ユーティリティ

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第六話

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旧年は非常に仕事が忙しく、色々とアップしたかったネタも進められませんでした。

来年は頑張って時間も作りたいと思います。

今年同様、よろしくお願いいたします




 

 

「さってと、今俺を包囲しているみなさん。逃げも隠れもしないから、このバイクを格納させに行かせてもらえませんかね?」

 

 

 にっこりほほえみ、俺を包囲している麻帆良教員たちを見回したが、誰も笑っていなかった。

 なんとも心の狭いことだと内心苦笑いの俺であった。

 

 

 つれてこられたのは麻帆良女子中学にある統括理事長室。

 そこに旅行前にあった老人、近衛理事長がいた。

 尋問会しか弾劾かと内心身構えたが、近衛理事長が口にしたのは感謝であった。

 そう、今回の騒動で俺が介入したことで被害者は最小となり、事態は極小の漏洩ですんだ、と。

 

「我ら魔法使いどころか、ご両親にも内緒にしていた力を使って我が生徒や近衛の家を救ってくれたことに感謝しますのじゃ」

 

 つまり、両親や周辺に内緒にしていた力を把握していますよ、と。

 

「・・・ところで、風間君。君のその力、本当に魔法やアーティファクトではないのかのぉ?」

 

 自分たち側の人間、敵国や反対陣営ではないのか、その確認だろう。

 

「・・・僕のこの異能は、近衛理事長もご存じの、行方不明の期間に身につけたものです」

「うむ、君が半年ほど行方不明だったことはきておる。此方でも独自に痕跡を調べたが、日本国内はもとより世界のドコにも存在しなかったときいておる」

 

 そう、世界のドコにも存在していなかったのだ。

 

「簡単な説明だけでご勘弁いただきたいのですが、僕はその期間、異界に閉じこめられていました。そこで脱出のための努力をし続けた影響で異能を得ることになったんです。もちろん、これは皆さんが使う『精霊魔法』とは全く別のものです」

 

 ほほぉ、とほほえむ近衛理事長。

 

「なるほど、風間君は、我々魔法使いが使う魔法が『精霊魔法』ダト理解できる知識があり、『精霊魔法』と区別せねばならない場所にいた、ということでいいのかのぉ?」

「その理解で結構です。ただしこれ以上の説明は勘弁してください。わりとトラウマレベルの記憶ですし、今魔法で読もうとしている記憶を読みとると、少なくとも廃人を量産するような経験ですので」

 

 聞いた瞬間、近衛理事長がばっと手を横に伸ばす。

 それに併せて俺を包んでいた魔法も消えた。

 

「すまんのぉ、言い訳をさせてもらえれば、敵意がないかについてだけ調べるように指示はしておったのじゃが先走ったものがおったようじゃ」

「理解はします。ただ、本気でやめておいた方がいいですよ?」

 

 にっこりほほえみあう俺と近衛理事長。

 会話という名の試合は始まったばかりである。

 

 

 

 

 

 五時間にわたる会話という名の殴り合いは終わった。

 一応、俺の能力がアイテムボックスと向こうで得た魔法、そして魔法アイテムであると理解してもらえた。

 まぁチートアイテムボックスなんていうのは無茶だし。

 で、魔法アイテムを俺が作れるかという話があったので、時間をもらえれば作れる可能性がある旨の話はしている。

 というか、本当は出来る。

 魔法彫金で色々と作れるから。

 ただ、簡単に出来るとか思われると面倒なので、すかっと嘘を突き通しただけである。

 まぁつくろうとしているものはある。

 エヴァの呪いを軽減させるための護符。

 脳味噌に焼き付いている魔法彫金衽合わせで、出入りできる範囲を関東近県まで広げることが出来そうな予感があるのだ。

 少し広がる程度の話だが、それでも意味はあるだろうし。

 

