ユーティリティ

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第十話

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 どうにかこうにか学園祭前日に制作は間に合い、前夜祭でプレオープンにこぎ着けた裕奈のクラスだが、あり得ない恐怖であったという評判が試験入場した教職員から広まり、おばけやしき、という微妙なネタは大いに盛り上がることになったのであった。

 

「おばけやしきってよりも、スリラーハウスって感じだよな?」

「それ、全部ふーにいちゃんのおかげというか責任というか」

 

 

 麻帆良祭開催のアナウンスのあと、屋台村の開催も宣言された。

 宣言したのは何故か俺。

 後半の準備してなかったんだけど、企画責任者とか言う立場に追いやられてしまった。

 これはあれだ、クラスとのつながりの薄い俺に中心役を与えて、交流をさせようと言う意図が・・・

 

「代表! 『痛快たこ焼き』と『お好み焼き魁』がもめてる!」

「だぁ、開催直後にかよ!!」

「だからあそこは隣り合わせるなっていっただろっ」

「ほかと並べるよりましだ、というかその会議に出てねぇ!!」

 

 とまぁ武力鎮圧人員として期待されているのでした。

 

「おめーら、十秒以内にもめ事納めねーと、店畳ませるか俺がおまえら自身を畳むかをえらばせっぞ!」

 

 何とも頭の悪い話だが、ここで小乱闘になっても不定期劇場のようなモノなので、完成が飛び交うだけというのが麻帆良すぎる。

 ドーム型屋根を入れたおかげで、この空間自体が周囲から切り離されたかのような感覚を感じさせているのが売り、となっているが、実際はこの空間で大きな争乱を起こさせない彫金魔法が施されているおかげで、小さい争乱が頻発している。

 小事で大事を封じ込めるという、ちょっと呪術的な空気を醸し出しているが、物理的なガス抜きと考えると割と理解しやすいだろう。

 

「か、風間さん、い、いや、ほら、においとか味とか、色々とかぶってて」

「そ、そうなんすよ、ええ。だからちょっと色々と変えあわないか提案しているわけで・・・」

 

 ひきつった笑みの男子たちに俺は微笑む。

 

「適当に変えてまずくなって客足が遠のいたら、屋台村全体がおまえ等を恨むことになるからな?」

 

 実際、屋台村の味は高い水準に引き上げられている。

 そのかわりに、オリジナリティーは低くなってしまっているが、まずいより遙かにましだ。

 食える、というかうまいと言うだけで評価が斜め上になるのが男料理なのだ。

 

「で、でもよぉ、量少なくねぇ?」

「味もよぉ、薄くね?」

「・・・おまえ等は運動会系男子に食わせたいのか?文化系女子に食わせたいのか?」

「「・・・・!!」」

 

 そう、彼ら自身の目的を思い出して背筋が伸びる。

 

「粗暴な男の屋台より、気味悪いほどにこやかな屋台の方が女子も近づきやすいだろうなぁ?」

「「「「「!!!!!」」」」」

 

 今度は周辺男子全員の背筋が伸びる。

 

「志を思い出せ、誰を相手にしているかを。魂に刻み込め、なにを目的にしているかを」

「「「「「サーイエッサッ!!」」」」」

 

 敬礼して屋台に戻る男子多数の中、おれは心からの疲れを感じていた。

 やはりモテたい、その原動力は恐ろしいまでのレベルなわけで。

 モテモテじゃなくても、女子とお話ししたい、このレベルでも大きく行動を底上げする力があるのでした。

 

 女子と、女の子と仲良くなりたいという欲望は、恐ろしいまでの勢いとなっていた。

 身だしなみとか見た目とか、この辺は普通男子校ではスルーされるのだが、年に一度のお祭りだと言うことで集中的に暴走しつつあった。

 が、この辺は女子教師などからかなり指導が入り、「格好いい」から「感じいい」へとシフト。

 

「見た目がいいより、見た目が普通の男子高校生の方が敷居の低い相手です。まずは普通に会話できる関係でしょう」

 

 さすがバツイチ(おなご)先生。

 その台詞に何重モノ意味を感じます。

 

「なんですか、風間君。その意味ありげな視線は?」

「なんでもないっす」

 

