1.まずは背景をもう一度整理 さて、それでは背景を再整理してみましょう。
まず、私が自転車に対して危険だと感じた継手工が設置されていた橋梁ですが、これは
国道45号の鳴瀬大橋です。 国道45号は、仙台・松島〜石巻・三陸海岸方面をつなぐ動脈路線です。
普段から交通量が多い上に、現在は東日本大震災で大きな被害があった海岸部の復興工事のため、平日には大型トラックなどが行き交うなど、工事の資材運搬や流通のための重要路線としても機能しています。
という道路なので、自転車で走るにも、非常にわかりやすくて都合が良い道なのですが・・・(以下、画像は後日撮影)。

国道45号 鳴瀬大橋
ここに自走で差し掛かった訳なのだが・・・。
鳴瀬大橋は、吉田川と鳴瀬川が、河口で合流する直前、並走して流れている場所にかけられており、松島方面から来た場合、最初に吉田川を渡る小スパン区間を超えたのちに、鳴瀬川上に架かる長スパンの床版区間に入る形になります。
この、鳴瀬川上の床版区間に入るところに、これがありました。

問題の継手工。
引きで見た段階で、
危険な気配を感じる人も多いとおもう。

近づくと、こうなっている。
トラブルのあった当日は、
ある程度近づいてから
危険性に気付いたが、
遅かった。
パンクして停車した直後には、今思えば、自分も不注意なところはあったと思いますが、それにしても、これはないだろう、と言いたくなったのを覚えています(^^;)。
鋭角のV字というか、W字というか、そんな形状の勘合部がびっしりと並んだ金属版の部材で、進行方向のスパンは、金属板部分だけでも1m程あります。
ニードル状の部分だけで、長さは30〜40cm程度。
勘合部に開いている隙間は、最も広い場所(反対側の勘合の先端がある位置付近)は10cm程度はあるでしょうか。
また、進行方向側を見てみると、ニードル状の部分の先端から、反対側の勘合部の端までは、約30cmほどの空隙があり、おそらく、一般的な700Cタイヤの接地面は、この幅の中に収まってしまうと思われます。
一般的なロードバイクのタイヤ幅が20〜25mmくらいだと考えると、ここに車輪を落とさずに通れる人は、まずいないのではないかと思います。

交通量が多い道路なので、
対比物を置いた撮影ができなかった。
車が切れた隙に、
足を置いて素早く撮影した一枚。
(画像右下に足がある)

