―それは本当に、衝撃的な話です。冷戦下にあって、資本主義の覇権国であるアメリカと、社会主義の大国である中国は、軍事的には激しく対立しているというのが世界の常識でした。
その極秘の軍事援助に関して、いまだから話せる内容はありませんか?
本書は、私の原稿を出版する前に、CIA、FBI(連邦捜査局)、国防総省に査読してもらい、彼らが削除を要求した部分は従いました。だから私が話せるのは、本に書いてあることまでです。
一つだけ言えるとすれば、その極秘の軍事援助は、いまだに一部、継続しています。
―その事実は、アメリカのアジアの同盟国である日本政府には、伝えてあるのですか?
日本は憲法で、軍隊は持たないと宣言している。また、日本版のCIAと言える組織もない。いくら同盟国とはいえ、そのような国に教える義務はないというのが、アメリカ政府の立場です。
何より中国が、「どうか日本には秘密にしてほしい」と強く言ってきています。それに、日本政府からも正式に要請されたことはないはずです。
―そのようにアメリカが極秘で軍事援助した中国が、今や東シナ海に防空識別圏を敷き、南シナ海では次々に人工島を作って自国の領土だと主張している。こうした事実をどうお考えですか?
前世紀の'70年代、'80年代の中国は、アメリカにとって、中国語で言う「小弟弟」(可愛い弟分)でした。中国はうまくそうした役回りを演じ、アメリカから最大限の援助を勝ち取ったのです。「韜光養晦」(能力を隠して力を蓄える)が、春秋戦国時代から鄧小平が学んだ教訓でした。
だがいまや、中国は見違えるような大国になりました。'13年11月に中国が東シナ海に防空識別圏を設定したと宣言した時、そこに空軍機を飛ばして抗議すべきだと、当時のヘーゲル国防長官に進言したのは私です。
―著書のタイトルでもある、建国100周年にあたる2049年の中国は、どのような国になっていると思いますか?
単純にGDPで比較するなら、中国が順調に行けば、あと5年くらいでアメリカを超えて世界一の経済大国になります。
総合的な国力で言えば、2049年に中国がアメリカを超えている確率は、5割以上あるのではないでしょうか。その時、私は104歳。何とか長生きして、この目で確かめたいものです。
(取材・文/近藤大介)
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『China2049』
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「パンダハガー(親中派)」のひとりだった著者が、中国の軍事戦略研究の第一人者となり、親中派と袂を分かち、世界の覇権を目指す中国の長期的戦略に警鐘を鳴らすようになるまでの驚くべき記録
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『週刊現代』2015年11月21日号より
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