 とはいえ美人先生の忠告は非常に重く、屋台班や客引きばかりではなく仕入れ追加班なんかも「感じいい」重視になった。

 そんなわけで、ごたごたとしているが、それでも女子の様子見客が多いのは「感じいい」影響だろう事は間違いない。

 

「風間ぁ、そろそろ舞台開始だから、挨拶頼むぞぁ」

「いらんだろ、それ」

「いや、今回の屋台村形式は革新的だ。仕切は入れたいんだよ」

 

 良いことか悪いことかは別にして、この屋台村のシステムは、麻帆良学園祭という大きな区切りの中に、男子校の小さな学園祭を独立させたような作りになっている。

 先進的な学園都市全体の学園祭の中に、ローカルな囲いを作ってしまうという非常に後ろ向きなプランなんだけど、逆に囲いが出来ることで他の出し物とかぶっていても大きく問題とされない形になってしまった。

 それ故に、第二第三のグループ、そう、バンドや演劇などで第一線の集団には劣るけど、それでも発表の場がほしい団体には非常に人気あるものとなっていた。

 そして、そんな団体を支援している人たちもいるので、この屋台村の売り上げはかなりの方向になっている。

 出だしだけで予想は上方修正。

 すでに学園都市外への買い出し班が走っている状態だ。

 今日一日分として確保した資材は、このままだと午後三時頃には枯渇する可能性が高い。

 

「・・・適当で行くぞ? 短く短く、おまえはヤンかってぐらい短く」

「せめてヤンの二倍はいけ」

「うっし、じゃ、一分な」

 

 そんなわけで、仮設ステージに立つと、わっと拍手が盛り上がった。

 

「モテ王だ!」「モテ先生やぁ!!」

 

 だれがモテ王だ、と軽くつっこむと、再び盛り上がる。

 

「・・・あー、山賊砦みたいな屋台村ですが」

 

 この出だしで爆笑の周囲。

 見に来た人たちもスタッフも、ゲラゲラと笑い声をあげている。

 

「今年巧くいけば、伝説の始まりだ。盛り上げていこうぜ」

 

 ばっと拳を振り上げると、とりあえずネタを挟んでみた。

 

「ジーク、ジ○ン!」

「「「「「ジーク、ジ○ン!!!」」」」」

 

 爆笑とともに唱和されるかけ声は、翌年以降、手を変え品尾を変え続くことになったのであったが、それは少し未来の話。

 

 

 

 軽トラを運転しているのは、圏外買い出しの連中が買い出しに力を入れすぎた所為だといえる。

 見た目と態度と口調を正した男子高校生という存在は、商店街の奥様方のいい玩具らしく、おもしろ可笑しくイジられたあとで、山ほどサービスしてもらってしまったとか。

 自転車部隊が即応物資の回収に行ったが、さすがに量が多いので、学校の軽トラを駆り出して回収と相成った。

 

「こんにちわぁ、麻帆良男子校のものですぅ」

「あら、イケメン」

「かわいい子だわぁ」

 

 と、まぁこんな感じで。

 俺が囮になっている間にドンドン荷台へ積んでゆき、余剰人員は再びやってきた自転車部隊がニケツで回収。

 俺はニコヤカな笑みで屋台村の割引券や無料券をみなさんに渡して回った。

 

「みなさんからご提供していただいたモノはすべて無駄なく消費させていただきます。ありがとうございました」

 

 ぺこっと、買い出し部隊の筆頭である睦月某とともに頭を下げて、奥様方に手を振りながら商店街を離れた。

 

「すっげぇな、風間」

「おお、むちゃくちゃサービスされたな」

「いや、そうじゃなくて」

 

 運転しながら横目で見ると、睦月は苦笑い。

 

「絶対、あの奥さんたちは屋台村に来るぜ」

「だったら、明日のシフトに買い出し部隊を入れとかないとな」

「・・・本当にすげーよな」

「買い出し部隊はマダムキラーズと名前を変えるか」

「そうじゃねーだろ」

 

 なにが違うのやら、と思ったが、そろそろ麻帆良のゲートなので集中することにした。

 

 

 

 屋台村の方から休憩シフトの入れ替えを要請されたので、急遽俺は休憩になってしまった。

 回るところはあるつもりだったが、それでも夕方以降なのでとりあえず制作協力をした裕奈のクラスを見に行ったのだが・・・

 

