椎名系・赤松系作品を主とする二次創作支援投稿サイト
トップページ > 神代ふみあき書庫 > 赤松・椎名系作品 > GSアンリミテッド(試供品版) > 整理前作品No.6
ちょっと短め
俺を怪我させたという事で、美神さんは責任を感じて事務所を閉めると言い出した。
本気で俺と神父が引き留めて、どうにか閉鎖は思いとどまってもらったけど、今の実力では到底俺の師匠とは胸を張れないので修業しなおすと言って聞かなかった。
「修行って、何処に行こうっていうんですか」
「妙神山よ」
強い決意の瞳で、誰のいう事も聞かない、そんな瞳だった。
「・・・横島君は無理しないで事務所を休んでて頂戴。さすがに事務所の所長が修業中だからって勝手に見習いが運営してていいわけないし」
苦笑いの美神さんの手を、俺は握った。
「これから修行に行こうって言う師匠の荷物持ちぐらいはさせてくださいよ、美神さん」
真っ赤になった美神さんは「・・・わかったわ、よろしく」といって俯くのであった。
妙神山修行場への道は、はっきり言うと夢見心地だったわ。
危険なのはわかってるし、難攻不落とか言われてるわけだし。
でも。
事務所で手を握ってくれた凛々しい横島君が、私と一緒に修行に来てくれるだなんて、なんて・・・。
「(でーへーへーへーへ)」
これってかなり心の距離が近づいてるって事よね、ね? LikeじゃなくてLove方面の感情よね!!
きたー、きたーーーーーーって感じよ!!
いやはや、ここまで長かったわぁ。
日々の活動を撮影する。
除霊出動を追跡する。
ほめてのばして、軽くスキンシップして。
ちょっと照れてるところをみると、ベットに引きずり込みたくなったけど、我慢我慢。
そう私は、頼れる上司なのだから!!
その代わりに録画活動はしまくったわ。
テレビ、事務所、着替えロッカー、シャワー室。
ふふふふふふふふ、愛だわ、愛よね、うふふふ。
胸の内のママにも確認したけど、それは愛の始まりだって言ってたもの!
ひゃっほーーーー!!!
「美神さん!!!」
不意に横島君が抱きしめてくれた。
な、なに、この天国環境は!?
「疲れているなら言ってください! さっきからフラフラで、足下だって・・・」
やばかったわ、崖墜ちるとこだったのね。
ああ、横島君、命の恩人。
これは、いろいろと捧げないと。
ささげないとぉぉぉぉぉ!!
「ありがとう、横島君。少し焦ってたみたい。この先で少し休んでからにするわ」
「はい、美神さん」
やばいわ、やばい。
抱きしめられた体温が離れないわ。
うふふふふ、これは楽しい修行になりそうだわぁ。
と、妄想バリバリで歩いてきたら、いつの間にか大きな門の前についていた。
頼れる弟子の、頼れる弟子の!! 横島君は、いつの間にか私を守るように立っていて、たっていて!!
こう、もう、いやん、な感じ。
どうしよう、この場面撮影できないかしら?
披露宴で絶対にみんなに見せたい写真よね?
ああああ、冥子みたいに式神を使えれば良かったわぁ!!
いえ、遅くないわ。
これからの人生を考えれば、日々の撮影用に式神を配下における呪式を修行すればいいんじゃない!
パワーアップとその制御の修行と披露宴の写真撮影、一石二鳥どころじゃない完全計画。
さすが私!!
ママの衣鉢は私が次ぐわ!!!!
