だが、中国経済の悪化は、日本としても「対岸の火事」では済まされない。
まず気になるのは、「爆買い」で話題を呼んでいる中国人観光客の動向だ。
日本政府観光局によれば、今年1月から9月までの中国人観光客数は383万人を超え、前年比214%と、他国・地域に較べてトップだ。しかも、同局の訪日外国人消費動向調査(7~9月)によれば、中国人一人当たりの日本国内での平均消費額は、約21万6000円とダントツなのだ。
こうした中国人の「爆買い」によって、デパートや家電量販店、ドラッグストアなどが大いに潤っているのは、周知の通り。例えば、三越銀座店の今年1月から9月までの免税品の売り上げは、前年同期比で3・5倍にも伸びている。
「『爆買い』効果でウハウハできるのは、せいぜい今年いっぱいまでと考えておくべきです。これから中国経済の悪化が進むことを思えば、中国人観光客が急減することはないにしても、『並買い』に変わるでしょう」(北京の日本大使館関係者)
さらに、中国経済の悪化による、中国へ進出している日本企業への影響も、気になるところだ。現地の日本企業の親睦団体である中国日本商会によれば、約2万3000社の日本企業が中国へ進出し、約1000万人もの中国人を雇用している。
中国に進出している日本企業の研究が専門のRFSマネジメント・チーフエコノミストの田代秀敏氏が解説する。
「中国経済が悪化した時の影響として、訪日中国人の『爆買い』減少もたしかに問題ですが、最も深刻な影響を受けるのは、日本の自動車産業です。
中国の自動車販売が減少傾向にある中、日本企業は今年1~8月に、前年同期比5・9%増の199万台と販売を伸ばしています。特にホンダと日産は、日本国内より多く中国で販売している。中国での販売が半減すれば経営危機に陥るでしょう。
他には、現時点で中国の景気減速を受け、来年3月期の利益予想を下方修正しているアドバンテスト、オムロン、キヤノン、東芝機械、日本精工、日立建機なども、大きな影響を受けるでしょう」
前出の北京の日本大使館関係者も、警告を発する。
「最悪の場合、今後2年以内に、中国発の恐慌が起こる可能性があります。日本はいまから、その事態に備えておくべきです」
「週刊現代」2015年11月14日号より
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