

 

 俺と美神さんは一息ついてひとすすり。

 

「まぁ、今回は対霊能戦闘でしたから、相手の算定霊力や霊具なんかが絡めば、必然的につり上がると思いますよ?」

「だめだめ、ありえないわ。GS協会も警察も官僚組織なの。向こうから『大変だったから色付けておきました』なんていってくるはず無いわ」

 

 といっていた美神さんだったが、実は後日奇跡が起きた。

 

 どうひっくりがえしても算定学的に「C」以上にならなかった今回の突発事例だが、警察とGS協会から来た評価基準自体が「B」以上のモノとなっており、それを短時間小規模最短期間で解決したとして、プラス評価まで加えられた算定額で支払われたのだ。

 正直、奇跡と思ったのだが、詳細目録をみた美神さんは深いため息をついた。

 

「・・・よーこーしーまーくーーーーん」

「え、なんかありました?」

「これこれこれ」

 

 美神さんが指さす項目。

 そこには「出張霊視鑑定」という項目や「霊具の引き渡し」とか・・・、ああ、そういえば、あのワンコロ縛ったままだった。

 

「いろいろとあるけど、鑑定なんてしていたなんて聞いてないんだけど?」

「あー、あははははは」

「簡易報告書を調査報告書扱いか、うん、かなり気に入られたみたいよ」

 

 どうやら今後もよろしく協力してくださいという意味らしい。

 

「あれですあれ、美神さん。警察とコネ、惜しい絆です」

「そのかわりに、月月火水木金金って事業形態になるわよ、たぶん」

「申し訳ございませんでしたぁぁぁぁぁ!!!」

 

 とかなんとか。

 警戒はしたけど、そこまでひどい協力要請ではなかった。

 どちらかというと、海外でオカルトGメンが引き受けるような事例を、官庁で補助金を出すので引き受けてくれないかとか、信用問題でふつうの依頼としてGSに出せない秘匿依頼とか。

 そういう国家寄りの「相談」が増えて来たのであった。

 政治寄りではなく官僚寄りだったら、タマモなどを助けることが楽になるかも知れない、と思うおれだった。

 

 

 

 週2~3で美神事務所の所轄に呼ばれて捜査協力したり遺留品鑑定を「俺」が行っていたのだが、評価はいいらしい。

 というか、高校卒業したら警察学校経由で幹部就職を勧められたわけだが、俺の雇い主は六道経由の派閥に所属しているので、ひも付きなんですよと苦笑いで対応。

 そんな言葉に、本格的にオカルト人材の確保を考えるとか何だとか派閥を越えて動きますとか言う流れらしい。

 そんな中、本庁の丸暴の人たちが協力しろといってきた。

 内容的に地獄組のフリになるような内容ばかりというか言いがかりに近い内容だったので、正面から拒絶すると殴る蹴るの暴行を受け、さらに留置場に放り込まれてしまった。

 まるでやくざだな、ということで、手元の没収されなかった式神ケント紙で美神さんにチクろうかと思ったのだが、一応筋を通すことにした。

 送り先は所轄の警察の事務所受付。

 これで警察組織とのつきあいの方向性が決まる。

 

 

 

 ふと目を覚ますと、そこは留置場ではなかった。

 ベッドにねていて、美神さんが俺の腹あたりに顔を埋めて寝ていた。

 

「・・・あれ、なんで留置場にいないんですかね、俺」

「・・・横島君!!」

 

 俺が起きたことに気づいた美神さんは、その豊満な胸に俺の頭を抱き込んで、ブンブン振り回す。

 

「心配したんだから、心配したんだから、心配したんだから!!!!!!!」

 

 どうにも本格的に心配されたらしい。

 で、聞くところによると、俺への暴行と拘置は一部の暴走と言うことだったらしい。

 警察官僚どころか検事局長レベルまで謝罪に来るという。

 

「面倒ですから、ばっくれますか?」

「それをすると、GS協会と警察組織が決定的に物別れになるから勘弁してほしいわ」

「へーい」

 

 ともあれ、例の式神SOSが所轄警察に到達した瞬間、一気に事態は動き、警察組織では本庁への猛烈な抗議、GS協会へは警察庁幹部への抗議と政府への抗議、そして文部科学省からも猛烈な抗議が警察庁にたたき込まれ、さらにはうちの母親が直電で首相に猛抗議したとか。

 最後のが一番わからんが、首相の電話番号を知っているのが怖かった。

 

「とりあえず、いろんな方面に貸しを作ったってことだけど・・・」

「事だけど?」

「関係ない話として、本気でエミに仕事を依頼したわ」

「うっわぁ・・・」

 

 エミさん、というのは小笠原エミさん。

 春頃にビュンビュン飛んできていた呪詛を仕掛けてきていた家の俊英ながら、本家とのそりが合わないと言うことで独立した日本における呪術のオーソリティー。

 いろんな記憶でも除霊よりも呪術でSランクになるという偉業を成し遂げたという未来が多い。

 で、彼女に仕事を本格的に依頼するって事は、まぁ、そういうことだ。

 

