ダ・ニッキ RSSフィード

2006-12-10

アニメのスタッフクレジットを読む(オープニング編)

はじめに言い訳しておくと、私は業界人でなければ専門家でもないので勘違いしているところもあると思います。

できれば、業界の人とかに説明してもらいたいのですが、誰も教えてくれないので自分で書いてみました。

間違っているところがあったら遠慮なく指摘してもらえるとうれしいです。


今回の題材は「涼宮ハルヒの憂鬱」のオープニングから。

知名度も高く、比較的わかりやすい題材を選びました。

オープニングとエンディングに載せる情報の違いですが、OPにはシリーズ中変更されることが少ない(まずない)情報が載ります。

さらに、アニメーションの企画・立案の段階から携わっているスタッフが多いです。

EDは放送ごとの変動がある分が入ります。

私の場合、OPは作品全体にかかわるスタッフでEDは放送された回に携わったスタッフと認識してます。

原作・構成協力

ハルヒは原作ものなので、原作者のクレジットが入ります。

オリジナルのストーリーの場合は「原案」とかになったりします。

「構成協力」はこの後に出てくるシリーズ構成に谷川さんもかかわったためかと。

入れない場合もありますが、ハルヒの場合は放送話のシャッフルなど、谷川さんの意見がシリーズ構成に大きく取り入れられているので、入れたものと思われます。

原作イラスト・キャラクター原案

原作の挿絵を描いていた人ということで。

連載

原作と一緒にしてしまう場合が多いのですが、メディアミックスしているので分けたのでしょう。

角川書店です。

製作総指揮

いわゆる製作委員会の中のひとたちです。

「企画」とか「製作」というクレジットになっている場合もあります。

製作費を出しているエライ人たちなので、かなり最初の方にクレジットされています。

安田さんは角川書店出版事業部のメディア部長です。宇田川さんは角川ヘラルドの取締役。DVDの販売元です。

八田陽子さんは京アニの取締役。酒匂さんはクロックワークスの代表取締役です。クロックワークスはハルヒのレンタルビデオ事業をやっています。

ここのクレジットはほぼ必ず個人名がクレジットされますが、必ずと言っていいほどそれに紐付く組織が見えてきます。対応表とか作るとおもしろいと思います。

これで利害関係が見えてきます。

私の最近の研究テーマのひとつ。

企画

ハルヒにかぎってはちょっと特別な意味を持っているみたいです。

前述のとおり、「企画」は製作委員会がクレジットされる場合があるのですが、この場合の企画は純粋に「企画を持ち込んだ人」ということなのかも。

井上伸一郎さんはご存知、角川の名物編集長。

山下直久さんも角川の編集長をやっていたようです。

シリーズ構成

ハルヒの場合、1クール14話あったわけですが、その14話をどうやって配置してどこにどんなエピソードを持ってくるかというのを構成。

シリーズ全体を通しての脚本みたいなものです。

そのため、シリーズ構成は脚本家が兼ねる場合がほとんどです。

ハルヒの場合は専任の脚本家を立てずにやってました。

雑誌インタビューとかを見た感じでは原作者の谷川さんや監督、シリーズ演出の山本さんなどが集まってシリーズ構成をやっていたみたいです。


原作があるんだから、そのとおりにやればシリーズ構成なんか要らないんじゃないかという意見もあるようですが、原作の有無にかかわらず作品の出来栄えをも左右する、とっても重要なセクションなのです。

キャラクターデザイン総作画監督

設定資料集とかに付いているキャラ表とか書いている人です。

キャラクター原案があってもキャラクターデザイナーの個性がよく出るところ。

総作画監督はシリーズ全体で作画の特徴を整え、各話の作画監督の個性が出すぎないようにします。

総作画監督って昔はあまり見なかったけど、ここ5年くらいでよく見かけるようになったような気がします。

企画プロデューサー

このへんの肩書きはよくわかりません。

またもや角川の安田さんです。

アソシエイトプロデューサー

ここは広告代理店ですね。

宣伝の手配とかしているのでしょうが、実際のところ何をやっているのかは謎。

オープニングテーマ

オープニングの作詞・作曲・編曲と歌い手さんです。

このあと、オープニングを作ったスタッフが入ることもあるけど、ハルヒの場合はエンディングに出てきます。

音楽

BGMの作曲。

音楽プロデューサー

音楽関連のコンテンツを引き受ける利害関係者です。

堂々と「企画」や「製作」に入ってくることもあります。

音楽制作

音楽プロデューサーが所属するレコード会社。

ここの発言力が強くて、レコード会社とつきあいのある声優さんがいると、キャスティングに影響を及ぼすこともあります。

スタ○ャとかエイ○ックスとかアニ○レックスとか。

音響監督

声優さんの演技指導とか、アフレコ現場を取り仕切る人。

アフレコ現場の演出家とも言える。ラジオドラマやCDドラマでは脚本がそのまま台本なので、演出家がいないことがあるため、本来音響監督な人が「演出」になっていることもある。*1