とりあえず、サイズ感は、
白線幅が15〜20cmであることから、
感じ取っていただくのが良いだろうか。
自分がやらかしてしまって悔しい・・・という理由もありましたが、何より、この構造物がそのまま、自転車で通る人には危険であると思われた(多分、ママチャリやMTBのタイヤでも隙間に落ちると思われるとともに、ニードル部にリムをぶつけたらホイールが破損すると思われる)ので、とにかく、この構造物の危険性を道路管理者に理解いただかないと駄目だろう、と考えて、監督官庁に意見を送ることにしました。
国道45号の宮城県内の区間は、国土交通省の仙台河川国道事務所の管理区間になっているようです。
仙台河川国道事務所のホームページには、最上部に「お問い合わせ」というリンクが設置されており、そこから質問や意見を送れるようなので、簡単なアンケートに答えた上で、
・国道45号 鳴瀬大橋の継手に、自転車には危険な構造物がある。
・継手の隙間が大きく、車輪を取られると転倒が誘発される。
・当面の対応として、危険性を周知するような対策をお願いしたい。
・可能であれば、今後、自転車の走行にも配慮した構造部材の採用を心がけていただきたい。 といった趣旨の意見をお送りさせていただきました。
2.一応解説、橋梁の継手工について さて、ここまで見てきて、そもそも論として「何で橋の上に、こんな隙間が作られているんだ?」という疑問を持った方も多いと思いますので、一応、私が土木系に詳しい人から聞いた付け焼刃知識をもとに、解説してみます。
橋梁(つまり橋)は、両岸に設置される「橋台」と、川の中などに設置される「橋脚」の間に、「床版」という板状の部材を乗せるのが基本構造です。
この「床版」は、鉄骨だったりコンクリートだったり、様々な材料によって作られていますが、温度によって伸び縮みしたり、大型車の通行などによってバネのようにたわんだりします。
継手の部分にある隙間は、この、温度の変化による伸縮や、衝撃や過重による変動に対応するため、余裕幅として見込まれているものです。
つまり、この橋を作った時の気温などの条件そのままに、余裕のない、ぴったりの構造物として作ってしまうと、温度変化で伸びたり、縮んだりした時に、床版が膨張できずに割れたり、縮んだ分、長さが足りなくなって落橋したりする危険性があります。
これを避けるために、伸縮する分の余裕幅を見た隙間が、継手の部分にある隙間ということになります。
ゆえに、継手の隙間は、橋梁を安全な状態に保つために必要なものであり、採寸を間違えて誤魔化すために作られているものではありません。
逆に、これがない橋は床版だけでなく、橋脚や橋台にも余裕がなく、破損しやすい危険な構造になってしまうのです。
というわけで、継手の部分には、ある程度の隙間が設けられるのと同時に、伸縮時に部材の長さに変化が生じても飲み込めるように、ギザギザの勘合部分が設置されます。
この勘合部には、余裕幅としてみる広さや、設置条件に応じて、いろいろな形状の構造材料が設けられるため、各橋梁ごとに異なる形の継手構造になっているようです。
そんな訳で、この橋梁の継手については、これがなければ、構造物の安全性が保てない、必須の構造であるということを、まず理解する必要があります。
3.意見に対する反応など さて、意見を送らせていただいてから数日後、「返信を希望」にチェックを入れておいたため、担当部署から返信をいただくことができました。
その返信の内容によれば、私が指摘した形状のジョイントは、鳴瀬大橋には2箇所、設置されていること。
材料の選定の際には、耐久性、自動車の走行性、止水性等の観点で優れていることから、この形状の材料を選定したことについて、解説をいただきました。
ただし、私の受けた印象では、ロードバイクの車輪がとられて危険であることは、想定外であったように思われました。
とにかく、早急の対応として、注意を呼びかける看板等を設置し、今後、同様の事象が起きないように、何らかの対策を考えていく、ということで、回答をいただきました。
そして、その回答をいただいて、初めての週末となる本日、現場を訪れてみたところ・・・。