 ともあれ、一応、所轄への協力活動は週1~2に激減。

 この対応でも文句は俺たちやGS協会ではなく本庁へ向かい、大いに組織内での隔たりとなったことだろう。

 なにも組織分解をしたいわけではないけれど、警視庁や警察庁の上位組織としてのあり方が問題だって事で国会論争にもなったほどで。

 やはり問題は根深い。

 

 この話は銀ちゃんのとこの撮影中でも聞かれたのだが、一応守秘義務のある話なので取材は断ったが、ぶっちゃけ話はしておいた。

 あう言う連中は逆恨みが怖いので、何かあったら察してくれと。

 

「よ、よこっち、まじか?」

「んー、国家がバックにいるって思ってる分、本職より面倒だからなぁ」

「うっわぁ・・・」

 

 というわけで、警察不審が一部業界に広がりつつあるとかなんだとか。

 学校の方でも大河ちゃんちを陥れようとしたという方向で理解されており、なおかつ、地元の所轄が地元側にたったという流れも理解されていて、交番に立つ警察官へも高校生が挨拶する、という流れになっている。

 一時的な好意かも知れないが、それでも好意を向けられれば警察官だって人の子だ、うれしいことは間違いない。

 警察署と地域住民との関係は密なものとなり、地味に成績が上がったという実績でさらにやる気が増すという良い流れができつつあるようだ。

 

 

 

 

 

 警察関係のゴタゴタがあってもテレビ局関連の仕事が止まらないのは、週刊誌やワイドショーでの扱いが良い所為だろうと思う。

 望んでいるわけではないけど、対人商売であるGSは人気商売でもあり、表にでている顔を持っているとスキャンダルに弱い。

 警察沙汰だの留置場だのと言う話になると、かなりお茶の間から敬遠される流れなのだが、それは警察組織の一部暴走による被害者という立場があったり、残留思念が濃かったとかいう話題の影響で盛り上がりもあったりと様々。

 とはいえ、一応レポーターからは聞かれた。

 

「暴力団の情報を漏らせと、捜査協力せよと言う司法からの要求をはねのけた、その真意はどこにあるのでしょうか?」

「犯罪の事実や事件があるならまだしも、勝手に暴力団と決めつけた相手を司法の場に引きずり出したいから協力しろ、では話になりません。これを容認すれば、明日にも私を含めたみなさんが警察に何の自覚もないのに捕縛されるような事になるかもしれないのです。職業選択の自由も、報道の自由も、彼らの胸先三寸なんて容認できますか?」

 

 いささか子供っぽい話だったが、報道の自由ってモノを絡めると大いに盛り上がる報道陣。

 追加取材なしという話で行った記者会見で、もっと詳しい話を聞かせてくれと各社の記者がすがりついてきてキモかった。

 

 このときの記者会見がマスコミ系に好印象を与えたようで、銀チャンの看板番組だけではなく、同系列の番組にもでませんかというオファーも少なくない。

 が、とりあえず俺は学生なので、これ以上の拘束時間は勘弁してください、という事になっている。

 はっきり言うと、これ以上事務所に行かない日が増えると美神さんがすねる。

 何ともかわいい感じである。

 

 本日も美神さんと出張除霊。

 

 撮影班もついてきたのだが、除霊の内容が地味なので撮影が難しいだろうと説明していたが、マニアックな映像ソースもほしいので、と言われると断れない。

 まぁ、今回は刀剣類の除霊。

 協会情報では経年した刀が九十九神化しているという情報であったが、怨念による複合憑依であった。

 こりゃ撤退も視野に入れなくちゃ、と思っていたところで依頼人が「さっさと除霊しろ」「こっちは金を払ってるんだ!」などと切れ気味に圧力をかけてきたので尋問開始。

 二分ほどで協会への依頼内容を偽装してたと認めた。

 

「つうわけで美神さん、契約違反ですので撤収ですね」

「そうね、誠意もなにもあったものじゃないわ」

 

 にっこりほほえんだ美神さんが、笑顔のままで「違約金を請求しますので」と去ろうとしたところで、依頼人が美神さんに飛びついてきた。

 

「依頼料は、に、二倍払う、いや、三倍払うから・・・」

「契約内容が遵守できない環境ですので、仕事をすることができません。契約書作成時点で、細かく協会から説明されたと思いますけど?」

「たのむ、たのむ!!!」

 

 土下座の依頼人だったが、すっぱり切る姿勢の美神さんを戦々恐々状態で撮影班も撮影していた。

 

「・・・な、よこっち。ちょっとイメージ悪くなってるんやけど大丈夫か?」

「あんな、銀ちゃん。除霊契約の範囲外で仕事すると、保険もきかんし補助金も出んのじゃ。事故が起こればGSの責任になって、身の破滅や。せやからGS協会って組織があるし、それに登録をみんなしとんの」

 

 ほぉ、と関心の銀ちゃん。

 依頼人も埒があかないと言うことでGS協会に電話したが、その際に「おまえのところが派遣したGSが仕事をせんぞ!!」と嘘百発。

 してやったりという顔でこっちをみたので、美神さんは契約書をそのまま持って依頼人の前から去ることにした。

 