記憶の中にある横島忠夫という存在が、目の前の美神さんを見て悶絶していた。
自分としては、けなげでまっすぐで、そして自分に厳しい美神さんこそ美神さんなんだけど、多くの横島忠夫の記憶は「人間モドキに違いない」という結論に達していた。
多くの世界の、多くの未来の横島忠夫と美神さんはどういう関係だったんだろうと疑問に思う。
もちろん、記憶の中で敵対したり陥れられたりした記憶もあるが、素直になれない女性と鈍感な少年という人間関係にまとめられる方向だと思うのだが。
加えるに、鈍感な少年横島忠夫の素行の悪さもあるので、記憶の彼方の美神さんにも文句は言えない。
つまり、人間関係が善良であれば、こういう関係になれるのだろうと俺は確信している。
半分素人である俺への気遣いか、はたまた雇い主としての責任感か、妙神山修練場への道のりは険しかったが笑顔の美神さんに導かれるように到着した。
途中、美神さんが滑落しそうになっていたが、あんな完璧な美神さんでも失敗はあると理解すれば身も引き締まる思いだ。
もしかするとそういう意味を込めての失敗だったのだろうかとも思わなくもない。
身内に優しく、そして厳しい美神さんのことだから。
日本の神社仏閣と言うよりも大陸風の空気を感じる大きな門には、鬼の面相が据え付けられている。
これからの修行の過酷さを思わせる内容なのかと思いきや、美神さんが深々と頭を下げた。
「はじめまして、日本GS協会所属GS、美神令子ともうします」
あわてておれも頭を下げると、鬼の面相が口をゆがめる。
「うむ、心根正しき修行者であるな」
その言葉と共に、ゆっくりと門が開こうとしていた。
「お待ちください。我々は修行のための試しを受けておりません」
カラス神父が昔修行にきたときの話を聞いていたので、鬼門の試しをい受けるつもりマンテンの俺たちは少し焦ったのだが、にこやかな声で鬼門は答えた。
「よい、真摯なる修行者の向上心は応援すべきものだ」
なんというか、目の前の完璧美神さん。
やはり他の世界の横島忠夫が思う美神さんとは別人だろう。
うんうん、と感動しているところで、門の向こうに人影が。
それは、輝く金糸をふんだんに使った文金高島田。
角隠しで隠せていない角を湛えた龍女神様。
・・・やべぇ
そう思って、むりやり鬼門を閉じた。
もう、全力だって!!
「・・・横島君。どうしたの?」
きょとんとした顔で俺を見つめる美神さん。
「いえ、やはり鬼門の試しを受けましょう!! 『修行』にきたんですから!!」
門の向こうに届けとばかりに叫ぶと、鬼門の方々は大いに感動したようであった。
「うむ、すばらしき向上心。よろしい、試しを受けるが良い!!」
「うむ、よい覚悟と熱意。すばらしい、試しを受けるが良い!!」
不信げだった美神さんに輝く笑顔で俺は言う。
「美神さん、一緒に修行しましょう!」
「・・・♪ ええ、がんばりましょう!!」
共に手を取り鬼門に向き合う俺たち。
つうか、ヒャクメ!! なんとかしてくれ、居るのはわかってるから!!
横島さんが修行にくると聞いて空回ってる小竜姫を見ているのは面白かったけど、老師が止めるのも無視して文金高島田に着替えたのは引いたわ。
門が開く瞬間までは輝いていた小竜姫。
さすがの横島さんもどん引きだったらしく、その表情を見て小竜姫も正気に戻ったらしく、いつもの格好に戻ってくれたけど、化粧が濃すぎて引くのね。
門の向こうでは危なげなく攻防を繰り返し、一つ一つの技を確かめているところを見ると、戦略的に攻め倦ねているのではなく、こっちの準備が出来るのを待っているみたいなのね。
・・・迷惑かけてごめんね、横島さん。
哀悼の意志を込めた念話で準備完了伝えると、速攻で攻撃のレベルを変えた横島さんと、そのレベルに引っ張られた美神さんによって鬼門は倒された。
いえ、勝負をつけられたというのが正解。
その流れを把握してか、小竜姫の色ボケっぷりも改善されて空気も変わった。
・・・化粧濃いけど。
「所要時間は平凡ですが、中身の濃いものでした。私はこの妙神山修練場の管理人、小竜姫です」
背後からでもよくわかるほどの笑顔の放射に、美神さんも横島さんも驚いてるけど、一瞬にして思考を切り替えて深々と礼をし直したのね。
自己紹介を各終えたところで、修行の目的は? ということになった。
美神さん曰く、総合的な霊力アップと式神術の収得だという。
「式神、ですか? 美神さん」
「ええ、横島君。単体戦力における総合力と、補助情報収集能力は必須だわ。簡単な式神符ではなくて随時契約式神の確保が出来るほどに霊力をあげるべきだと思うの」
ニッコリほほえんで言う美神さん。
・・・なんだろう、もの凄く違和感があるのね。
「では、横島さんは?」
「あー、実は俺の霊能って自己流すぎるんで、これを機に基礎からたたいてもらいたくて・・・」
「はい、よろこんでぇ!」
どこの居酒屋なの、小竜姫。
とはいえ、美神さんもウンウンとうなずいているので良い方向性なんだと思うけど。
横島さんが書き記した、未来に多く存在した美神さんとは別人のような行動だけど、内面はヤンデレ一直線。
正直、直視も困る病みっぷりで。
暴走小竜姫と正面対決したら、老師でも止まらないんじゃないのかしら?
