椎名系・赤松系作品を主とする二次創作支援投稿サイト
トップページ > 神代ふみあき書庫 > 赤松・椎名系作品 > ふーにまほら > 第一話
どもども、高齢年末年始アップです。
今回は、12時間周期で15話分のアップを予定しています、
お楽しみにw
高校卒業前の半年。
俺は世間的には行方不明になっていた。
実際は世界的な行方不明で、異次元的な迷子であった。
そう、高校三年の秋口に俺は異世界に落っこちてしまったのだ。
帰ってきたのは春ちょっとまえ。
すでに受験シーズンは通り過ぎており、卒業差し止め留年が決まってしまっていたわけだが、おやじのコネで転校して仕切り直せることになった。
さすがに先輩後輩だった人間関係で留年はイヤだった俺はその話に乗り、アパート暮らしを開始することになったのであった。
都市全体が学校とその関係で集められた町、麻帆良学園都市にお引っ越しと相成ったわけである。
転入先は男子高校。
何でも中学から上は男女別の学校なのだそうで、逆に共学状態なのは部活だけだから非常に盛り上がるらしい。
あと大学部も共学なので盛り上がるとか。
いや、言葉を綺麗にするのはやめよう。
「盛る」、この一語につきる。
恋に恋する乙女から将来の生涯就職先を射止めんとする肉食系女子、将来有望な生徒を見定める系女性やらなにやら。
恐ろしいほど能動的なのが麻帆良女子の心意気なのだと担任の葛木先生に説明されてしまった。
顔は無表情、言動にも抑揚がない道徳教員の先生だが、言葉の中身はポップにまみれており、真顔でとばすジョークは恐ろしい程のパンチに溢れている。
「この学校、というか麻帆良全体で言えば事故による留年なぞ本人のアクセント程度にしか意味がない。この麻帆良で仕切り直すというのは面白い選択だろう」
なんだろう、この「いいこといった」的な空気を醸し出しているのは。
本当に面白い先生だ。
そんな先生の先導で案内されたのは三年二組。
単純にランダム配置なのだとか。
成績順でクラスが分かれていたり施設に差があったりとか行う騒ぎはないと言う。
「とりあえず、今のところはないが、統合学園長がなにを言い出すかわからんのが麻帆良だ。警戒していてもおかしくない」
「いやいやいや、高校三年ですよ? 受験年度ですよ?」
「それでも無茶をするのが麻帆良の常識だ」
「しんじられません」
とかなんとか。
そうこう言っているうちにクラスに溶け込んだ俺であったが、無茶の一端を聞き及んだ。
なんと同じ三年、つうか中学女子三年だが、1クラスの担任が「10歳」なのだという。
英国の有名大学をスキップで卒業とか・・・おいおい。
受験年度の担任を、十歳少年に任せるとか、どういう神経だよ。
こんなのPTAが知れば、どういう騒ぎになるか・・・。
「いやいや、フーやん。そうはいうけどな」
なんでも、そのクラス、二年までずっと学年最下位ぶっちぎりだったそうだが、彼が担当した三学期だけトップに躍り出たのだという。
その実例を持って信任を得たと言うことになっているそうだが・・・
「内部進学だけならまだしも、外部受験の子なんかもいるだろうに。それで十歳天才少年が担任とか、外部的にまずいだろ」
「あー、それもそうやなぁ」
こんな話をチェーン喫茶店ではなしていたのだが、あまり周辺の注意は集まっていない。
にゃー、と考え込む級友。
とはいえ答えなんか無いのだろう。
当事者じゃないし。
というか、なんとも違和感を感じる。
言葉だけで言えば、まぁぎりぎりセーフな内容なのだが、
「麻帆良だから」
この言葉に覆い隠されたかのような霧のような靄のような、そんな違和感を感じる。
