2012/01/14 日経プラスワン

 移り変わる四季をめでるように、和菓子店の店頭には餡(あん)や餅で花や生き物をかたどった小さな菓子が並ぶ。手のひらに載る小さな季節を、食べるだけでなく自分でも作ってみたいと思ったことが一度はあるだろう。その奥深い世界に一歩踏み入れてみてはいかが。
何の材料からどう作るのか、想像がつかないけれど大丈夫?
 東京都目黒区のマンションの一室で開く「和菓子スタジオへちま」の教室。主宰者である金塚晴子さんは「洋菓子に比べて和菓子作りは『これぐらいのもちもち感』などと、文字や数字では表せないことが多いのが難しいですね」と話す。
 毎月1回、季節に合わせた一品を皆で作りながら、和菓子作りの基本手法・応用技術を学ぶ。この日のテーマは「茶巾絞り」。白玉粉と水、上白糖から求肥を作り、白餡に混ぜて練り切りにする。練り切りはパーツごとに抹茶と色粉で染め、冬に咲く花に見立てた菓子、寒牡丹(かんぼたん)に仕上げる。
 和菓子店では大鍋で仕込むのが一般的だが、同教室は家庭にある道具や機器を使うことで、簡単な作り方を学べるようにしている。
 洋菓子に比べ、教室の数はあまり多くないため、遠方からの参加者も目立つ。札幌市から通っているという坂田蓉子さん(76)は「和菓子作りには押したり、ついたりと力がいると思っていたけれど、電子レンジで作る方法を教わった。これならば自分でもできる」と笑顔を見せる。
 練り切りを作る際に重要となるのが、粉や砂糖といった材料の分量を間違えないこと。餡や生地の色を重ねるため、それぞれを綿密に量る。重ねたり、隠したり、透かしたりすることで季節の花やモチーフを表現するため、ほんの1グラムでバランスが変わる。またきっちり量っても、微妙な力の入れ加減で色の具合や大きさが違ってしまう。
 遠目には色とりどりの粘土で遊んでいるかのようだが、細心の注意と技術が必要だ。生徒の一人、津元深雪さん(51)は「洋菓子は何となく作り方の想像がつくけれど、和菓子は何でできているのかわからなかった。習うことで、それが見えました」という。
 和菓子作りを学ぶ場は製菓学校の和菓子コースという本格的なものから、レシピ本を出版している人が個人で開いているものもある。本を片手に自分で工夫を重ねるのは重要だが、一度は体験したい。本の著者や和菓子店が講座を開いていないか、問い合わせることから始めよう。
 近所に教室など見当たらない人は、和菓子店の多い京都を訪れてみてはどうだろう。老舗の職人から教えてもらえる体験型の教室がある。観光をかねて参加することで、自作を始めるきっかけになるはずだ。
 京都で最も古い花街、上七軒に店を構える和菓子の老舗「老松」は北野店で1日2回、1時間の和菓子教室を約18年前から開いている。老松の片岡聖子さんによると当初は修学旅行などの見学だけだったが、作りたいという声が多く、開講したという。
 京都で和菓子が発展した歴史や背景といった話を聞いた後に、教室では2種類の和菓子を5個作る。1月は椿(つばき)と梅が題材だ。体験できるのは既に色がついた素材を成形するだけだが、京菓子の技法を聞きながら自らの手で仕上げていく。習ったものを作った後、残った素材で自分なりに思い描いた形を創作してもよい。費用は1回2625円。
 慶応元年(1865年)創業の「甘春堂」は2店舗で和菓子教室を開いている。菓子職人が決めた上生菓子3個と干菓子1種類を作る。留学生や訪日した海外客の接待としても体験教室は評判で、英語、韓国語、中国語のパンフレットを用意している。参加費用は1人1回2000円で、20人以上なら出張での体験教室もある。
 いずれの和菓子店も抹茶とお菓子を1ついただいて、残りは持ち帰れる。参加には事前予約が必要だ。
 季節ごとに何度も通うリピーターもいる。和洋問わず菓子業界の人が勉強のために参加するなど、普段は見られない仕事の現場体験としても利用されている。
 和菓子の世界は、同じ素材を使って、様々な花や葉、生き物の形に仕上げることが魅力の一つ。職人の技を知る入り口として体験教室は最適だ。




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