 現実の話、エヴァの呪いは確かに契約違反だと認めていた。

 ただ、契約履行をするための人材がいないのだという。

 三年だけ人間生活させたあとで呪いを約束だったのだが、その約束を守る人間が行方不明で15年目だという。

 だったら、俺が研究して呪いを解いても良いか、と聞いてみたところ研究は大歓迎だが時期によっては魔法世界側から追われる可能性がでるので、出来るだけ行動する前に相談してほしいと言われてしまった。

 だから今回の護符も相談はしている。

 で、実際に渡す前に見せてほしいとは言われている。

 俺のアイテム制作能力を鑑定するのだろう。

 抜け目のない老人である。

 

「どうした、フー。お疲れだな」

 

 夜道に現れたのはエヴァ。

 

「ああ、今まで事情聴取だよ」

「そんなもの必要ないだろうに」

「エヴァと仲がいいから嫉妬されてるんじゃないのか」

「はっはっは」

 

 わりと本気でそう思わないこともない。

 とはいえ何で彼女が、と思っていると、その種は知れた。

 絡繰さんが俺に連絡を取ろうとしたのだが魔法障害によって邪魔されていることに気づき、その調査にきたらしい。

 

「フーにはこれからも世話になるからな。恩も受けている。少しぐらいは気にかけているのだ」

 

 何か問題があれば蹴散らすつもりだったと聞けば嬉しくなってしまう。

 

「ありがとう、エヴァ」

「気にするな、フー」

 

 こつんと拳を合わせ、再び彼女を家に送ることにしたのだが・・・

 

「このままフーが家に帰ってまた拉致されるのもつまらん。今晩は泊まれ」

 

 とお泊まり会が開催されてしまった。

 こうなるとこっちも色々と持ち出す。

 亜竜肉とか海竜肉とかロロック鳥肉とか。

 

「おお、これは味わい深いものばかりだな」

「楽しんでくれるなら嬉しい限りだよ」

 

 というわけで、以降、定期的にお泊まり会が開催されることになったのでした。

 

 

 

 高校のクラスが帰国して通常授業に入る前、修学旅行の結果発表なんてものが行われた。

 鈍なところに行ってどんな交流をしたかというものを行き先別に拡販でレポート発表みたいな感じにするのだが、どの班も地元美人と楽しんできたみたいな内容が組み込まれていて涙ぐましいやら悲しいやら。

 だって、誇張ばかりでないようが微妙すぎるのだもの。

 で、俺の場合は一人日本旅だったので、その道すがらで収集した物価や景気、そして移動で発生する費用と物流コストからくる景気展望という感じでまとめて発表したところ、わりと教員の評判が良かった。

 が、途中の旅の写真として裕奈やエヴァが写り込んでおり、同級男子の敵意が盛り上がるの何のって。

 

「なぁ、ふーちゃんや。なんで君の一人旅に君の知り合いの女子が写ってるのかねぇ?」

「ああ、それは、近衛理事長の依頼で、子供先生のフォローのために近くを巡業していたからだねぇ」

 

 嘘はない。ただし微妙だが。

 

「ほほぉ、では、クラウザードマーニで富山にいたり白川郷でデートしていたという噂があるのだが・・・」

 

 級友たちは自分の携帯で様々なブログを表示。

 そこにはエヴァやら絡繰さんと腕を組んでるおれやら、三人でドマーニに乗ってる姿が撮影されていたりする。

 ドマーニにはタンデムシートがないので、絡繰さんがエヴァを抱える形でサイドシートに座る。

 

「おお、よくとれてるじゃん」

「てめぇ、俺らが野郎同士で旅行中、女子中学生とデートかよ・・・」

「あのなぁ、これは高度な取引と報償なんだぜ。詳しく聞きたければ俺じゃなくてエヴァちゃんに聞いてくれ」

 

 肩をすくめる俺。

 視線だけでヒトが殺せるレベルの級友たち。

 つうか・・・

 

「あれだけEU系美少女と仲良く写真が撮れてるんだから、嫉妬もくそもないだろ」

「「「「「・・・・・!!」」」」」

 

