◆「一寸先は闇」。「政界再編」で「ガラガラポン」か
裏社会にピラミッドがあるとすれば、頂点に君臨するのがヤクザである。また編集者の立場で言うと、ヤクザを扱う出版物でも最も売れるのが、山口組に関するものだ。山口組のブランドはそれほど強烈だ。
その山口組は現在、2つに分裂し、「六代目山口組」から「神戸山口組」に流れが傾いていると見られている。本家である六代目山口組から神戸側に、組員らはぽろぽろと移っている。また、既に引退した組長らが、神戸山口組として復活している状況でもある。
神戸山口組の中心となっている組織が、カリスマと呼ばれた三代目田岡組長時代のナンバー2、若頭だった山本健一組長を始祖とする山健組だ。山健組は田岡三代目の流れを汲む、政界にたとえれば、いわゆる「保守本流」という自負があるのだろう。一時期、山健組の隆盛は本当に凄かった。たとえば筆者は、17、8年前、新宿・歌舞伎町は本来は東京の組織の縄張りなのに、ある山健組組員が「歌舞伎町はわしらの縄張り」と語るのを聞いて驚いた記憶がある。
今後、どの組が復活するのか、また誰がどの組に移るのかは、これまた政界的に言えば「一寸先は闇」で、予想ははなはだ難しい。1980年代に起きた、国内最大の抗争と言われる「山一抗争」(山口組と一和会が衝突し、一般人をも巻き込んだ多くの死者が出た)の前例があるため、全面戦争になることはないのでは、とは思う。東京オリンピックを控えて、警察庁も相当目を光らせている。もっとも、小競り合いは各地で起きている。
前述したように、メディアの報道も、「神戸山口組が優勢」と書いているところが多い。筆者には、今回の山口組分裂をめぐるメディア状況は、政局が「政界再編」や「ガラガラポン」と称される状況に重なって映る。政治記者は「政界再編」や「ガラガラポン」などの言葉を使うとき、「A氏が新党を作るようだ」「B氏はその新党に移るらしい」といった情報を、熱にあてられたかのように書く。山口組騒動を報じるメディアの「熱」を見ると、まさに「政界再編」そのものなのである。
今後の山口組騒動を占うのが難しいのは、ヤクザ側は表向きは取材を受けてくれないとされているからだ。だがヤクザ専門ライターは、それを突破する人脈を持っているから記事化できる。本来、山口組はマスコミとの接触を、建前上、禁止している。しかし、情報が少しずつメディアに出ているところ見ると、ヤクザ側が意図的に流しているのだろう。そしてそれが記事化されると、今度はダメージを負った方が、その新たな情報を流すという様相を呈していた(2015年12月17日現在)。
◆六代目山口組、神戸山口組、関東連合、怒羅権……裏社会の今後は?
冒頭に「裏社会にピラミッドがあるとすれば、頂点に君臨するのがヤクザ」と書いた。山口組騒動を踏まえた、裏社会の今後はどうなるのか。
頂点のヤクザに準じるのは、…
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