両岸に、既に注意喚起の看板があった。
対応が早い!
これは本当にありがたい!
素直に驚いたとともに、意見を取り入れていただいたことに、ありがたいという思いになりました。
まあ、看板の設置位置などに、もう少し工夫が欲しいと思われる場所もありましたが、そこはまた別の話。
まずはこのジョイントが自転車にとって危険な構造物であることを認識いただけたことが、大きいと思います。
なお、この鳴瀬大橋に設置されている継手は、国土交通省の担当部署の説明によれば、KMAジョイントという製品のようです。
この情報をもとに調べてみたところ、
この製品は国土交通省のNETIS(新技術情報システム)にも登録されていました。 この話を、土木系に明るい人に聞いてみたところ・・・。
NETISに登録されるということは、この構造部材は非常に優秀な構造部材である事は間違いなく、今後も全国的に、採用される事例は増えるのではないか、とのことです。
なお、NETISの登録には、かなり厳正な審査がある(国交省がお墨付きを付けるわけだから、そんなに簡単な物ではない)との事ですから、実際、これは優秀な製品なのでしょう。
(NETISの資料を見るだけでも、構造の単純化で製造コスト、工事の施工のコスト縮減に寄与し、施工性が良い上に汎用性、耐久性も高いという、非常に高い評価になっていることがわかる)
そして、NETISに登録されているということは、今後、同様の製品が全国の橋梁で使用される可能性も高いと考えて良いでしょう。
実際、従来製品よりも低コストで高い効果があるならば、この構造物を採用する理由としては十分なわけですからね・・・。
かといって、このまま採用事例が増え続けても、それはそれで困る部分もあるわけなので・・・。
毎回、橋を通るたびに、危険な継手がないかどうか、ビクビクしながら走ったり、危険回避のために急な挙動をしたりするのは、さらに危険なことでもありますしね・・・。
最近は随分変わってきたとはいえ、道路・橋梁などを設計する場合には、どうしても車道は自動車の走行時の安全性が意識されるとのことで、(これは私の想像ですが)自転車の走行時の危険性などについては、まだ対応として不十分なところも多くあるのが実態なのかもしれません。
今回、意見に対する返信の中にあったニュアンスからも、自転車の走行時の危険性については、私の意見によって認識したような感じも見受けられました。
もしかすると、国交省の中でも、自転車で車道を走る時に感じる、構造の危険性などに関しては、それほどノウハウを持っている訳ではないのかもしれません。
気付いた時に、少しずつ、自転車乗りの立場から見た危険な構造物と、安全対策の案について、道路管理者や監督官庁の担当部署に意見等を送り、
「自転車乗りの立場から見た安全な道路構造、形状」について、認識を深めていただくのが、最も良い方法なのではないかと思います。
まあ、
このKMAジョイントに関しては、自転車が通る部分(車道の両端、50cm程度の幅)だけでも良いので、上にカバープレートを装着していただくだけでも、安全性が格段に高くなると思うのですが・・・。
(と、考えを文字にするのは簡単だけど、形にするには、そういう構造に改修が可能かどうか、メーカーの皆様はじめ、多くの方々に検証していただかないといけないけれどね・・・)
4.最後に、意見をお送りする場合の注意点 さて、それでは最後に、実際に意見を送ってみよう、という場合の注意点について・・・。
当然のことですが、道路にはそれぞれ、道路管理者がいますので、その管理者宛に意見を送る必要があります。
まあ、国道なら国土交通省の出先機関、県道なら県の土木事務所、市道なら市の出張所など、それぞれの管理者宛に送るのが最も良いと思います。
なお、行政の縦割り構造は、自治体ごとに違っていたり、色々特殊な場合もあるかと思います。
国道の場合、国土交通省のサイトに「
道の相談室」が設置されているので、そこに投稿するのも良いでしょう。
また、県道や市道の場合、県庁や市役所の代表電話にとりあえず電話で問い合わせるか、自治体ごとに設置されている相談窓口などに意見を送るのも良いかもしれません。
とにかく、何らかの形で、
「私が自転車で走る時、ここに危険を感じている」という事を伝えるようにすることが、まず第一だと思います。
なお、意見を送る場合ですが、当然ながら、受ける相手も生身の人間ですので、頭ごなしに非難するような物言いは厳に避けるべきです。
最近は、とにかく公務員の皆様に対して、頭ごなしに怒鳴りつけたり、無理難題を押し付けたりする人が多いようですが、同じことを自分がやられたらどう感じるかを考えたら、それが改善に繋げてほしい意見を伝える時に有効な手段ではありえない事など、わざわざ注意するまでもないことだとは思いますがね・・・。
自転車の車道走行は、道路交通法では当たり前の規定ではありますが、まだまだ、一般の皆様の間にまで浸透している認識であるとは言えない部分が多くあります。
小さなことでも、自分達が考えている事を意見としてお伝えし、いろいろなノウハウを蓄積していくことで、より良い交通体系作りに貢献できるように、声を上げて行くこと自体は、必要な事だと思います。
ただし、返信の内容などをあげつらって炎上させる、などという事は、絶対にしてはいけません!
意見投稿の場は、直接、声を届けられる場所として非常に貴重な場です。
せっかく設けられているそれが閉ざされてしまった場合、危険性の高い道路があっても、誰にも改善要求を伝えられず、危険がそのまま残置される可能性もありますから、
あくまでも、建設的な意見の伝達と議論のための場として活用するようにしましょう。
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