「いぃぃぃやぁぁぁぁ!!!」

「ぎゃぁぁぁぁ!!!」

「じょうぶつしてぇぇぇぇ!!」

 

 聞こえてくる絶叫に、随分と盛り上がっているなぁとうれしくなった。

 

「ちょ、ちょっとふーにいちゃん!!」

 

 ずびっと俺の首根っこを押さえるのは裕奈。

 

「おお、ゆーちゃん。繁盛してるじゃないか」

「つうか、あの『とびだす学園長』がやばすぎ」

「うむ、ネギ君がちょっとちびったと聞いたが?」

「トラウマものよ」

 

 そうかそうか、うんうん。

 よかったよかったと去ろうとしたら、数本の腕が俺をからめ取る。

 

「風間さん、色々と責任をとってくださいません事?」

「いやいや、雪広さん。ちびったネギ君をおいしく愛でてたって聞いたんだけど」

「そ、そ、そ、そんな事実は記憶にございません」

「またまたぁ~」

「いんちょ、風間さんの口車に乗ってるわよ!!」

「・・・はっ、さすが風間さん、おそろしい方ですわ」

 

 とかなんとか、まぁ実は・・・

 

「このだまし絵と『とびだす学園長』の制作者が風間君だと聞いてね。全く準備に関わっていなかった僕が言うのもなんだけど、少し力を入れすぎ何じゃないかと話を聞きたかったんだ」

 

 高畑先生による強制面接でした。

 とはいえ、高畑先生の隣に和服猫娘姿の神楽坂さんが居るので、そこまで深刻ではないのだろうけど。

 

「3Aの出し物にアクセントを加えましたけど、あれは全部美術資料があって画才があれば作れるものですよ?」

「そこに全力を出してしまっては、彼女たちの出し物としての意義が薄れると思うよ」

 

 ちょっと眉を寄せた高畑先生の肘を、ちょいちょい引っ張る神楽坂さん。

 

「あ、あの高畑先生」

「・・・なんだい、明日菜君」

「あの絵も『とびだす学園長』も、風間さんは二時間足らずで書いちゃってます」

「・・・本当かね?」

 

 疑問と言うよりも確認という感じの高畑先生に、神楽坂さんはこくこく頷く。

 うん、ちょっとかわいい系の演技指導が行き届いてるな。

 頑張れ神楽坂さん、でもオトすのは卒業後だぜ?

 

「風間君、つまりアレは、全力ではない、と?」

「中学生レベルにあわせたアート、と傲慢に言ってもいいですけど」

 

 肩をすくめる俺に、がっくりうなだれる高畑先生。

 本当は魔法かどうかについて聞きたかったんだろうけど、神楽坂さんには内緒にして居るっぽいからなぁ。

 全開でばれてるけど。

 つうか京都の一件でばれてることを知ってるはず何だけど、どうなってるのかね?

 もしかして高畑先生って、脳筋?

 ・・・うっわぁ、思い当たるわぁ。

 

「あー、こんな言い方は卑怯なんだが、そういう実力は自分のクラスや所属で発揮すべきじゃないかな?」

「その辺は、うちの学校の屋台村で自由気ままにやってます」

 

 そんな風にいいつつ、俺はうちの屋台村の割引券を見せて渡す。

 

「割引券と人気投票が一緒になっている、か」

「学校出典としては小規模ですけど、人数としては全校規模でバックアップしてますんで、結構おもしろいことになってますよ」

 

 軽く説明すると、かなり頭痛に耐える顔になっている高畑先生。

 

「つまり問題を内包することで、外との摩擦を最小にする、かね」

「おもしろいプランだと、刀子先生も笑ってました」

「彼女もか・・・」

 

 どうやら高畑先生、同じ魔法先生内でもハブにされている模様。

 支え所だ、神楽坂さん!

 ・・・うん、そうだ、ちょっと後ろから体温を感じさせて・・・よし!!

