「外国人枠」は、自国の選手を保護するために設ける「参入障壁」である。これを設けるということは、世界のトップリーグではないことを意味する。
サッカーのようにレベルの高いリーグが各国に存在する場合でも、外国人枠がある。サッカーの場合、世界中に人材供給源がある。金満チームは、世界各地から思うままに選手を獲得する。「外国人枠」を設けなければ、自国の選手がいない「オール外国人」のチームができてしまうのだ。議論は多いようだが、自国リーグの無国籍化を防ぎ、アイデンティティを守ろうということではないか。

NPBの「外国人枠」は、サッカーのそれとは微妙に違う。NPBの場合、格差のあるMLBからの流入を防ぎ、国内選手の試合出場機会を守るという目的が大きい。

NPBとMLBの選手層は模式図にするとこうなっている。

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MLBは1950年以降、市場とともにすそ野を拡大した。これによってトップリーグがエクスパンションしても、レベルを下げることなく選手を供給することができた。
このためにMLBでは、トップリーグに次ぐ選手の層が非常に厚い。
MLBではメジャー・リーガーとマイナー・リーガーの年俸は天と地ほどの差がある。メジャー・リーガーが、アメリカのセレブの仲間入りができるほどの年俸をもらっているのに対し、実力的に大差がないマイナーの上位選手は一般のサラリーマンよりも収入が低い。

これに対し、市場を広げてこなかったNPBの選手数はMLBの5分の一程度。一握りのトップクラスは、MLBでも通用するが、大半はそれ以下のクラスだ。
しかし、年俸で見ればNPBの中堅クラスの選手は、実力的に同程度と思われるMLB未満の選手よりもはるかに恵まれた境遇にいる。

「外国人枠」が撤廃されると、このクラスの選手が外国人に置き換わる可能性が高い。年俸が安くて、能力的に同程度の外国人選手が日本人選手のポジションを奪うのではないか。

トップクラスの選手は、NPBとMLBの経済格差が解消されない限り、移籍するとは考えにくい。何人かの大物は移籍するだろうが、スター選手の移籍は限定的なものにとどまるだろう。
むしろ中堅以下の選手の流動性が高まると考えられる。彼らの中には、ヤクルトのバーネットのようにNPBで力をつけてMLBに復帰する選手もいるだろう。

これは今の日本の産業構造の縮図のようなものである。これまで日本は、高価な国産品が、安価な外国製品に置き換わるのを防ぐために関税障壁を設けていたが、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)によって、この障壁が撤廃されつつある。
「外国人枠」の撤廃は、これと同じ図式である。

死活問題だから、NPBの選手はこの事態を看過しないだろう。「外国人枠」を撤廃するのなら、日本人選手のアメリカなど他国への移籍を容認してほしいと要求すると思われる。
そうでなければ、日本人選手は活躍の場を奪われ、ひいては国内の野球に衰退につながりかねない。非対称なままでの人材の流動化はあり得ない。

結局、外国人選手枠の撤廃は、NPBの選手の流動性を高め、ひいては国際化への流れを加速する。

この状況になれば、NPBは経済格差を埋めて、ビジネス的に拡大しなければ、MLBのマイナーリーグと化する。
石原豊一さんの著書によれば、かつてメキシコは、国内リーグが人気を誇っていた。一時期はメキシコ出身のMLB選手をメキシカン・リーグに引き戻すこともあったようだが、MLBの国際化、経済的な拡大によって衰退した。メキシカン・リーグは今、MLBのAAAの扱いになっている。



日本もそうなりかねない。外国人枠の撤廃には賛成だが、同時にNPBがビジネス的な大改革をしない限り、将来はないと思う。


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