「あ、フー兄ちゃん、おっひさしぶりりぃー!」
「ああ、ゆーちゃんか。久しぶり」
席に座っていた俺を背後から抱きしめるようにするのは、おやじの親友である明石さんの娘の裕奈。
現在中学三年生で、内部進学を決めているという話であった。
「お、おおお、おおおおおおお、おい、フーやん。この子だれぇ?」
級友の視線が裕奈の特定部位に向いていたので、するっとバルタン攻撃。
ずびっとな。
「うぎゃーーーーー」
顔を覆ってごろごろ転がる級友を無視して、俺は裕奈に向き合った。
「俺も男なんだから、過度なスキンシップは避けるように」
「へぇ~、フー兄ちゃんってばワタシに女を感じたりするのかにゃぁ~」
にやっとわらってシナを作る裕奈にデコピン。
「ふぎゃっ」
「生意気言わないの。確かに昔と比べて女っぽくなったけど、それでも手の掛かる妹扱いです」
「ちぇ~」
残念そうに額をさする裕奈を俺の隣の席に座らせて、気になる話を聞いてみた。
そう、あの十歳担任の噂を聞こうと思ったのだ。
「え? ああ、ネギ君? ウチの担任だよ」
「「げ、まじ?」」
なんと裕奈のクラスの担任でした。
級友と共に俺は驚く。
「でも、いい子だよ? 品行方正で頭も良くて」
「でも十歳児だろ?」
「んー、確かに頼りがいはないかなぁ」
ここでポイントは、裕奈がファザコンであると言う事実だ。
彼女の頼りがいは無精ひげが生えるレベルでの中年でなければ感じない。
つうわけで評価対象外。
「よく生徒の親御さんが黙ってるなぁ」
「結構揉めたんだけど、新田先生とか高畑先生が支えるって言って」
新田先生、というのは現役中学生にとっては鬼の生活指導だが、ちょっと成長すると見えてくる優しさが大人気の学年指導+生活指導なんつう先生だ。
俺も転入時にお会いしてお世話になった。
その新田先生が表立って邪魔しないと言うか支えるという時点でPTAの支持をとりつけたようなものかもしれない。
でも、かなり胡散臭い。
背後に面倒な何かを感じる。
「・・・ねぇ、フー兄ちゃん。もしかしてネギ君が担任だって事、反対?」
「正直に言う。反対」
今からでも変えた方がいいとすらおもっている。
「で、でもね、本当に優秀なんだよ? みんなの成績だって上がったし、みんなだって仲良くしてるしぃ」
「そういう問題じゃない」
俺は先ほど予想した問題や世間での扱いなどの話をしてやった。
内部進学はいいだろう、そのへんは理解が進むと思いたい。
しかし、自分より年下の子供に大人の事務や責任、進学や就職という人生の重圧を背負わせるべきじゃない。
これが中学一年程度なら俺も、目をつむる。
そのネギ少年の経験のために皆つき合ってやってくれと言うのもありだろう。
たとえば高校生として入学というのもありだろう。
私学の高校生徒という立場であれば自由は利くから。
だが、中学三年生の学級担任という仕事を、いかに大学卒業資格と学力があったとしても、人間関係の未熟な経験しかしていない天才君に任せるなんてあり得ない話なのだ。
この話自体に違和感を感じていない人間を全委員並べて説教してやりたいほどの怒りを俺は感じている。
イヤ、それ以上にネギ少年をこんな過酷な立場に立たせている保護者への怒りも大きい。
明らかにネグレクトだ。
「ね、ぐれく、と?」
「育児放棄のことだよ、ゆーちゃん。如何に天才だって言っても子供は子供。経験や能力に劣る子供を就労させる、それも責任ある立場で就労させるなんてありえない。正直に言えば『麻帆良』だからなんて言葉にだまされちゃダメだ」
「え、でも、ちゃんと勉強して、先生の資格があって、で、でさ・・・」