ともあれ、一月ほどの期間を修行に当てることにした美神さんだけど、その間、小竜姫との対決がないことを祈るのね。
霊能力の総合出力はあがった。
加えて、式神を従える秘伝も得た。
そして・・・
「こらうまい、こらうまい」
「うふふ、まだたくさんありますよ?」
「小竜姫様、とてもおいしいっす」
「・・・くっ」
宿坊で横島君の胃袋をつかんだ精進料理の数々も会得したわよ!!
くやしいけど、美味しいもの!!
「ふふふ、このまま修行三昧で毎日この食事という生活もありですよ、横島さん」
・・・なに、この蛇女。
まさか、私の横島君をねらってるの?
「まさか、小竜姫様。神様にお三度させるなんて」
そ、そうよね、横島君!
「あら、でしたら横島さんが私の神饌(しんせん)になってくれます?」
「・・・小竜姫様、さすがに人間を供物に求めるのは、神族としてどうかと」
「そうなのね、小竜姫。食人は難しいのね」
「・・・あら、そういう解釈ですか。失礼しました、把握している言葉に齟齬があったようです」
気まずそうに頬をかく小竜姫様。
どうやら神魔ジョークが滑ったようだ。
内心の泡立ちが収まるのを感じる。
「お真面目な小竜姫様なのですから、無理に下界の流儀にあわせなくてもよろしいのでは?」
「そうなのね、小竜姫。無理は良くないのね」
こんな風にフォローしてくれる神族、ヒャクメ様。
元々は日本の妖怪であったけど、修行のおかげで神族に仲間入りしたという努力の存在。
小竜姫様とご友人だそうで、見に優れたる権能で修行を助けてくれている。
正直、このお二方と会うまで神族を誤解していた。
いや、偏見で見ていた、という方が正しいだろう。
この修練場にはもう一柱神族がいらっしゃるそうだが、現状の私たちのレベルではお会いできないと言う。
なるほど、と理解した。
人としての修練は、今回で十分なレベルなのだという。
この十分なレベルという評価の上が必要になったとき、そのもう一柱の神族への道が開かれるのだろう。
長きにわたった妙神山での修行も明日で一区切り。
再びやってくる横島君との生活に胸躍らせる私であった。
閉まる扉のこちら側で、小竜姫が肩を落とした。
「・・・横島さん、いっちゃいましたねぇ」
小竜姫が示した修行目標を楽々クリアーした美神さんと横島さんが予定通りに下山してしまい、小竜姫は意気消沈。
正直、横島さんの情報を得てからの小竜姫は暴走に次ぐ暴走で老師がマジ説教したほどだったんだけど、本人に会ってからは空回りが絶頂を越えて逆に通常運転になったのが幸をそうした。
どん引き展開は一度あったけど、それ以外は「よい師匠」としての面を見せるだけですんだはずだ。
「・・・ねぇ、ヒャクメ」
「行っちゃだめなのね」
「何も言ってないじゃない」
「言わなくてもわかるのね」
「ぐぅ」
実は美神さんが式神契約が出来るようになったのにあわせて横島さんも術を得た。
で、テストという名目で小竜姫が横島さんの式神になるように契約をしようとしたのが老師にばれた。
修練場がまじ地震で、大騒ぎ。
それでも横島さんに契約させようとした小竜姫に私も焦って回収して事なきを得たわけで。
今でも再契約をねらっているのね。
「これからの横島さんを考えますと、専属の神族が居た方が・・・」
「小竜姫、あなたは妙神山にくくられているのね」
「ぐぅぅぅぅ」
本当に、心底色ボケ。
なんでこうなっちゃったのかしら?
