6巻表紙。さらばコンプレックス・エイジ!さらば片浦渚!
[駄犬の切り貼り実験ノート:第13回]
今回の目次:全5ページ ・コンプレックス・エイジの駆けた一年間 ・5~6巻、見どころ ・[資料]オタクを、コスプレイヤーを描いたフィクションって? ・隠れオタク時代の光と闇?なぜか一緒に読まれる「トクサツガガガ」
コスプレの世界を題材にしたサイコホラー漫画「コンプレックス・エイジ」が、6巻をもって、ついに完結しました。 丸一年に渡って週刊モーニングに連載されてきたコスプレイヤーの物語は、大団円を迎えたのです。
思い起こせば第63回ちばてつや賞入選の読み切り作品として、34歳の加齢に悩むゴスロリ趣味の女性を主人公とした作品がネット掲載後に自然発生的に話題となっていったのが2013年11月。 大好きな趣味だから、自分の理想と現実とが離れていくのが、許せない……。 自分が情熱を傾けてきたゴスロリ服を焼いて処分するクライマックスは物議を醸しましたが、しかし、それだけ趣味を持つ読者の心に突き刺さったのも間違いありません。
その反響を受け、今度は26歳派遣社員のコスプレイヤー女性を主人公とした連載版が開始されたのが14年の5月末。 コスプレ界隈の生々しい部分…ドロドロやゴタゴタを積極的に描いた独特の作風は、衝撃をもって迎えられました。
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1話でも登場した新宿南口、ユザワヤと東急ハンズ。6巻でも重要なシーンで登場、最終決戦編への幕開けを告げる。 |
コンプレックス・エイジの駆けた一年間 ・好きと現実の狭間に直面するコスプレ女子を描いた「コンプレックス・エイジ」が連載開始-2014年5月22日 【http://www.cosp.jp/news.aspx?id=135】 ・「コンプレックス・エイジ」第1話が無料公開中-2014年6月5日 【http://www.cosp.jp/news.aspx?id=151】 ・【新春特別企画】「コンプレックス・エイジ」作者・佐久間結衣先生インタビュー-2015年1月2日 【http://www.cosp.jp/news.aspx?id=254】 ・【コラム】狂気再び。コンプレックス・エイジ4巻であの娘が帰ってくる-2015年6月7日 【http://www.cosp.jp/news.aspx?id=305】
振り返るとこれまで4回ほどカイブニュースにも取り上げられておりますが、見返すと分かる通り、やはり初期は批判コメントの方が目立ちますね。 これは“コスプレ”というものが外のメディア(ニュースでもドラマでも映画でも)に扱われた際に、これまでにも必ず起こってきた現象で、仮にどれだけ好意的に扱われたとしても、アレが違う、こんな事はあり得ない…といったように批判が起きてきました。 外の世界にコスプレが扱われる事自体に、どうしてもレイヤー側から一定のアレルギーが出てしまうからです。
ところが、連載を重ねるごとに好意的なコメントが増えていったんですね。 それだけ、続ける内に熱心なファンが生まれていったのだと思います。 本作のサイコホラー感は昨夏、10話(2巻収録)辺りでの、キャリアウーマン・葉山がコスプレ趣味の職場バレから社内で噂を立てられ、退職へと追い込まれる展開で初期の沸点に達しますが、この時期になると、 「読むのがつらい……続きが気になる」 「また今週も抉られたわ……」 などと言いながら毎週欠かさず読んでしまう、末期の中毒患者みたいなファンが続出します。 また、作品内で登場するTFTやプラザ平成を使用している実在イベントでは、お遊びで作品中の看板を再現したりするという、現実世界へのフィードバックも起こりました。
しかしながら、本作がモーニング誌上において浮いた作風だったのも否めないでしょう。 基本的には「島耕作」「カバチタレ!」「コウノドリ」のような、サラリーマン読者をメインにした職業ものが強い雑誌ですから。 コスプレには明確な勝負や成果の描写がある訳でもなく、モーニングのメイン読者からしたら伝わりにくい内容だったのも間違いないでしょう。次第に掲載順も後ろへ…… ところが。 昨年8月に発売された1巻は、発売4日後に重版が決まる反響、それに併せて書評サイトなどでも取り上げられ、本作を応援する熱心なファンの存在を証明しました。 また、この1巻には最初の読み切り版も収録され、読み切り版と連載版の世界が繋がる仕掛けが驚かせました。
昨年末のカイブ選出10大ニュース座談会でも、本作の連載開始は2位に選出されています。
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コンプレックス・エイジ劇中で登場する「マジカルずきん☆ウルル」より、ウルルの3Dプリンター製フィギュア。佐久間先生サイン会にて展示品。 26歳の女性が、完コス主義でこの女児向けアニメのコスプレをするのである。 |
今年6月の連載最終回まで、まさに、駆け抜けた一年間でした。 あらためて、佐久間結衣先生、おつかれさまです。
さて、前置き(?)が長くなってしまいましたが、今回は「コンプレックス・エイジ」の最終決戦編となる5〜6巻の見所を語りつつ、その時代性や、過去のコスプレを扱った作品もまとめて振り返ってみようと思います。 核心部分のネタバレは避けますが、事前情報を一切入れたくない人は、2ページ目だけ飛ばした方が良いでしょう。
→次ページ、5〜6巻の見どころ!
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