「力があって実力があっても、就労年齢ってものが法律で決まってるんだ。その事実はもっと深く考えないとダメだよ、ゆーちゃん」
え、え、え、と涙目の裕奈の頭をなでながら、周辺から集まり始めた視線を考えた。
店の外から三人、今入ってきたミッション系女子高生、あとは店の奥でどこかに電話中っと。
「もちろん、俺がネギ少年を嫌っているからのはなしじゃない。俺は、ネギ少年を、子供の人権って奴を守りたいだけだ」
「・・・ちゃんとせんせいできてるよ? 皆と仲良くできてるよ?」
「ゆーちゃん、いや裕奈、よく聞いて」
真剣に俺が裕奈の瞳をのぞき込むと、彼女も背筋を伸ばした。
「格闘技の天才で射撃の天才。そんな十歳児が自衛隊でS群にいます。これは認めるべきですか?」
ぶひゅーっと息が漏れてたれた裕奈は、がっくりうなだれた。
「自衛隊なら個人の命だけですむ話だけど、学校の先生って言うのはクラス全員の人生を背負っているっていう難しい職業だ。その先生を言う重責を、子供に背負わせるなんて大人のする事じゃない」
不意に俺をみた裕奈の瞳に、俺の背後の人物が写った。
髪型マフィア、服装マフィア。
男子校で有名なマフィア先生事「神多良木」先生。
そのマフィア先生が懐に手を入れている。
こんなのが視界にはいっては反応してしまうというもので。
振り向きもせずにその懐に入れた手を上から押さえた。
「神多良木先生、店内は喫煙です」
「・・・すまん」
そういいながら懐の何かを戻した先生から一歩離れる。
「フー兄ちゃん、なんでマフィア先生の動きが判ったの?」
「ゆーちゃんの目に先生が映ったからだよ」
「なにその達人技」
きゃいきゃいと喜ぶ裕奈はさておいて。
ゆっくりと視線を俺は合わせた。
「で、こんな公共の場でたばこを吸いたくなるほどのニコチン中毒の神多良木先生は何のご用ですか?」
少し、ほんの少しだけ覇気を放つ。
これで何かを読みとってくれればめっけもの。
「・・・いや、喫茶店で不純異性交遊な痴話喧嘩があると聞いてな。広域指導員の当番のワタシが話を聞きにきたというわけだ」
にや、と笑うマフィア先生。
それを聞いて裕奈は何故か「てれるにゃー」とか身悶えている。
・・・って、店の外から精神系の魔法を使ってるバカがいる。
これは、そうか、記憶操作だな。
俺の記憶をどうこうしようと言うのが気に入らないが、それ以上に記憶を読みとろうというのがさらに気に入らない。
よし、あの世界でも猛威を振るい、主神すら土下座をした「恐怖」を流してやる。
・・・というわけで、「恐怖」接続。
「・・・・・ぎゃーーーーーーーーーー!」
「何事だ!?」
店の外、それも結構近くで誰かの叫び声が聞こえた。
うむ、SAN値直送の大パノラマ映像はお気に召したようだ。
つうか神多良木先生がアワくって飛び出したぞ。
だいじょうぶかいな?
「ね、ねね、フー兄ちゃん。私たちってカップルに見えるかな?」
「あと二年もすればお似合いに見えるんじゃないかなぁ」
「えー、今だって結構似合ってると思うけどなぁ」
「そりゃまぁ見方は色々だけどなぁ」
そんなのんきな会話をしている俺と裕奈の隣で、級友は人でも殺しそうな視線で俺たちをみつつ、携帯どものすごい勢いでイジっているのであった。
あの速度、あの力、もしかしてあいつってBPSとか言う名前だっけ?
翌日、学校帰りに強面親父ーズに取り囲まれた。
一人は昨日の「マフィア先生」。
一人はもっと有名な「デスメガネ」。
続いて頑迷な常識人「ガンドルフィーニ先生」。
最後に幸と影が薄い「瀬流彦先生」。
こんなに近くにいるのに存在感が希薄すぎて怖い。
アサシンのサーヴァントか?
