1. 中国市場の拡大/日本アニメ市場への製作参入2015年、日本のアニメ業界に「中国」が大きなテーマとして浮上した。中国に対するトピックスは2点にある。ひとつは日本のアニメやキャラクターの輸出先としての“中国市場”である。もうひとつは、日本でのアニメ製作の出資、アニメーション制作の発注元の“出資者”としての中国だ。日本アニメのファンが多く、巨大な中国市場の開拓は、2000年代以降日本のアニメ関連企業の大きなテーマであった。しかし中国行政によるテレビ放送や映画上映、映像ソフト・マンガ出版の認可は厳しい締め付けもあり、なかなか大きな実績が築けなかった。この状況が大きく変わったのは、中国の動画配信事業者が正規配信のために日本アニメの公衆送信権(配信権)を獲得するようになったためである。さらにスマホアプリ化やオンラインゲーム化の権利も積極的に買い付ける。この購入金額が大きく、国内各社に大きな売上げをもたらしている。また2015年に中国で全国公開した『STAND BY MEドラえもん』は興収100億円を超え、日本の興収を上回った。あらためて中国市場の大きさを印象づけた。一方、巨額の中国マネーは配信権やゲーム化権の獲得にとどまらない。中国企業の関心は、日本のアニメそのものにも広がる。2015年は中国企業が日本アニメ製作への進出を目指すケースが増えた。スマホゲームで知られるHappy elementsは日本で開発した自社プロパティ「あんさんぶるスターズ」を日本でアニメ化する。アニメーション制作がストップした『虐殺器官』の制作を引き継ぐジェノスタジオは、中国資本の新スタジオ絵梦と制作協力するとしている。さらに『雛蜂 B・E・E』のような日本スタイルの中国産アニメが日本に進出するケースもあった。今後、日本でのアニメ製作に中国企業が加わる場面が増えそうだ。2. 動画配信広がる/Netflix上陸2015年ほど動画配信が話題になった年はないだろう。9月に米国から上陸したNetflixがサービスインしたのがきっかけだ。日本進出にあたっては、オリジナル番組の独占的な配信権獲得に投資をするとしている。このなかにアニメも含まれていることから、アニメ業界への新たな資金の出し手として注目が集まった。Amazonインスタントビデオも同様にオリジナルアニメを目指すと伝えられる。日本アニメの海外向け配信サービスのクランチロールの日本アニメへの製作出資も始まっている。配信会社はアニメ製作における新たな資金の出し手として期待され、海外資本の配信会社も存在感が増している。またNetflix先行するHuluも、アニメのラインナップを強化している。映画会社や放送局、映像ソフトメーカーが協力するbonoboもスタートした。スマホを中心にアニメを専門に配信するdアニメストアの会員数は2015年に200万人を突破。2016年は、2015年からさらに動画配信は拡大しそうだ。3. イマジカ・ロボットHD アニメ製作会社のOLMを子会社化2015年12月に、アニメ業界を驚かせるニュースが発表された。映像制作やポストプロダクション、放送チャンネルの運営などを手掛けるイマジカ・ロボット ホールディングスが、アニメーション制作大手のOLMの株式の過半数を取得、子会社化することを明らかにした。OLMは『ポケットモンスター』や『妖怪ウォッチ』の制作で知られる。近年注目を浴びるCGアニメーションでも業界トップクラスだ。利益を安定してあげるOLMだけに、今回のイマジカ・ロボットHDの傘下入りは、新たなビジネス展開に向けた攻めのものだろう。2015年にはブシロードとアニメ企画・制作の新ブランド「ISSEN」を立ち上げた。2016年には、大作映画『ルドルフとイッパイアッテナ』の公開も控える。今後OLMの動きが注目されそうだ。4. アニメ制作会社マングローブの経営破綻9月に明らかになったアニメーション制作の中堅スタジオ・マングローブの経営破綻も業界を驚かせた。中堅・中小のアニメスタジオの事業停止はいままでも少なくない。しかし、マングローブは話題の長編劇場映画『虐殺器官』を制作中、1ヵ月半後には全国公開される予定のなかであった。『虐殺器官』は2016年以降に公開を延期。アニメーション制作はフジテレビ出身のプロデューサー山本幸治氏が新設したジェノスタジオが引き継いだ。[数土直志][アニメ!アニメ!ビズ/www.animeanime.bizより転載]