「小竜姫、明日の特番で横島さんの生出演があるのね。それでしばらく我慢するのね」
「・・・はぁぁぁい」
おどろくほど不満そうに宿坊に戻る小竜姫は、たぶん明日の特番まで寝て暮らすのだろう。
というわけで老師のお食事は私のお手製になる。
ほんとうに世話の焼ける親友だ。
まぁ、私は縛られているわけではないので、ちょくちょくアパートにおじゃましてるけど。
学校に戻って、修行中も進めた課題を提出したところ、復学が認められた。
試験や何やらも一応すませている事になったのでありがたい。
いつもの仲間ともハイタッチで再会できて安心したわけだが、それで普通の生活に戻れたわけではない。
修行開けの当日から銀ちゃん経由のお仕事も復活し、取材やら録画撮りやらで大わらわになった。
契約もそこそこに修行に行ってしまった感じもあるので無益に出来ず、生番組の出演やらなんやらと忙しかったのは仕方ないだろう。
だから仕方なかったんです、美神さん。
「・・・つーーーーん」
というわけで、うちの美神さん。
超絶現在進行形でご立腹。
原因は不明だけど、ここ一週間ほど出勤できなかったことと無関係ではないと思う。
「えーっと、最近出勤できなかったことはお詫びします。ごめんなさい」
「つーーーーん」
「しかし、雑事が片づきましたので、本日より通常業務に入らせていただきます」
ぺこり、と頭を下げると、探るような目でこちらを見た。
「・・・ほんとう?」
「本当です」
すると、ぺかーっと笑顔になった美神さんはデスクの上に何枚もの依頼書を並べた。
「じゃ、どれからする?」
「えーーーー?」
ビル除霊に工場除霊、いつもならば自分と銀ちゃんに渡されるような内容で、美神さんと俺が組んだら赤字になりそうなものが多い。
「・・・ほら、私たちの霊力あがってるでしょ? 単位時間当たりの仕事量があがってるから、二人でもいけるかな、と思うの」
なるほど、と感心させられた。
さすが美神さん、あくまで仕事にどん欲だ。
って、あれ、これは・・・
「あ、これはぁ・・・・」
ちょっと焦り顔の美神さんって貴重。
何に目を付けたかというと、ビル除霊の一件。
なぜか六道除霊事務所との共同除霊になっているのだ。
六道除霊事務所と言えば、あの六道冥子さんの事務所。
・・・なるほど、そういうことですか。
「せっかく得た式神の技術要点を、式神使いの大家から見取る、そういうことですね?」
「・・・そ、そうよ、よくわかったわね。というかよく見つけたわね、この依頼」
美神さん曰く、さすがに六道を利用する動くなので避けようかなぁと思っていたそうだ。
とはいえ俺に知られたので、六道からの申し入れもあるので受けるしかないとか。
「えーっと、なんでですか?」
「たぶん、この依頼書自体が簡易式神になってるはずなのよ。だから私たちがこんな会話してるのも知られてるのよねぇ」
「・・・え?」
思わずヒキツったところで事務所の電話が鳴る。
ああ、そういうタイミングなんだ、と苦笑いの俺であった。
依頼のあった現場に到着すると、間髪入れずにロングなロールスロイスがやってきて、まるで飛び出すように一人の女性が現れた。
「令子ちゃん、忠夫君!!」
ぱぴゅーんと飛んできて、俺と美神さんを両手で抱きしめた冥子さんの目が「ぐるぐる」してるのに気づく。
「ひどいわ、ひどいわ!! 二人だけで一ヶ月も旅行だなんてひどいわ!!! なんで冥子は仲間外れなのぉ!!!」
大いなる誤解であった。
六道にはちゃんと修行目的の休業は説明していたし。
「一ヶ月の修行なんて嘘だわぁ! そんなつらいことは最初の三日ぐらいでやめて遊んでいたに違いないわぁぁ!」
本当に色々と誤解があったようなので、美神さんによる梅干し説教説明が行われると、何とか納得してくれたようであった。
「・・・そうなの~、冥子だったら三日保たないわぁ・・・」
どうもそういう感じがマジらしい。
というわけで、というかどう言うわけか解らないが、共同案件の解決となったわけだが。
「ちわぁ、本日もよろしくお願いしまーす」
「「「「「しまーーーす」」」」」
いつもの撮影班までやってきた。
こうなると冥子さんの暴走も含めたプランが消えたわけだ。
「(横島君、フォワードは私。バックアップは冥子、遊兵に横島君よ)」
「(うっす。初段で冥子ちゃんのフォロー、中盤以降で美神さんのところに行きます)」
「(いい判断ね。期待してるわ)」
と、こんな会話が呪文も札もなしに念話で出来るようになったのは、まさに修行の成果。
わりと実用的だったりする。
