最近の日本経済をめぐっては失敗・成功と意見が分かれているが、一つはっきりしていることがある。20年にわたり長期不況に陥っていた日本が、再び夢見る活力を取り戻しているということだ。日本の機械部品輸出会社と長年取引してきた知人は「特に、日本の若い社員の目に輝きが戻っているのは確か」と語った。
こうした現象は、日本の随所ではっきりと確認できる。最近放映された『下町ロケット』のブームも、その一つだ。日曜深夜のテレビドラマにもかかわらず、視聴率は20%を超えた。技術力は優れているのに規模は取るに足らない、下町の中小企業の社長とエンジニアが、自国産の新型ロケットの中心パーツを作る中であらゆる陰謀と逆境を克服していく-というストーリーだ。「不可能な夢はない。切に願えば必ず実現する」という筋書きに、大衆は熱狂した。「下町」は、夢と正義を抱く小市民・弱者の象徴でもある。
操業123年のゼネコン、大林組の驚くような実績発表も話題になった。世界的な建設不況にもかかわらず、大林組の今年の予想営業利益は昨年比50%増の750億円。歴代最高だ。大林組は「ばかばかしい夢」を見る会社としても有名だ。その夢とは、軌道エレベーター施工プロジェクト。2050年までに、地表から9万6000キロの高さまでケーブルをつないでエレベーターを往復させたい、というものだ。プロジェクトのチーム長の主な仕事は、小学校を回って子どもたちに宇宙エレベーターについて説明し、宇宙への夢を植え付けることだという。今の子どもたちが、この先35年かけて進められる夢の主役になるはずだからだ。
昨年11月、日本初のジェット旅客機MRJがテスト飛行に成功すると、日本の各メディアは、『下町ロケット』にも出てくる中小企業で復活しつつある航空・宇宙への夢に関するニュースや、MRJが次の世代に届けてくれる未来を語るニュースを量産した。まだ小型の90人乗り旅客機にすぎないが、これを手始めに、より大きな夢を実現していくという社会の雰囲気をつくり上げたい-ということのように見える。