「まちたまえ、風間君。僕はここにいるよ、いるってば!!」
「あー、瀬流彦先生。今はそんなことの話じゃなくて」
「まってください、神多良木先生!! あなたはいいでしょう、マフィア先生としての立場と名声があり存在感も満点だ! でも、今の聞いたでしょ? アサシン呼ばわりですよ、僕ぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
ずざー、と泣き崩れるせ、せ、せ、せるぴこ?先生。
さすがだ。
鑑定できる俺の意識すらかすませる存在感の無さ。
そのハイディングには恐れを感じざるえない。
「あー、風間君。いくら面白いからってあまり教師をイジらないでくれるかな?」
苦笑いとともに一歩踏み出たデスメガネ。
鑑定能力が警告を感じさせる。
3mは離れているというのに射程距離ってか。
「あーすんません。あんまりにもいい感じだったもので、ネタかと」
「ね、ネタ、そうだよねネタだよね、あははははは、風間君は洒落がきついなぁぁ!」
「すみませんでしたセルピコ先生」
「だぁぁぁぁぁ、スで間違えられたぁぁぁぁぁ!」
泣きながら走り去る男の背中という者は、なんとも魅力のないもので。
ドSな女性しか感じられない旨みに違いない。
「・・・あー、仕切り直してだな、風間風太郎君。君を面談したいのだがぁ、時間はあるかね?」
ガンドルフィーニ先生が、もうなんというか、今までの流れについていけないと言う顔で話を聞りだした。
こういう流れだったんだろうなぁ、はじめの計画では。
まぁあれだ、地味でイジりやすい人材を連れてきたのが悪い。
そういうことだ。
「して、どのような面談ですか?」
「・・・明石教授が君から色々と聞きたいと」
「同行させていただきまっす!」
ふっふっふ、おれは身に覚えのないことで流されたりしないぜ。
って、あれ、なんか気持ちよく返事してないか、俺。
「まぁ、神多良木先生の証言もあるからね。問題ないというのはわかっているんだけど、さすがに父親と一対一の面談は居心地が悪かろうと、ね?」
デスメガネ、じゃなくて高畑先生の苦笑を見て、これ以上の名目はないなと内心苦笑いの俺であった。
案内されたのは居酒屋の一室。
つうか生徒を居酒屋に連れ込むなって。
「まぁまぁ、風間君の事情も知ってるし、ね?」
復帰した瀬流彦先生の取りなしで、一応顔見知りの明石さんと面談。
堅い話はおいておいて、兄代わりの俺が麻帆良に来て空回りしているだろうから、これからもよろしくと言うものであった。
お怒りの様子はない。
邪推の空気もない、と。
ただ、明石さんってば精神魔法を使ってきてるんだよなぁ。
握手の時とか頭をなでてくれるときに遠慮なしで。
さすがに「恐怖」は送らんけど、魔法は遮断させていただきます。
「・・・ところで風太郎君」
「はい、なんですか?」
「君は、もしかして魔法使いかね?」
直球の明石さんの台詞を聞いて、強面三人集と瀬流彦先生が含んでいたビールを吹き出した。
「あ、あ、明石教授!!あなたは一体なにを!?」
「そ、そうですよ、明石教授!!」
瀬流彦先生とガンドルフィーニ先生が明石教授につかみかかり、神多良木先生と高畑先生が後始末に動く。
なんだろう、こう言うところで人間性がでるよなぁ。
色々と。
「いやね、彼に読心をかけているんだけど、全く通じないんだよ。レジストレベルが超一流なんでね、もしかしてって」
あははははっと笑う明石さんを視線に起きつつ、周囲の大人の視線が俺に集まった。
結構マジですよ、この人達。
いい大人が酒場で「魔法談義」って、どんな神経だよ。
・・・この中で魔法使いの可能性があるのは、高畑先生と瀬流彦先生か。
あとは妻子持ちだから「魔法使い」の可能性はないし。
つうかまだ二十歳にもなってないのに「魔法使い」あつかいってそりゃひどい。
あれか、ウチの娘を面倒見るなら「魔法使い」しかダメとかいうハードルがあるのか?
埼玉麻帆良魔法親父倶楽部とかあるんだろうか?
まぁとりあえず、これから先も生きていて「魔法使い」になる筈もないので否定しておこう。
「明石先生、一応まだ二十代にもなっていないので魔法使いはあり得ませんよぉ」
「「「「え?」」」」
なんだか納得していない顔の男性陣に一応説明。
童貞で30を越えると魔法使いになれるという都市伝説を。
「いやいやいや、そういう意味で明石教授は言っているわけではなくてねぇ!」
「待ってください、風間君は僕と高畑先生を魔法使い予備軍だと見てますよ!!」
「風間君、瀬流彦先生はまだしも、僕もそっちがわかい!?」
「た、高畑先生、あなたは裏切るんですかぁ!?」
「いやいやいや、そういう話ではなくてですね、瀬流彦先生」
「うらぎった、高畑先生が僕をうらぎったぁぁぁぁ!」
なんだろう、この薄い本が厚くなるような皮の展開は。
つうか最初から回してるICレコーダーの価値が鰻登りだぜ。
これを「腐」女子組合に売り渡せば巨万の富を築けるのではないだろうか?
ぐだぐだの大騒ぎの中、直球の話がどこかにそれてしまい、深夜に至るまで続く宴会の最後で明石さんをマンションまで背負って送った俺であった。
「あー、ところでゆーちゃん。なんでご在宅?」
「だって、お父さんってばそろそろ洗濯物に埋まる頃なんだもん」
いい嫁さんになるなぁ、この子。
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