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短編ぶっこみ匣

ファントムレコーダー

作者:赤城千
 人の行動を支配する方法、考えたことある?

 ボクはあるよ。

 とても、簡単だ。
 あ、でも言っとくけどこの方法はまやかし、詭弁だ。
 でも相手の心を、思考を相当縛れるのは確かだね。
 もう一度言っとく。これは嘘だ。
 でもやり方によっちゃあ力はある。



 いいかい、相手に前振りに、ボクはキミの行動を支配してる、って言ってやるんだ。
 当然嘘だ、って言われるね。
 切り返しに、こうだ。でもキミが嘘だって言うように仕向けたのもボクだよ?って。

 頭の回る奴なら結構これだけで身動きとれなくなるよ。
 人によっちゃあそれも嘘だって言うけど同じ様な切り返しでなんとかなる。

 話をつづけたいなら、これを嘘だって決めつける証拠は?って聞くんだね。
 そうしたら大抵相手は、じゃあこの先自分が何をするか言い当てろとか言うのさ。

 そんなときどうするか。
 まぁさっきと似た切り返し。
 それを言わせてるのもボクなのにそれで聞いても証拠に出来ないんじゃないかな、って言う。

 もしくは…嘘をつくのが上手いんなら、適当なことを言ってみな。
 もちろん相手が乗ってこなけりゃ言ったのとは違う行動をするね。
 そしたらこうだ。
 ボクがああ言ったらキミはこうするって知ってたからああ言ったんだ、って。
 これは言い方しだいじゃ苦しい言い訳になるけど、上手く言えば相手は嵌るよ。

 追い討ちかけられるんなら、そもそもキミはボクの言葉に逆らうつもりだったん
 だろ、結局ボクがああ言ったからこそキミはこうしたんだからね、まぁこれを説
 明しなきゃいけなくなるのも想定内だけどね、とでも言うといい。



 この理論なら、ほら、意外と抜けられないだろ?
 ボクは人を騙すのが好きでね、慣れてるからこうやってよく人を惑わせる。
 キミもよくよく考えてごらん、なかなかこれって逃げるの難しいだろ?



 例えば言い当てろって言われた時こう言うのもいい。
 キミはボクが言ったのと違う行動をするよ、意地を張って、って。
 それから、キミは何々をする、って言うのさ。
 こうすると相手はどうしても束縛から抜けられない。
 何をしようが本当にボクが言った通りになったととれるんだから。
 むろんそこを突かれても嘘かどうかの証拠にはならないしさ。



 結構面白いだろ?
 あぁ、もちろんこれを打ち破れる理論もあるし、
 同じことを返されると互いにごたごたになるからね?これは結局嘘なんだから。

 でもこれってそれなりに真理があると思うなぁ。思わない?ボクはこの話結構好きだよ。



 ところでキミに、これを、この文字列を今認識しているキミに質問だ。
『ボクは、キミがこれを読むということを決めた存在だ。』これは本当か嘘か?

 …取りようによるから解無しだよ。



 …ただし。キミは今これを脳内で読んでる訳だ。
 このとき『ボク』という言葉の元はキミ自身で、
『キミ』という表記がキミにあてられていることもキミは知ってる。
 つまりボクとキミは一つのものになってるとも言えるよね。
 そしたら…この問いの答えは、『本当』だ。



 ちなみに『嘘』という解を正解にできるパターンは少ない。
 だってこのボクは筆者としては自分のことじゃないわけで。
 つまりボクってのはキミたちの世界に存在しない概念的なものだろう?
 キミが科学信仰者なら話は別だけど、物語が現実を規定する可能性だってないわけじゃない。



 実際怖い漫画のシナリオ通りに人が死んだケースがあるんだ。
 真似するつもりで出来ることじゃなかったのにね。
 奇妙なこともあるもんだ、ね。
 それにほら、実質物語を真似て犯罪起こす人もいる。

 ついでに変なずれた例をあげてみると、夜見る夢って時折、
 目覚める瞬間に起こることから遡ったかのようなものになるんだよ。知ってる?
 化け物とかに追い回されて、崖から落ちる瞬間に…ベッドから落ちて目が覚めた、とかね。
 まぁこれは脳の計算速度がすごいだけとも言えるかな。



 まぁなんにせよさっきの問いの答えを『嘘』にするのって難しいんだ。
 キミもこの問いの正解を『嘘』にする方法、探してみな?



 なんて脳内で『ボク』を再生するキミには難しいことだろうけど、ね。







 …キミには見付けられないよ。だってキミはボクが誰か決定しきれないんだから。

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