 

「・・・最近、明日菜君のアプローチが巧妙なのは君たちのせいなのかな?」

「女っ気のない人生の彩りを演出してます。感謝してください」

「ガァァァァァァァァァァ!!!」

「ああ、高畑先生ご乱心!!」

 

 ヒョイヒョイ逃げる俺をキレて追い回す高畑先生という構図は結構な評判となり、しばらく語りぐさになってしまったのであった。

 

 うやむやのうちに裕奈のクラスから離れてしまったが、そろそろ休憩時間もおしまいなので屋台村に戻ると裕奈にメールして、俺は持ち場に戻った。

 怒り狂うキレ高畑を誘導してきたという事で、「英雄」とか呼ばれたのは余計なことかも知れない。

 ともあれ、その目で「屋台村」を確認した高畑先生も色々と感心し、俺が裕奈のクラスで自重していたことを理解したようで、その怒りを収めて帰っていたが、怒りの高畑も怒気を押さえるこのうまさ、とかいうキャッチフレーズで宣伝したのは不味かったらしく、あとで説教を食らってしまったのはいい思い出だろう。

 

 そんなこんな一日目、途中経過でも大黒字。

 ステージの団体の演技や演奏もかなり巧かったし、身内だけで盛り上がるようなネタもなかったことで、屋台客も楽しんでいた。

 

 途中、舞台の切れ目に裕奈のクラスの娘たちのバンド「でこぴんロケット」が乱入してきたので、二曲ほど演奏してもらったらものすごく盛り上がりすぎてしまったのは彼女たちが可愛いことと演奏のうまさに理由は求められる。

 

 割り込まれた団体、舞台劇の連中も一緒に盛り上がっていたので問題はなかったと信じたい。

 

「いっやぁ~のりで割り込んじゃったけど、まずかった? 風間さん」

 

 柿崎さんがもうしわけない、という顔で頭を下げているが、セッションめいた演奏の成功で盛り上がっているのは間違いなかった。

 

「いいんじゃね? わりと隙間のある舞台使用設定だから」

「そっかぁ、じゃぁさ、軽音関係のバンドに声かけていい? 正規の舞台に入れなかったとこって結構あってさ、ゲリラライブだと周りに迷惑するし」

 

 このへんのモラリティーの高さが麻帆良の良いところではないかと俺は思う。

 

「バンドレベルは『でこぴんロケット』以上。紹介するからには君たちがそれの責任をとる、でいいなら許可だよ」

「うっわ、思いのほか風間さんって厳しい人だったんだね」

「それこそ、みんなの迷惑にならないように気を使ってるんだよ」

 

 苦笑いの俺に、柿崎さんはぐっと親指を立てる。

 

「うんうん、意中の女以外には厳しいか。実は結構、それって評価高いよね」

「意中の女って、だれのことよ?」

「裕奈」

「あれは妹枠だ」

「またまたぁ~」

 

 このこの、と肘でグリグリしてくる柿崎さん。

 といっても、

 

「彼女には彼氏がいるからぁ、俺が相手じゃないからぁ」

 

 と周囲にアナウンスすると、敵意の視線は急激に散った。

 

「あ、それ情報古い。さっき別れた」

「まじ!?」「うそ!?」「もったいなぁ」

 

 急にモブの輪が狭まった。

 暑苦しいって!

 

「だってさぁ、うちの出し物で腰抜けてちびってんだもん。さすがに幻滅」

「中学生のお化け屋敷でちびるか」「ねーわ」

 

 どやどやと元彼氏をバカにするモブ男子。

 が、ここで燃料投下。

 

「・・・ま、風間さんが手伝ってくれたところが怖すぎるという話もあるんですけどねぇ」

 

 ひたっと俺の腕に絡んでくる柿崎さん。

 

「おめー、こんなところで新規客あつめかよ」

「あはは~、実はマジで呪われているとか言う噂が立って、明日以降の客足がやばそうなんだよねぇ」

 

 本気で呪われているという噂が学園内に駆けめぐっているとか。

 

「あ、そうそう、そろそろ風間さんを連れていかないと怒られるよね」

「長瀬さん、ちょっとまじだったもんね」

 

 俺の周囲を固めたでこぴんロケット。

 何事か?