 悔しそうに視線を逸らす男子が多いこと多いこと。

 まぁボられたか、金で交渉したか

 語学の壁は高かったのだろう。

 

 このあと、担任教師から、本気で俺がネギ君のフォローに奔走していた事実が新田先生から報告されており、思いの外大変だったことが知られると生やさしい視線で見られることになったのであった。

 

 で、修学旅行後。

 旅行前に約束していた長谷川さんと会うことになった。

 彼女自身色々と悩みがあるらしく、そのことで麻帆良の外からきた俺と話したかったそうだ。

 

「・・・じつは」

 

 彼女は結構幼い頃から麻帆良にすんでいるそうなのだが、この「麻帆良」のノリについてゆけないそうだ。

 ダッシュで車を追い抜いたり、組み手で三メートルほどヒトが吹っ飛んだり、工業機械が軽く漫画レベルを超えていたりと、もう異常すぎると。

 この感覚を最初狂っていると思っていたそうだが、外からきた俺と少し話しただけで、おかしいのは麻帆良だと感じたという。

 

「風間さんは確かにすごいんだけど、それって想像できるすごさって言うか、未来の延長線上にいる感じなんです。でも麻帆良の変なところって、こう、蜃気楼みたいな、手を伸ばしても届かない先にある感じがするんです」

 

 なるほど、と感じた。

 それは多分、見るための目と視点と視界がヒトより優れているのだ。

 そしてそれを分析するための頭脳も。

 

「長谷川さん。君の感じている異常は、君にとっての正しい異常だと思う。でも他人にとって異常ではないから君は悩んでいる、そうだよね?」

「・・・はい」

 

 これは個人認識が強固、というよりも初期に取り入れた情報の強固さを頑なに信じている、ともいえるのではないだろうか?

 彼女が悪いわけではない。

 ただ、認識の正負の閾値がきわめて明確すぎるのだ。

 そして認識の中でのバグを無視できない。

 だからこそ、彼女の意識はだまされないのだ。

 魔法という世界認識から一般人を押しやる結界を彼女は意識しないことで正しい何かを見いだしている。

 

「・・・ヒトが見えないものを見える人間というものは結構いる」

「それは、霊とか気とか、そういうのですか?」

「いやいや、そうじゃなくて」

 

 そうではなくて。

 

 遺伝子のいたずらともいえる話だが、人間が本来見ることの出来ない波長の光をとらえることが出来る人間が結構いる、という話。

 逆に、本来受け取れるはずの波長を見ることが出来ない人間もいる。

 聞こえない音が聞こえたり、聞こえるはずの波長が聞こえなかったり。

 こんなへっぽこな仕様のハードを全般的に人体と呼ぶわけだが、他人とちょっと違う程度は仕様誤差ともいえるんじゃないだろうか?

 もちろん詭弁だ。

 精神的な感覚の話になるともう、個性としか言いようがない。

 麻帆良という閉鎖環境では絶対多数でも、麻帆良の外を見れば、絶対的少数のマイノリティーなのは長谷川さんも感じているとおりなのだ。

 

「・・・そっか、やっぱ麻帆良の外の感覚なんだ、これ」

「んー、そうともいえるし、いえない知って感じかな?」

「・・・詳しく聞いても良いですか?」

 

 詳しくと言っても、ちょっとだけしかいえない。

 なにしろ「俺」も麻帆良の外の感覚だが、世界の外でもあるわけで。

 

「長谷川さんの今の感覚は、情報の拒絶が基本にあるんじゃないかと思う。もちろん何でも受け入れろってわけじゃないけど、麻帆良ならすべて拒絶って感じになってないかな?」

「・・・」

 

 じっと俺をみる長谷川さん。

 

「詳しく語ることは出来ないけど、俺自身も一般人的感覚じゃない自覚がある。その俺と感覚を同期できる時点で長谷川さんも結構ずれてると思うぞ」

「・・・そう、ですか」

 

