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【論文不正】韓国・台湾で論文大量撤回 査読システムを乗っ取り 著者自身が審査する新たな手口

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【論文不正】
韓国・台湾で論文大量撤回 査読システムを乗っ取り 著者自身が審査する新たな手口

 不正の手口は単純ともいえる。この科学者は、ネット上で誰でも取得できるメールアドレスを使って架空の専門家を偽装。論文を投稿する際、推薦する査読者の連絡先としてこのアドレスを学術誌側に提示した。編集者は偽の専門家とは知らずに査読依頼を送信。自分の論文に悪い点をつけるはずはなく、好意的な査読コメントが返信され論文は“合格”した。

アジアで相次ぐ大量撤回

 査読の「ハイジャック」ともいえるこうした不正はアジアの研究者に多いとされ、ほかにも複数報告されている。13年には台湾の屏東教育大の副教授だった男性が英セージ・パブリケーションズの学術誌に投稿した論文で不正が発覚、60本が撤回された。

 このケースでは、130個ものメールアドレスが不正目的で作成されていた。査読の依頼は副教授やその仲間に送信され、論文は次々に受理された。撤回された論文の一部には、台湾の蒋偉寧教育部長(文部科学相に相当)も共著者として名を連ねていた。大きなスキャンダルとなり、同氏は14年7月に辞任を表明した。

悪質な営利事業に発展

 査読システムの乗っ取りは悪質な営利事業にも発展した。科学者の論文作成を支援する業者が、投稿段階になると好意的な査読コメントを著者に販売、査読詐欺を行うというものだ。独出版大手のシュプリンガーグループで、生命科学分野の学術誌を発行するバイオメド・セントラルなどが14年に報告した。学術出版の指針などをまとめる国際機関の出版倫理委員会(COPE)はウェブ上で出版社に対し、早急に対策を取るよう注意喚起した。

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