キャスティングにも強い影響力があり、キャストオーディションの段階から参加している。

編集

ここの編集はよくわからないです。

音響関連の編集じゃないかと思います。

ちなみにビデオ編集というセクションもあります。

美術監督

背景美術の責任者。

京アニは自営でやっているけど、他ではほとんどは外注です。

草薙とかイースターとか美峰とか、背景美術専門の会社が多くありますので。

撮影監督

撮影の最高責任者。

京アニはたしか撮影も自営でやってたはず。

設定

作品に登場する小物とかの設定を出すセクションじゃないかと。

プロダクトデザインとかプロップデザインのもっと控え気味な感じ。

京アニでは高橋博行さんがよく担当されています。

色彩設定

ハルヒの髪の色とか制服の色が毎回変わったらたいへんです。

そうならないために、色に関する設定を管理する人です。

AIRのコメンタリによると、夕景だけでも数種類の色設定が用意されていたとか。

場所や時間にあわせてさらに細かく色設定が用意されているようです。

シリーズ演出

あまり聞かない肩書きです。

おそらくハルヒ以外では今後使われることはないんじゃないかと。

監督

作品の最高責任者・・ってことになってます。

超監督

ハルヒさんです。

アニメーション制作

アニメを作っている制作会社です。

GONZOとかXEBECとか童夢とかスタジオ・ファンタジアとかサンライズとかが入ります。

スタジオオルフェとかスタジオへらくれすが入ることはまずありません。

製作協力

ハルヒは広告代理店がクレジットされていますが、バンダイビジュアルとかGENEONとかが入ることが多いです。

*1:おねてぃのCDドラマとかブックレットには「音響監督」だけど収録ナレは「演出」になってる

メニエルメニエル 2006/12/12 03:06 色々気になる記述が多いので、一応補足させていただきます。まず、上の説明では<音響監督>の権限が実際より矮小化された印象ですね。例えば、特にアフレコに関しては、音響監督は作品の監督よりも権限があります(それが嫌だった庵野監督は、『彼氏彼女の事情』のオーディションのとき、「監督と音響監督と意見が違うとき、どっちの言うことを聞きますか?」という質問をしたことがあるとか)。ですから、CDドラマで<音響監督>を<演出>とクレジットするのも、この役職の性格を考えれば当然なわけです。それから、アニ○レックスがレコード会社(あるいはそのレーベル名)と捉えられかねない記述もありますが、アニ○レックスはアニメ制作会社ですよね(スタ○ャはキン○レコードのアニメ部門のレーベル名なので問題ナシ)。あと、<製作総指揮>ですが、有体に言えば、これは製作にあたってお金を出してくれた企業の責任社名です。なので、紐付きというか、個人名の背後組織が見えてくるのは当然な訳で。それから<製作協力>もちょっとニュアンス違うんですよね。とまぁ、明確な間違えというよりも、ニュアンスが微妙で気になるところはいくつかありますが、OPやEDのクレジットは視聴者にはほとんど関係ないものなのでこういう研究はあまりなく、うやむやにされていますから、趣旨には賛同させてもらいますよ(「中原小麦のまじかるナースステーション」とか聴いて勉強してくだされ)。

メニエルメニエル 2006/12/12 04:11 忘れてた。<シリーズ演出>に関して。有名な話ですが、「ハルヒ」はTVアニメ化にあたって時系列がバラバラに構成されていました。前・後編で1セットの話なのに、間に関係ないエピソードが入ったりね。で、その策を思いついたのが山本氏。これは本来はシリーズ構成の人の仕事ですが、「ハルヒ」はサンライズの矢立肇みたいに事実上<シリーズ構成>は京アニの「ハルヒ」の製作スタッフとなっていて、クレジット自体も「涼宮ハルヒと愉快な仲間たち」っていう遊び心溢れたものになっています。また、山本氏は、京アニの人で、「涼宮ハルヒと愉快な仲間たち」の一員なのですから、通常は名前がクレジットされるような立場の人ではありません。ですが、『朝比奈みくるの大冒険』の特典映像である番宣のメイキングを観ても分かるように、山本氏は「ハルヒ」の製作に大きく貢献した人で、事実上、本来の意味でのシリーズ構成の責任者的立場でした。そこで、その意味を込めて、彼の名前をクレジットするために考え出されたのが<シリーズ演出>というクレジット名な訳です。いってみれば、名誉職みたいなもんですね。なので、確かに「ハルヒ」以外で使われることは今後ないかもしれません(<シリーズ構成>があるので)。ですが、これからは1つの作品を作るのに色々な会社が関わってくることになりそうなので、<シリーズ構成>のほかに<シリーズ演出>というクレジット名が使われないとも限らないと思います。原画や動画の海外発注が烈しくなって作画のクオリティー維持が難しくなった2000年以降、それまではなかった<総作画監督>というクレジットが記載されるようになった例もありますからね。私は、OPというのは、作品を生み出すのに貢献した人の名前を敬意を込めてクレジットする場だと考えています。ですから、監督や音楽はもちろん、お金を出した人や会社、お金の管理をしている会社の名前が記載されているのは当然だと思うし、上の記事でもそうですが、お金に絡む部分をファンやオタクは忌み嫌うものとして考える傾向がありますけど、それは大きな間違えです。アニメの場合、スポンサー自体が作品制作を行っているようなものですからね。同じ理由で、毎回同じでウザイので、OPはノン・クレジットにするべきだという考えにも反対です。その作品を観れるのは誰のお蔭かと。逆に、作画のクオリティーや作品が不出来で納得いかなかった時、それから続編の希望などは、OPでクレジットされている製作総指揮や、アソシエイト・プロデューサーに手紙なりメールで直接クレームを送るのが効果的です。そうそう、アソシエイト・プロデューサーですが、ここに書かれている人が、最もお金(制作費の各企業への分配はもちろん、宣伝費や諸経費)に高い責任を負っている人です。実際にお金を出すのはスポンサーですが(一部製作総指揮の人たち)、運営費として支払われたスポンサー料は、まず広告代理店にプールされます。そこから、各企業(放送局やスタジオ、プロダクションなど)に放送料や制作費などが分配されるわけです。つまり、資金の流れを統括しているのが<アシ・プロ>なんですね。

