サウジ、著名シーア派聖職者ら47人を処刑
サウジアラビアは2日、著名なシーア派の聖職者ニムル師ら47人を処刑した。これを受けて反体制派の多い東部州で抗議デモが行われたほか、中東各地で激しい非難の声が上がっている。
内務省はテロへの関与で有罪判決を受けた47人が全国で処刑されたと発表した。1日の間に処刑された人数としては1980年以降最多となった。
ニムル師は2011年にサウジ東部での反政府デモで重要な役割を果たした。差別の撤廃を求めるシーア派のデモへの支持を表明したり、スンニ派の支配層を激しく批判したりしたことでシーア派住民の注目を集めた。
中東のシーア派はニムル師の処刑を強く批判した。イランの国営通信は外務省報道官が、処刑が「サウジ政府の深刻なまでの非合理性と無責任さを証明したにすぎない」と述べたと報じた。イランはニムル師の死刑が執行されれば「サウジアラビアは大きな犠牲を払うことになる」と警告していた。イラン政府は死刑執行に抗議するため、テヘラン駐在のサウジ臨時代理大使を呼び出した。
レバノンのシーア派武装組織ヒズボラはニムル師の処刑を「政権の汚点」と評した。イランを支持するマリキ・イラク前首相は「サウジ政権が倒れる」と述べた。
一方、バーレーンやアラブ首長国連邦(UAE)などサウジと協力関係にあるペルシャ湾岸のアラブ諸国は「テロに立ち向かうため」としてサウジの対応を支持した。
ニムル師を除く46人のほとんどがスンニ派で、半数以上が2003年から2006年までの国際テロ組織アルカイダによるサウジの不安定化を狙ったテロへの関与で処刑された。
人権団体も処刑を非難した。サウジでは聖地メッカのグランドモスクを一時的に占拠した63人を1980年に処刑しており、今回の処刑はこれに次ぐ規模となった。
ヒューマン・ライツ・ウォッチの中東ディレクター、サラ・リー・ウィットソン氏は今回の処刑によってサウジ国内で宗派間の緊張が高まりかねないと指摘した。
アラブとイランの関係もさらに緊張する可能性もある。両国はイエメンで代理戦争を戦っており、昨年3月以降、サウジが主導する連合軍がイランの支援を受けた武装組織フーシ派に対して空爆を実施している。
サウジ内務省の報道官は記者会見で、死刑囚は医師の立会いの下で別々に処刑されたことを明らかにした。記者会見の様子はテレビで放映された。8つの地域で斬首による処刑が、残り4つの地域では銃殺による処刑が行われた。
サウジが昨年行った処刑は150人を超えた。死刑を監視する組織によると、この数字はここ20年で最多だという。
人権団体アムネスティ・インターナショナルは先に、数十人の死刑執行を同日に行うとしたサウジ政府の決定について「サウジにとって言語道断のレベルへの転落」と指摘した。
サウジではここ数週間、国営や民間のメディアがこの10年間に起きたアルカイダによるテロ攻撃や政府の対応に関するドキュメンタリー番組を放送していた。処刑に対し国民に心の準備をさせるための取り組みだったとみられる。