トップ > 千葉 > 記事一覧 > 1月の記事一覧 > 記事
【千葉】大人って…<第1部> わたしたちが選ぶ (2)有権者の芽生え
ほろ苦い「初当選」だった。「小学生の質問に答えられなかったのは、準備不足だね」。淑徳大学コミュニティ政策学部四年の木村有花(ゆか)さん(22)=佐倉市=は昨年一月、食卓で聞いた父で千葉英和高(八千代市)の教頭を務める次郎さん(58)のひと言を、今も覚えている。 有花さんは同月、母校の佐倉市立白銀(しろがね)小であった県知事選の模擬選挙に、候補の一人として参加。「学校で週に一度、興味あることを好きなだけ学べる日をつくります」。次郎さんら地元住民も見守るなか、児童が関心を持ちやすい政策を訴え、当選した。 だが、小学六年の「有権者」たちは、事前に県の課題をいろいろ調べていた。「福島の原発事故の県内への影響に、どう対応しますか?」「大きな自然災害に備える対策は?」。答えに詰まる場面もあった。「小学生を甘く見ちゃいけないと、反省しました」。児童たちが投票後に「大人になったら選挙に行く」「帰ったら親に話したい」と言ってくれ、少し救われた。 有花さんは、大学ゼミで若者の政治意識を研究。これまで社会人らと若者の投票率を上げる方法を話し合ったり、昨年の千葉市議選でボランティアのウグイス嬢をやったりした。しかし、フェイスブックで選挙の話題を発信しても、友人たちの反応は芳しくない。「関心ある若者が少ないのは、肌で感じる」 選挙権年齢が「十八歳以上」に引き下がるのを控え、県内でも模擬投票を行う高校が増えている。有花さんが高校三年の時は、オーケストラの部活動に熱中し、選挙や政治についてあまり考えなかった。「なじみがないと、興味も持てない。小中学時代から政治を意識する体験が必要」。昨年、大学ゼミと選挙管理委員会が協力し、白銀小と八街市立二州(にしゅう)小で模擬選挙を実施した。 見学した次郎さんは「小学生が選挙や社会の仕組みを体験するのは良い」と感じた。高三は、部活の大会や受験勉強に追われる生徒も少なくない。「政治に関心を示す余裕を、普通ならなかなか持てない。だが選挙権を得ることは、政治への責任を担うこと」 今年から千葉英和高で選挙権年齢の引き下げなどをどう教えるか、悩んでいる。若者が政治に目を向けるには、どうしたらいいだろう。気が付けば、親子で同じ課題を考えている。 有花さんたちのゼミで指導する淑徳大准教授の矢尾板俊平さん(36)は「十代が政治や選挙に興味を持つには、学校教育のほか、家庭環境も大切」と指摘する。 家庭で選挙が話題になると、若者が投票に行く傾向が高いとのデータもある。 横浜市選管によると、過去の市議選などで有権者の投票参加状況を調べて分析したところ、家族、友人、知人といった身近な人と選挙を話し合った二十代のうち、約七割が実際に投票。話し合っていない二十代よりも投票に行く傾向が高いことが分かった。 「テレビを見ながら、政治について親子でちょっとした会話をするだけでもいいんです」(矢尾板さん)。難しい議論をしたり、親が子に政治ニュースを解説しなければ、と気負う必要はない。十代が有権者として育つ場は、家庭にだってある。(中山岳) PR情報
|