 

「だって出るんでしょ、麻帆良武闘会」

 

 忘れていたかったです、はい。

 

 

 

 

 

 

 麻帆良学園祭のなかではいくつかの格闘大会がある。

 各武術各武道の専門大会を抜いても、その数は二桁であったそうだ。

 で、その大会を一手に纏めたのが「超=鈴音」。

 なんと裕奈のクラスメイトであった。

 

「長瀬さんから聞いてるネ。古からも手強いと聞いてるヨ」

 

 主催者様から直接の励ましを受けた俺は、超高校生級の招待選手という扱いになっている。

 

「(確かに(オーバー)高校生ですけどね!)」

 

 内心傷ついていたのは内緒である。

 

 予選は乱戦勝ち抜きというモノだったので、とりあえず合気で投げまくっていたら、味わいの濃いメンバーが残った。

 一人、クラスメイトの薫ちゃんこと、豪徳寺薫。

 一人、隣のクラスの山崎健次郎。

 一人、見た目、ターミネーターっぽいごりまっちょ。

 

「おーおー。さすが風間だぁ、やるなぁ」

「すげぇ投げだな、風間。で、誰を最後に投げるんだ?」

「・・・」

 

 なんとなく、ごりまっちょから俺も後の二人も離れている。

 だって、やつ、やばい空気出してるんだもん。

 

「とりあえずだ、薫ちゃん。あのやばいごりまっちょ、なんとかしねぇ?」

「あー、うん、俺もそれ考えてた」

「卑怯だけど、まぁ賛成だ」

 

 よし、と男の友情を交わしたところで事態は動く。

 

「ふーにいちゃんがんばってーーー!」

「かざまさーーーん、応援してますよーーー!!」

 

 裕奈と那波さんの声援が聞こえたのか、急に二人が手を切って離れる。

 そして何故かごりまっちょの両脇に立った。

 

「風間、おまえは俺たちの敵だ」

「風間、おまえだけはゆるさねぇ」

「・・・風間、コロス」

 

 ちょっと電子音ぽい台詞が重なったとき、三人の男たちが俺に襲いかかった。

 

 

 ・・・投げ飛ばしましたが、何か?

 

 

 ルール的には予選一面で二人の選出がされることになるはずだったのだが、俺の予選面では一人しか残らなかったので、本戦一回戦免除という流れらしい。

 が、それはおもしろくないだろうと言うことで、一つの提案を「主催者」にしてみた。

 

「・・・面白いね、採用ヨ」

「うっす」

 

 というわけで、予選落ちの強者を集めて、俺の一回戦をバトルロイヤルで勝ち抜きにしようと言う提案は通った。

 ハンデとして俺は「合気」を使わないと言う形にしたので、派手な形になると思われる。

 

 個人的には殴る蹴るではなく、それっぽい格闘劇場にになることを期待しているのだが、主催者の意図で変わる可能性あり、だ。

 

 本戦は明日なので、本日はここまで。

 ところで、魔法生徒の人が参加していたが、大丈夫なのだろうか?

 

 殺傷武器禁止なのだが、魔法ってあれ、殺傷武器でしょ?

 

 

 

 かいさーんということで、一度選手説明会に出た後で会場から離れようとすると、薫ちゃんにとっつかまった。

 

「かーざーまーーーーー、貴様、アレほどの力を持っていて、なぜ格闘武連にはいらん!?」

「俺のは『武術』。合気とはいえ柔術混じりの殺し技なんだよ。学生相手にやっていいものじゃない」

「それでもだなぁ」

「文字通り、超高校生級なの、忘れたか?」

「・・・あー、オーバー高校生、ね」

 

 そう、留年中の俺が、部活動とかちゃんちゃらおかしいわけで。

 その分、エンジョイしてますが。

 

「ふーにいちゃーーーん、かっこうよかったよぉ!」

「風間さん、お疲れさまです」

「風間さん、すごかったです!!」

 

 裕奈、那波さん、そしてネギ君。

 これに加えて、くーちゃん、龍宮さん、桜咲さん、忍者・・・って、あれ、裕奈や那波さんは別にして、本戦出場者の3A率高くねぇ?

 知り合いという面では小太郎少年も本戦に出てるし。

 微妙だなぁ。

 あと微妙なのは高畑先生。

 あのひとマジになって本戦に出てるし。

 そんなに神楽坂君に良いところ見せたいか?