 がっくり肩を落とす彼女に笑いかけることにした。

 

「どっかの歌で、ナンバーワンよりオンリーワンなんて言ってたけど、個人が見ているものって、言葉の足並みはそろえられてるけど、実際は本当に同じものが見えているかだなんてわかったものじゃないんだぜ?」

 

 俺は彼女の目の前に、一個のピンポン球を出す。

 

「これは白い球体です、って説明して、皆には白い丸い物体が見えているけど、そう言う風に説明できる何かであって、本当は他の人には黒く見えているかも知れない。その黒い色が『白』って名前だと教えられているから『白い球体』だって説明が理解できるけど、本当に脳内情報が読みとれる装置で比べたら違うものが見えているかも知れないんだ」

 

 誰もが同じものが見えているわけではない。

 誰もが同じ様に認識しているわけではない。

 しかし誰もが一つの事柄を同じように表現する。

 これは教育の成果だ。

 一括した表現と認識を学習することで、表現の統一規格を持ったといえる。

 その統一規格内では、同じものを同じように表現できるのだ。

 ただ、先ほど言ったように、光の波長によっては見えるヒトや見えないヒトがいるので、その企画が通用しなかったりしたりする。

 

「科学的に解明されている段階で、ここまで個人差がでるんだ。君の認識が違うのも当然すぎる話なんだけど・・・」

 

 ちろっと視線を向けてみると、結構納得と不満がマゼコゼになっている顔であった。

 

「・・・わかったよ、ちょっとだけ踏み込んだ説明が出来るようにネゴしておく。そっちの方で許可がでればもう一度話をしよう。逆にでなくても俺の権限で出来る範囲で説明するよ」

 

 つまり、彼女の疑問に答えられる側にいると俺は表明したつもりだが、長谷川さんは少し安心した顔になっていた。

 そう、今まで誰にも頼れなかったことは間違いないだろう。

 加えて言う。

 麻帆良、こんな女の子を放置して今まで何をしてやがった、と。

 ちょっとこっちから理事長に説教しなければなるまいて。

 

 

 

「ということで、思い立ったが吉日という感じで乗り込んできました」

「ひょえっ!」

 

 とりあえず、長谷川さんのことをぶっちゃけて、魔法側の管理体制の甘さというか脇の甘さを糾弾したところ、部屋の影からぞろぞろと強面軍団が現れた。

 どうやら魔法先生側で会議中だったらしい。

 

「・・・あー、長谷川君はそう言う系統だったのか」

「確かに麻帆良への不信感を感じているようだったね」

「なるほど、幼い頃からの違和感でいじめか。そりゃイヤになるね」

 

 苦笑いとかで語っていれば起こるところだが、本気で悩み、解決案を模索している様なので暴れることはやめた。

 

「うむ、風間君。君はどう見るかのぉ?」

 

 俺だったら、という意見であれば・・・。

 情報の限定開示と、秘匿させられる側から秘匿を管理する側への引き込み、かなぁ。

 

「・・・というと、どういうことだい?」

 

 高畑先生が真剣な目でこっちを見てきたので、一応簡単な説明をした。

 単純に情報公開するというのは、いわば内緒にしてもらうための踏み絵だ。

 相手が欲しい情報を与えて、その甘みでどういう行動にでるかを確認するという意味で有効だ。

 しかし、その情報に秘匿性があり、それを守るための組織があるところまで明かすとどうなるか?

