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ニートだけどやってみた

高知のニートが人生を変えるために色々やってみるブログ

全員生きたまま手足を切断され、燃え盛る薪の山の中へ一人ずつ順番に投げ込まれた。【書評】不可触民(山際素男)

読書

昔、資格試験の勉強をしていたときに「どうすれば自分を甘やかさずにいられるか」でかなり悩まされまして、そのとき「とてつもなく厳しい世界を知れば自分がいかに甘えたこと言ってるかわかるだろ」と思って読んだ本があります。今回は『不可触民(山際素男)』を紹介します。

 
『不可触民(山際素男)』

matome.naver.jp

不可触民 - Wikipedia

 

1980年頃に初版の本なので30年以上前の内容です。

現在のインドとは若干事情が異なっているかもしれません。

 

全員生きたまま手足を切断され、燃え盛る薪の山の中へ一人ずつ順番に投げ込まれた。もがき苦しみ転げ落ちる者は、すぐ炎の中に放り込まれた。火を消そうとしたものは即座に撃たれた。自分の家が焼かれるのをただ眺めるしかなかった。

自分に置き換えて考えてみてください。何の落ち度もないのに、ある日突然近所の人々が自分の家に放火してくるのです。そして燃え盛る家の火を消すことも許されず、ただただ自分の家が灰になってゆくのを見なければならないのです。こんなつらいことがありますか?

 

物陰から数人がいきなり飛びかかってきた。殴る蹴るのひどい乱暴をじっとこらえた。抵抗するとかえって危ない。しかし、無抵抗の私の首にロープを巻きつけ、そばの木に吊るそうとしている。このままでは殺される。その時初めて気づいた。初めから私を殺す気だったのだと。でも、犯人は翌日全員釈放です。

ある朝、何百人というギャングが襲撃し、住民を手当たり次第殺した。手足、首を切断し、腹を引き裂き、臓物を引き出し、目玉をくり抜く。片っ端から強姦。外へ逃げようとするものは武装「警官」が狙い撃ちした。

インドにおいてはもはや警察すら頼りにできないのです。不可触民の人々は警官にさえも「守るべき対象に値しない」と認識されてしまっているのです。相手が武器を持って襲い掛かってくるのに、自分たちは武器を持たない不可触民同士でしか助け合えないのです。勝ち目など最初からないわけです。絶望しかありません。

 

飲料水が200m以内にある「幸運」な人々はわずか20%しかいない。

水を自分で汲んで飲むことを許されず、友人が汲んでくれる水を口を開けて受けた。食堂では一人だけ別の席に座らされ、食器も別のものをあてがわれた。生活は一層苦しくなり、一食を抜くことすら度々あった。極力、食費を節約して本を買ったのです。毎晩、牛が垂れる小便や糞の音と臭いに悩まされ、悔し涙にくれたものです。

これは、不可触民階級であるにもかかわらず、文字通り死に物狂いの努力で銀行員の地位にまで上り詰めた数少ない成功者の方の言葉です。今でもインドはITの世界で突出した才能を生み出していますが、その理由はここに挙げたような強烈なハングリー精神にあるのでしょう(ITの世界は比較的新しい分野なのでカーストの縛りがゆるいので、才能ある低カースト層の若者が殺到するのです)しかも彼らの給料は日本人の1/10程度です。さらに彼らは英語も準公用語のネイティブスピーカーでもあります。日本人が逆立ちしても勝てるわけがありません。

 

不可触民の中でも最も卑しめられている清掃や糞尿処理の職業は代々世襲なのです。(中略)私たちは死んだ獣の肉を無理やり食べさせられてきました。時には腐肉までもです。

一日1食以上食べられる場合ですら、それは許されない。朝1杯の茶、チャパティ1枚の昼食、夜はまた茶だけという極貧そのものの生活。食事らしい食事など週一度あるかないか。その一度にしてもチャパティと野菜汁。もしわずかでも甘いモノがついていたら皆、声をあげて喜んだ。 

食事まで監視されているためまともに食べることなど許されていない。彼らは一体何を楽しみに生きていけばよいのでしょうか。絶望的な差別が存在しているのです。

 

道端の石を蹴飛ばすように男を殴り、一杯のコーヒーを楽しむように女を犯す。

(奴らは)娘の陰部に鉄火箸を突っ込んだのだ。恐ろしい悲鳴をあげて気を失った。今でも娘は病人で、人相も何も変わってしまった。一生嫁にも行けない身体にされてしまった。どうしてたったの(日本円換算で)15円で、こんな目にあわなければならないのか。

想像するだけでもゾッとします。なぜこんなことが現実世界で起きているのでしょうか。悲しいことに30年経過したインドでは今だに女性の地位は低く、外にしかトイレがないような場所ではレイプが発生しています。それも一人の女性に対して複数の男性が襲い掛かってくるのです。彼女たちの心の傷は一生癒やされないでしょう。なぜこんなにも卑劣な行為が黙認されているのか。考えるだけでも腸が煮えくり返る思いです。レイプ犯は全員二度とそのような行為ができないようにペニスを切断した上で両目も潰してやればいい。それくらいやらなければ馬鹿につける薬などないのですから。

 

ここまででも相当過激な描写だったかと思いますが、本書のなかでは他にもゴキブリを使った拷問の方法など残忍極まりない話が次々と述べられています。覚悟してお読みください。

不可触民―もうひとつのインド (知恵の森文庫)

不可触民―もうひとつのインド (知恵の森文庫)