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【論文不正】
韓国・台湾で論文大量撤回 査読システムを乗っ取り 著者自身が審査する新たな手口
またエジプトの出版大手ヒンダウィでは、編集者自身が査読の不正に関与する事態も生じている。
オンラインシステムを悪用
不正がはびこる背景には、編集作業のオンライン化がある。ほとんどの編集者は今日、査読者との連絡手段に電子メールを使っている。研究機関の所在地宛てに出す郵便物とは異なり、相手が偽者でもメールは届く。連絡先が中国で取得されたメールアドレスになっているのに、所属機関が中国国内ではなかったため編集者が疑念を抱き、不正が発覚した例もある。
学術誌の編集を外部の大学教授などに委託することも多く、作業を効率化するため簡単に専門家を検索し査読を依頼できるオンラインシステムを多くの出版社が利用している。台湾の研究者による不正は、このシステムを悪用して起きたという。オンライン化は実在しない偽の査読者をつかまされる危険が高まるということだ。
シュプリンガーは15年8月、10の学術誌で計64本の論文を撤回すると発表した。同社のウィリアム・カーティス副社長は取材に対し「査読者の身分確認の徹底が重要」との認識を示した。
カーティス氏は今後の再発防止策について「外部編集者に問題の重要性を認識させ、査読者の入念なチェックを支援している。編集委員による査読資格のチェックも強化しており、推薦査読者について研究機関のメールアドレスやスコーパス(世界的な文献データベース)のIDを要求している」と明らかにした。