 組織側に立つか、組織の下につくかの選択になる。

 組織の下につくとなれば、監視と秘匿義務を負わせることが出来るし、組織側に立つとなれば少なくとも組織内部の監視だけですむ上に魔法や結界に左右されない異能持ちを組織で管理できるようになる。

 人材確保の良い機会なわけだ。

 この手の機密組織であれば、間違いなく人材不足だろうし、正直おいしいルートだろうなぁ、とか。

 

「・・・ってかんじなんですが、どうしました、高畑先生」

 

 見れば高畑先生どころか、近衛理事長も頭を抱えている。

 同じく頭を抱えていたガンドルフィーニ先生が剣呑な視線でこっちをみた。

 

「風間君。きみは結構黒々とした思考の持ち主だったんだね」

「いやいや、組織力学を考えればふつうではないですか?」

 

 まぁ、誉められたと思うことにしよう。

 

「で、ドコまで彼女に情報公開して良いですか?」

「「「「「・・・・・」」」」」

 

 じっくり検討された結果、麻帆良は魔法使いの町であることと、その情報自体が秘匿情報であること、そしてその秘匿情報を守るための組織があるところまでを公開する方針になった。

 もちろん、獅子気に引き入れるとかそう言う方向性は無しだと念押しされてしまった。

 

「なるほど、ネタ振りですね」

「ネタじゃないからの!」

 

 

 

 というわけで、再度長谷川さんとの会談のアポを取ることになったのでした。

 

 来る土曜に、と約束が出来たのだが、わりと長谷川さんも覚悟が出来た風の空気を感じるのは、やはり頭の回転が良いためだろう。

 今までの状況を積み重ねれば、MIBの査問とか面接とかと思ってもおかしくないし。

 その辺は安心できるように言葉を重ねるという手段もあるけど、あの手の子は自分で解決できるだけのヒントを渡した方が納得してくれる。

 

 そんなわけで、週末まで俺は地道な逃亡行動を続けるのであった。

 

 だって、うちのクラスの野郎どもが、裕奈のクラスの女子を紹介しろとかうるさいのですよ、ええ。

 そりゃ見た目がかわいいし、気のいい子ばかりだけど、リビドーぶっちぎりでEU旅行で日本人観光客から弾け過ぎと投書があったほどの空気の読め無さでは知り合いの女性など紹介できるはずもない。

 あと、たまたま写り込んでいたドマーニに乗せてくれとか、麻帆良の学校設備内だったら免許が無くても乗れるから運転させてくれとか。

 まぁ、俺もクラウザードマーニは大好きだからレストアしたんだけど、ただ乗りなんかさせますかっての。

 

「えー、フー兄ちゃんは私たちは乗せてくれるよね?」

「そりゃゆーちゃん。野郎と女子の扱いは別です」

「なんだろうなぁ、この軽さ。逃亡中なのに、私とお茶しててもいいの?」

「この辺は男女共存区域だから、野郎だけの集団が入りにくいんで大丈夫でしょ」

 

 俗称、カップル特区。

 喫茶店も食事どころも、そういう空気の店が多いので、野郎だけでくるには敷居が高すぎるのだ。

 高校生男子にしてみれば、空気が悪くてもおしゃれじゃなくても、適度においしくて量があるところの方がいいわけで。

 だから女性的なこの身が中心となるカップル特区には来たがらない、という面もある。

 でもなぁ、ナンパするならこういう町だと思うんだよなぁ、俺は。

 

「そうなの? フー兄ちゃん」

「だって、女子が来やすくて店に入りやすくて、出てくるものが少量って、もう梯子出来る要素満載だし。一人目で失敗しても次にアタックとか出来る環境だぜ」

「へぇ、へぇへぇ、なんかフー兄ちゃんってナンパ慣れしてそうなんだけどぉ」

「これでも男子高校生四週目だからなぁ」

「へぇーーーー」

 

 どんどん裕奈の視線が冷たくなってゆく。

 もちろんこういう方向で言い訳はしない。

 

 嘘って言う方が面倒だし。

 

「ナンパなんて所詮は会話のゲームだよ。一目惚れって言うならまだしも、軟派される相手だって時間つぶしとか会話に飢えてるとか、そう言う感じだったし」

「・・・本当に慣れてたんだ」

「こうやってゆーちゃんと仲良く話せるのも、そう言う経験があってのことなのです。そうじゃなかったら、美少女を目の前にして緊張で口が利けません」

 