「い、いま、美神とかいう小娘が、契約もまもらんでかえって、立ち去ったぞ!!どうしてくれる!!この刀は今日中に除霊しなければならないのに、なのに!! 違約金を払ってもらうからな!!!」

 

 言い切ってやったという顔で電話を切った依頼人に俺は優しく言っておく。

 

「この現場に着いてから今まで、全部撮影されてますので」

 

 びきっと表情を凍結させた依頼人、というかおっさんを背後に俺たちもその場から離れたのであった。

 

 翌日、本人の顔や声を変えたバージョンで放映用映像ができあがっており、そのままGS協会に持ち込んだところ、協会でもたちの悪い依頼詐欺であると判断され、美神さんには一切の責任はないという判断がされた。

 加え、違約金についての請求も行われ、巨額の請求書がおっさんの元に行き着く結果となったのであった。

 

「いやぁ、あんなのいるんやなぁ」

 

 ゴキゴキと首をならしつつ腕組みの銀ちゃん。

 久しく学校で昼飯を一緒に食っていたところでの一言なので、周囲の仲間にも説明すると、逆に感心された。

 

「そんな小悪党、まだ現代にいるんだ」

 

 この一言に集約される。 

 もちろん、秘匿義務の範囲はぼやかしているけど、それにしても阿呆な話で。

 現場から引き上げて、撮影班と分かれる寸前に「仕込みじゃないですよね?」とか聞いてしまったほど。

 その場で銀ちゃんも社長に確認してしまったほど。

 

 ほどもほどほど。

 

 これに加えて除霊が必要な原因も分かってしまった。

 なんと、この刀、違法所持品で横流し物件でした。

 出所は某丸暴な警視庁部署。

 重要証拠品でありながら、なぜ横流しかと言えば、本来の持ち出し理由が「霊視」のため。

 で、嘘の契約で除霊したところで重要な証拠品を除霊したという因縁を付けようとしていたものと判明した。

 あまりのことに目眩を覚えた。

 これが国家を守護する警察組織の所行かよ、と不信感が一気に盛り上がってしまったが、スルーしておく。

 

 うん、貸し一つ、が追加で。

 

 とはいえ、これで警察からGS協会へ仕事の依頼がある場合、確認や証明やらの書類が増える結果となり、非常に面倒になってゆく仕様だろう。

 こういう些事がオカルトGメン日本進出の足がかりになるんだろうなぁと思わなくもない。

 とはいえGS協会って、一人親方保護の組織なので、やっぱり事前の保護ができないのが問題だ。

 この辺の改革をどっかの幹部に依頼すべきだろうかと考える俺であった。

 

 

 

 

 

 

 まったく、あのクソ虫ども。

 

 

 

 私の横島君を拘束したばかりではなく、私も含めてハメようとか、私をハメていいのは横島君だけよ!!

 ・・・あら、少し下品だったかしら?

 それはさておき。

 クソ虫どもは、エミの協力もあって三代先まで呪ってやったけど、三代先まで続くかは運次第。

 続かなければ断絶、続いても無限の不幸に見回れるであろう事は間違いなく、永劫の後悔を転生の中で過ごしてもらいたいモノだ。

 そう、呪いは血脈ではなく魂にかかったもの。

 自分の子供ではなく、子分自身と転生先三代までかかるという呪いだ。

 自分自身の(カルマ)にかかる呪いなので、呪い返ししても逃れることのできないものだ。

 ここまでの呪いなんかをすると、本来神魔の領域まで届く話なんだけど、この一件に関しては向こうから「どんどんやるべし」という応援をもらっていた。

 蛇おん・・・小竜姫様からも後押しがあり、エミも神域の呪術を与えられて、さすがに鼻息が荒かった。

 

 仕事の方はあれ以来順調、というか横島君の芸能人化が進んでしまっている。

 理解あるメディアというのは貴重だけど、それ以上に彼らのネタになっているのが気に入らない。

 もちろん、彼の身を守るための壁の一つなので役立ってもらうための餌は必要だけど、安易なバラエティーには走らせないつもりだ。

 ああ、彼がしている「よこっち」は仕方ないと思う。

 かれは「かんさいじん」的な思考と行動をしているので、アプローチも関東系の私とは少し違うし。

 そういう意味で私も母系は京都系な血統で、似たような関西人的血統かもしれないと思うと運命を感じる。

 そうか、うん、母系の本家とも同期しましょう。

 少なくとも横島君を関西陣営で囲いたいという流れは理解したし、私自身が関東系であると認識されて敵対しているのもわかったし。

 だから私が関東に出張っている関西系の血筋だって表明できれば問題ないのだ。

 そうね、そうだわ、そうだったのね。

 うふふ、人間冷静な目って必要だわ。

 うふふふふふふ。

 

「ねー、かーちゃん。美神ねえちゃんが怖いんだけど」

「ふふふ、ケイ。若い頃ってこう言うことがあるのよ」

 

 あははははははははははは!!!!

 

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