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今日の社説

2016/01/03 02:23

北陸新幹線延伸 京都駅経由を3県の目標に

 北陸新幹線の敦賀以西ルートの調査費などとして、国土交通省が概算要求していた8億4500万円が満額計上された。

 国交省が行う調査は、「若狭(小浜)ルート」「湖西ルート」「米原ルート」、さらに小浜付近から京都駅に乗り入れる「小浜・京都ルート」の4案のうち、どの案を選ぶか見極める際の重要な基礎資料になるだろう。

 どのルートにも短所と長所があり、地元自治体の思惑も違う。需要予測や採算性、時間短縮効果などを比較検討し、北陸にとって最良の道を選ばねばならない。

 与党検討委員会は今年5月末までにルートを確定させる方針だが、本格的な選考作業の前に、今から始めてほしいことがある。北陸3県が「京都駅経由」という一つの目標を掲げ、共同歩調を取ることだ。どのルートを選ぶにせよ、京都駅につなぐ案を推すという1点でスクラムを組むのである。

◇「大深度地下」で直結

 約150万人の人口を抱え、年間約5千万人の観光客が訪れる京都が沿線に加われば、旅客需要は大幅に伸びる。新大阪までの同時着工が難しいなら当面は京都までの開業を視野に入れてもいい。

 福井県が推す若狭ルートは、新幹線整備計画に明記された「公式ルート」だが、建設区間が最長で、費用も割高になる。新大阪まで大都市を通らないため、経済効果も最も小さい。

 その点、JR西日本から出た「小浜・京都ルート」は、小浜付近から人口約9万人の京都府亀岡市ではなく、京都市に通すもので、若狭ルートを一部手直し、「弱点」を補強した案といえる。

 2001年施行の法律で地下40メートル以上の大深度地下の利用が可能になった。京都駅に直結させるには、ルートの一部を地下に通す必要があり、京都駅の真下に北陸新幹線駅が設置できれば、東海道新幹線への乗り継ぎもスムーズになる。旅客需要や経済効果は若狭ルートをはるかに上回るだろう。

 問題は建設区間が若狭ルートに比べて長くなり、費用もかさむことだ。大深度トンネルの工費がどの程度になるかが焦点となろう。

 京都駅への乗り入れという点では、湖西ルートも有力な候補だ。琵琶湖の西岸に沿って走るJR湖西線は、特急「サンダーバード」が1日20往復以上も運行する関西と北陸をつなぐ大動脈である。

 若狭ルートより建設区間が短く、費用も安いが、やっかいなのは比叡山や比良山から吹き下ろす冬場の強風だ。JR西日本は防風柵を設置済みだが、台風並みの風で年間20回近く列車が止まる年もあり、過去には脱線事故も起きている。万全の風対策は可能なのか精査する必要があろう。

 また、仮に湖西ルートとなれば、湖西線はJRから経営分離される並行在来線となる。滋賀県の同意を得るのは容易ではあるまい。

◇「米原止まり」の危険

 残る米原ルートは、関西広域連合が推しており、滋賀県の三日月大造知事も支持を明言している。石川県議会は昨年、米原ルートの早期実現を求める決議をしたが、福井県議会から「唐突で独断的」と抗議を受けた。建設区間や開業までの期間が最も短く、費用対効果も高い、などの点で優位に立っている。

 だが、JR東海は過密ダイヤを理由に北陸新幹線が割って入ることに反対しており、現時点では米原での乗り換えが必要になる。乗り入れが確約されるなら別だが、今のままでは北陸新幹線は事実上、米原止まりになってしまわないか。京都駅通過はもとより、新大阪延伸も見通せなくなり、災害時に東海道新幹線の代替補完機能を果たすことも難しくなる。

 「京都駅につながれば、誘客のインパクトは大きい」(谷本正憲知事)。「京都を経て、大阪につながるのが望ましい」(石井隆一富山県知事)。「(小浜・京都ルートは)正式に出てくれば検討する必要がある」(西川一誠福井知事)。各知事の発言を聞く限り、京都駅通過で歩み寄る余地は十分にあるのではないか。

 与党検討委員会の西田昌司委員長(京都府選出)は、京都駅通過をルート決定の条件に上げている。北陸3県がまとまれば、京都府との共闘も可能だ。全ルートを自社で運行したいJR西日本の同意も得られるだろう。京都駅通過で意見集約する時期ではないか。