小河雅臣
2016年1月5日13時53分
平和の太鼓を東京五輪で打ち鳴らそう――。京都の和太鼓製作会社の社長がそんな夢を描き、解体された東京・国立競技場のケヤキで大太鼓を作っている。戦火の時代、出征する学生たちを見送った大樹。社長を動かしたのは、自身の半生との浅からぬ縁だった。
京都市下京区の「太鼓センター」社長、ひがしむねのりさん(66)。コンサートの企画会社を経営していたが和太鼓人気の高まりを受け、1988年に太鼓製造と演奏指導の会社を設立。関西や首都圏で太鼓教室を運営し、プロの演奏会も各地で開いてきた。
国立競技場の建て替えが注目され始めた2013年秋、競技場の近くで教室の発表会があり、大きく美しいケヤキが立ち並ぶのを目にした。建て替えに伴って伐採されると知り、「あの木々に新たな命を吹き込みたい」。ケヤキは堅くて木目も美しく、太鼓の材料に最適だ。競技場の管理団体に提案して快諾を得た。
去来する思いもあった。
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