急成長中の外食特化メディア「Favy」に注目する理由ーー元ミクシィ顧問の平田氏が経営参加
外食特化型のグルメ情報メディア「Favy(ファビー)」は1月5日、元ミクシィ顧問の平田幸一郎が取締役として経営参画したことを公表した。平田氏はトーマツにて法定監査に従事したのちに独立、IPOコンサルティングやM&A業務に携わる人物。ミクシィではIPO時の顧問として活躍し、nanapi(現在はSupership)やランサーズ、スターフェスティバル、アソビューといったスタートアップ企業のサポートを実施している。
favy経営陣、写真向かって左が平田氏。
またfavyは同時に2015年2月のリリースから約10カ月で閲覧ユニークユーザー数が100万人を突破したことも併せて発表した。同社代表取締役の高梨巧氏によれば、facebook等のソーシャルでのリーチも含めると月間300万人の規模に拡大しており、12月時点でのfavy登録店舗数も5800店を超えたと教えてくれた。
さて、私がfavyを前回に取材したのはちょうど1年ほど前の2014年12月のことだった。当時の運営会社はマネタイズで、2015年7月にはfavyを分社化、現在はチームも15名ほどに拡大しているそうだ。なお、マネタイズはまだそのまま継続しており、20名ほどのチームで引き続き元々の業務だったマーケティング関連のコンサルティング事業を継続している。
7月に分社化して拡大したfavyチーム
favyの面白さは高梨氏の組み立てる徹底的なユーザー導線の設計とビジネスモデルだ。
実は外食に絞ってみると、キュレーションサイトというのはそこまで多くない。検索でヒットする情報はほとんどがぐるなび、食べログ、Rettyといったレストラン検索のサイトのリストか、旅やライフスタイル系のキュレーションコンテンツの一部で、favyように特化専業で運営しているメディアは実はそこまで多くない。
理由は簡単で私たちの検索行動が全て前述のレストラン検索サービスに吸い取られているからだ。
しかしその一方で見落としがちなのが雑誌的誘導になる。例えば雑誌「dancyu」や「東京カレンダー」といったグルメ・タウン情報雑誌はパラパラとザッピングすることで思わぬお店との出会いを提供してくれる。
ご当地グルメをまとめたfavyのコンテンツ
高梨氏はこの導線を生み出すために、クエリ検索ではなく、ソーシャルからの誘導を強化しているという。
「基本的にはSEOですが、ソーシャルからの流入も多くなっています。ぐるなびや食べログといったレストラン検索は今日行くレストランを探すっていう前提で使われることが多いですよね。でもfavyはアプローチが違っていて、雑誌を見て行こうかなっていう感覚に近いものを大切にしてるんです。そういう意味でソーシャルはアテンションが取りやすいプラットフォームだと思います」(高梨氏)。
例えばご当地のグルメ情報をまとめたコンテンツは、一定数のユーザーに支持されてソーシャル上で拡散がされやすいのだそうだ。こういうコンテンツは指名買いではなく、ふんわりとした気づきを与えてくれる。
では、雑誌的なアプローチがユーザーに支持されたとして、ビジネスはどうだろうか。
ここで注目したいのが店舗の獲得数だ。高梨氏によれば、favyはこの獲得に専門の営業チームも持っているという。
favyは基本的に無料で利用ができるが、課金をすると広告表示などの機能を利用することができる課金モデルになっている。さらにfavyは元々マネタイズで実施してきたメーカーのサンプリングモデルという、一種変わったビジネスモデルを持っている。この件については前回の取材で書いているのでそちらを参考にされたい。
favyは単なるキュレーションメディアを伸ばす施策だけではなく、かなり地味にこの店舗数を最初から積み上げてきた。グラフの通り、favyを分社化してから一気に伸びていることがわかるだろう。
店舗が使うCMS側、favyページ
つまり、favyのビジネスは一般的な広告モデル(PR表記の記事広告なども入っているそうだ)、店舗からの課金モデル(1万円から3万円ほどの月額課金)、さらにメーカーと登録店舗をマッチングしたマーケティングモデルの3層構造になっていることがわかる。
「来店誘導が取れるかを軸にメディアを伸ばしている」(高梨氏)というfavy。
彼らがやっているのはメディアビジネスではなく、オンラインからオフラインの店舗にいかにして誘導し、新規の売上を生み出すか、という複合的な「O2O(オンライン・ツー・オフライン)」事業と見るのが正しいのだろう。店舗が儲かれば、自然とプラットフォーム側も売りが立つことになる。
検索から口コミ、そしてソーシャルへと進化してきたレストラン検索。
飽和状態と思われがちなこの分野も、まだまだ隠れた名店を探し切るまでには到底至っていない。そう考えると彼らの第四、第五のアプローチがしっかりとワークすれば、それはそれでまた新しい市場を生み出してくれるのかもしれない。
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