「冥子ちゃん、このビルの四方に式神を配置して、簡易結界を張ろう」
「・・・えー、冥子、難しい術は出来ないわぁ」
「大丈夫、俺がフォローするから」
「お、お願いね、忠夫君」
正面に立つ冥子ちゃんから、四体の式神が解き放たれる。
マコラ、バサラ、インダラ、ショウトラ。
選択は自由だったが、それなりに適した配置が行われる。
「・・・冥子ちゃん、両目を閉じて『みんなの事』を考えて。優しい気持ちで、うれしい気持ちで」
「・・・うん」
契約を通して冥子ちゃんの思いを込めた霊波が式神たちに伝わってゆき、それが一つの壁となる。
冥子ちゃんを通して出来た霊波による結界。
これの維持は短時間でもかなりの技量を必要とする。
見た目は地味だが、業界関係者がみれば実に高度な技術が維持されているのが解る。
とりあえず、六道の跡継ぎは優秀だぞぉと宣伝して置くわけだ。
こういう細かな活動で貸しを作っておけば、妙な返済要求がない様に出来るわけで。
日頃の積み重ねが必要なのだ。
「すげぇ、さすが六道次期党首」
「がっさん、どういうことや?」
「あのなぁ、堂本君。よこっちコーナーでも解説してただろ? ああいう系統を決め打ちした霊力を長時間維持するってのは大変難しいことだって」
「・・・ああ」
収録用マイクの範囲外で銀ちゃんとプロデューサーのがっさんがこそこそと話しているのを聞いて、GS知識が定着してきているなぁと実感。
こういう細かな知識定着によって、心霊事故や自然霊に対する不敬による事故なんかもへるだろう。
世に言われるGSの処理物件の中には、霊知識不足で発生悪化するモノや悪戯によって災害化するモノも少なくない。
これは台風や集中豪雨などによるモノよりも多く、深刻化の一途をたどっている。
もとより霊も含めた人災なので、あらかじめ警鐘を鳴らし危険を予知することで避けられることも多い。
ゆえに、基礎知識が基本知識が危険事項が、ある程度常識として定着すればするほど事件が減り、そして多くのGSが重大事件に向かうことが出来るようになる。
加えて言えば、いずれ設立されるオカルトGメンの活動面で些末な事件の抑止による効率化が見込めるという側面もある。
そういう意味では娯楽番組である「踊るGS」は、じつに敷居の低い啓蒙番組といえる。
さらにいえば、GS協会も協賛しうる番組で、オカルトの六道を持ち上げているという事にはそれなりに意味を見込める話。
というわけで、俺はこっそりとカメラの視界の外れで鎮静符を冥子ちゃんに行使したりなんかしてるわけで。
「すごいのね、忠夫君。忠夫君と一緒なら何でも出来るかも~」
「はいはい、集中集中」
「も~、ほんとうなのにぃ~」
そんな会話をしているところで、美神さんがクライマックスに入ったようだ。
「冥子ちゃん、後お願いできる?」
「・・・うん、ちょっと不安だけど、でも、がんばる~」
にっこりほほえむ冥子ちゃんをヒトなでして、俺は現場に向かって跳躍した。
よこっちに取り付けられた小型カメラから映像が送られ始めた。
伝送レートを抑えめにした代わりに、中継器を通してとぎれない映像が送られてきている。
本当ならば、この手の心霊現場では電波が妨害されたりするモノなのだが、よこっちお手製の御札のおかげでクリアーな画像が実現できている。
さすがにアクション中は映像が乱れるかと思いきや、どこかのフックにカメラを固定したらしく、引き気味ながら全体の光景が送られてきていた。
「・・・あ、美神さんと合流したみたいや」
「うわ、すげぇ・・・霊符が壁になってるよ」
「あれの維持にも霊力が居る、しかし問題がないほどの霊力がある、ということか」
そこから始まるのは二人舞。
まるで幽玄を表す能のように、艶やかな舞を見せる歌舞伎のように、苛烈な舞のフラメンコのように、ここでぴったりのBGMは思いつかないが、それでも明確なリズムが二人の間では刻まれているのが理解できた。
そして、映像のプロであるスタッフと俺はそれを理解できた。
「「「「「いまだ!!」」」」」
瞬間、弾ける霊符。
閃光にも似た光は霊波の光。
だから見えた。
艶やかな笑顔を浮かべる霊が昇天してゆくのを。
薄暗くなった現場で美神さんとよこっちはカメラに向かって同時に親指を立てた。
わっと盛り上がる俺たちを見に来た六道さんは、モニターに向かってにこやかに手を振っていた。
「うわぁー、令子ちゃんと忠夫君、かっこういい~」
なんか可愛いヒトやなぁ・・・。
OU:5人
UA:17,316人
文字数は8,360文字