 

「え、ええ、そ、そうなのかな?」

 

 よによにする神楽坂さんを、みんなでニヤニヤ。

 

「へぇ、彼女が噂の幼妻?」

「そうそう、薫ちゃん。いま、高校学区で有名な、高畑先生の幼妻、神楽坂明日菜さんだ。将来は高畑?」

「いやぁだぁ、もう、風間さんのいぢわるぅ~」

 

 びよんびよんブレブレの神楽坂さんを、ネギ少年は気味の悪いモノを見るように遠巻きにしている。

 うん、おれも少しキモイ。

 

「ところで何で神楽坂さんも本戦出場?」

「あ、うん、私も色々と考えて、高畑先生のいる世界の方向に一歩近づこうかなって」

 

 えへへ、と照れながら微笑む彼女は可愛い。

 

「うん、その努力が高畑先生の孤独を救う。君もわかってるだろ? 先生は教職の中でも孤独の色合いが強い」

「うん、だから私が支えるの」

 

 がっつポーズの神楽坂さんを、みんなで写メイタダきました。ごちそうさまです。

 

 

 

 屋台村に帰ってきた俺と薫ちゃんだが、これに何故かネギ君と小太郎少年も同行してきた。

 興味アルそうで、無料券と小遣いを渡して解き放ったところ、目をきらきらさせた少年二人が野山をかける子犬がごとくに走り回り始めた。

 うん、お客の女性も「いいもんみた」風の顔になっている。

 

「風間ぁ、みてたぞぁ」

「すげぇ、最強じゃねぇ?」

「優勝しろよぉ!」

 

 と、なぜみんな見ていたかというと、なぜか武闘大会はケーブルテレビで中継されていたそうで、その映像をドームテントにプロジェクタで映し出し、音声はFMトランスミッタで発信していたそうだ。

 空きスペースには本戦の予想トトカルチョまでオープンしており、高畑先生は本命、そして俺が次点になっていた。

 やはり先ほどの「キレ高畑」から逃げ切った手腕が評価されているらしい。

 

「風間さん、やっぱりお強いんですね~」

「そりゃそうや、風間のにいちゃんやし」

 

 いつの間にか戻ってきたネギ君と小太郎少年に両手には、持ちきれないほどの屋台食物が山盛りで。

 なんとも苦笑してしまう。

 

「なんていうか、この『屋台』の食べ物って、言いようのないおいしさですよねぇ」

「なんか、不味いとはいいがたいんやけど、でも多弁ともったいない気がするんや」

 

 この感想、待っていた最大の賛辞である。

 基本、グルメレベルのおいしさは求められないので、不味くない二段上の味でまず味を調えたのだ。

 明日以降は、辛み追求やうまみ追求型に変化してゆき、その味付けで差別化を押し進める予定だ。

 ただしスイーツ関係は変更なし。

 これは絶対命令。

 

「あ、ネギ。このあと『あれ』があるんやろ?」

「あ、そうだった。風間さん大変お世話になりました。このあとの予定がありますので、また会期中にお世話になりたいと思います」

 

 ぺこっと頭を下げたネギ君とは対照的に「またな」と手をふり去ってゆく小太郎少年。

 まぁ、仲のいいことだ。

 

 と、十分もしないうちに、再びやってきたネギ君と小太郎少年。

 

「すみません、風間さん、大変申し訳ないんですが、手伝ってもらえないでしょうか?」

「ほんとうにスマン、風間のにいちゃん。是非とも力を貸してほしいや」

 

 ヒドく疲れた顔である。

 この十分でなにが起きたのか、思わず首を傾げたのだが、説明はない。

 が、その顔はヒドくせっぱ詰まっている。

 

「どうしても、俺の力が必要なんだな?」

「はい、風間さんの助力がなければ、僕たちは必ず負けてしまいます」

「悔しいけど、風間のにいちゃんがいてくれんと、負け負けや」

 

 彼らの確信を微妙に思っていた俺であったが、何らかの決戦が有ることは知れた。

 

「君たちがと別れて十分ほどしか経っていないが、なにが起きてるんだ?」

 

 俺の台詞を聞いて、二人は「え?」と首をひねった。

 

「・・・つかぬ事をお聞きしますが、今日って、学園祭何日目ですか?」

「初日だよ。さっき武闘会予選通っただろ?」

「「!!!!!」」

 

 声もなく拳を振り上げるネギ君、絶叫をあげたくて、それでもあげられない何かを押さえ込んでいる小太郎少年。

 なにが起きたのやら?

 

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