 さげてさげて、超上げる。

 

「・・・もう、またまたぁ」

 

 にっこりほほえんだ裕奈が、俺の腕をつねりあげた。

 うん、どうにか機嫌をとれたな。

 あとは買い物につきあってギリギリ好感度調整終了という感じだと思われる。

 

「本当にフー兄ちゃんって変わっちゃったねぇ」

「成長したと言ってください」

「んー、なんか黒くなったって感じなんだけど」

 

 苦笑いの裕奈。

 そんな顔はいろんなものを思い出させられる。

 

「ねぇ、フー兄ちゃん。あの秘匿系の話って、色々聞いていいかな?」

「んー、親御さんの許可が必要な内容なんだよなぁ」

 

 そんな俺の言葉に、目をぱちくりさせる裕奈。

 

「え、ええ? お父さんに話していいの?」

「というか、明石さんに聞きなさい」

 

 遠回りに明石教授が関係者だと説明してやると、大声で驚きの声を上げようとしたので、速攻でふさぐ。

 

「・・・!!!」

「ゆーちゃんや、詳しい話はべつんとこに移動してから、な?」

「(こくこく)」

 

 

 裕奈を抱えるように会計して脱出した俺は、カップル特区中央のカラオケボックスに滑り込んだ。

 その場で防音処置を刻んだ彫金魔法プレートをセットして一息。

 

「あんまり大きなリアクションは困ります」

「ごめんなさーい」

 

 とりあえず、ファーストドリンクを注文したあと、軽く音楽を流しつつ話を再開。

 

「まぁ、裕奈も首までどっぷりだから話しちゃうけど、裕奈の家系って魔法使いの家系なんだ」

「・・・え、まじ?」

「これに見覚えあるだろ」

 

 そう言って渡すのは、見習い魔法使いの練習用杖。

 棒の先っぽに星とか月とかが乗ってるあれだ。

 

「あ、あれ、これ、昔、お母さんとあそんで・・・」

 

 そこまで言って裕奈は絶句した。

 そう、今まで忘れていたであろう母親との思い出を思い出していただろうから。

 

「裕奈のお母さんがお亡くなりになったとき、裕奈はすごく悲しくてすごくつらくて、お母さんのことを記憶から閉め出したんだ。そのとき、魔法のことも忘れちゃったんだよ」

 

 うつむいた頭をなでてやると、ぐっと身を寄せてきた。

 

「ねぇ、フー兄ちゃん。もしかしてフー兄ちゃんはお母さんのこと覚えてた?」

「ああ、豪快で気持ちいい感じの美人だった」

「もしかして初恋?」

「かもね」

 

 ぎゅっと俺に抱きついた裕奈は、ゆっくりとゆっくりと俺から聞かされた話の咀嚼を始めるのであった。

 

 

「そっか、そうだったんだ。へぇ、じゃぁ、私も魔法生徒になってたかもしれないの?」

「んー、あれは親子ともども希望してって感じだから。嫌々やっても成果が出ないし危険だし」

「そっかぁ、うん、理解できた」

 

 いろんな質問はあったが、わりと地に足が着いたものが多かった。

 ただ俺が行方不明だった期間の行き先は魔法世界じゃないことだけは確定させた。

 

「逆に、フー兄ちゃんが出鱈目になるほど異常な場所にいたってことだよね?」

「否定も肯定もしないでおく」

 

 まぁ、出鱈目な場所で出鱈目な時間を過ごしてきたわけだし。

 

「で、この物々しいルーンっぽいのって、フー兄ちゃんの魔法?」

「肯定はするけど、麻帆良の魔法使いも知らない情報だから黙っててくれよ?」

「うわ、もしかして私とフー兄ちゃんの秘密?」

「あと数人居るけどな」

「・・・ぶー」

 

 なんだか二人っきりになると、とたんに甘えんぼになるんだよな、裕奈って。

 




では、よいお年を!

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