メニエルメニエル 2006/12/12 04:26 すみません。あと一つ。<連載>ですが、「原作と一緒にしてしまう場合が多いのですが」となっていますが、ここもちょっとニュアンス違うんですよね。確かに「ハルヒ」はメディアミックスしています。ですが、複数誌で漫画や小説の連載をしている場合なら、分けて記載するのが普通ですよ。昔の「ドラえもん」なんて、月刊「小学三年生」くらいから「小学六年生」、「コロコロ」など10誌くらいが記載されていて凄かったものです。だって、ここに書いておけば、しっかりとした宣伝になるわけですから、記載しない理由はない訳で。確かに、メディア展開しておらず、原作が1シリーズだけの場合には<連載>のクレジット自体が割愛されるケースもあるでしょうが、アニメ化された時点で継続進行中のシリーズなら、オリジナルの漫画や小説を読むにはどうすれば良いのか、視聴者に知らしめるためにも<連載>のクレジットは<原作>とは別に明記した方が効果的です。何らかの理由でクレジット項目を少なくしたい場合はその限りではないのでしょうけどね。

シリーズ演出シリーズ演出 2006/12/12 08:11 確かに滅多にない肩書きですが、面白い役職ではあると思います。確かオトナアニメの山本寛インタビューで、「ありったけの提案をするのがシリーズ演出、それを取捨選択するのが監督」みたいなことが書いてありました。ともすれば暴走気味の演出をする山本と、その手綱を取る石原という関係でしょうか。個人的には山本にぴったりの役職だったと思っています。演出だと担当回しかコミットできないから勿体無いが、かといっていきなり監督にするには不安もある、みたいな。次に監督をするというステップを考慮すると監督見習みたいなものかもしれません。基本的にアニメの監督は作画から原画、作画監督、演出といったステップを踏むことが多い中、山本寛は作画を経験していません。つまり自分で作画の修正ができない不安もありますが、逆に京アニの作画なら山本の意図をきっちり再現してくれそうですし、これからも楽しみです。

towaliontowalion 2006/12/12 10:28 >>編集
音響関連の編集は音響監督ですね。
編集担当の仕事は、「作画班が準備した映像と音響班が準備した音声を合わせる」作業かと思います。
また、某書によれば、アニメも実写と同様に少し長めに作っておくらしく、編集はそれを放送フォーマットに合わせて文字通り“編集”する役割もあるそうです。(これは東映アニメーションの場合。東映は実写畑から派生したアニメ制作会社なのでこのようなシステムが残っているのかも知れません)

メニエルメニエル 2006/12/12 19:01 そうそう。<編集>についても一言。「『kanon』の音響について」のエントリーのコメントでも論じましたが、このあたりも一般のファンの中には誤解が多いところかと。原則的に、「音響」関連については、あくまでも<音響監督>が最高責任者であり、「どこをどういう感じでどうすればいいか」の判断と指示は音響監督が出します。そして、その意図を汲み取ってコンソールや調整卓の操作や実際の作業を行うのが<編集>とクレジットされてりる方、というのが原則論です。

で、towalionさんのコメントにある「作画班が準備した映像と音響班が準備した音声を合わせる作業」は、一般的に「ダビング」と呼ばれている工程ですね。この工程も、音響監督の指示の下(作品の監督が立ち会う場合もあり)に行われます。

>アニメも実写と同様に少し長めに作っておくらしく

東アニ系でも、今は他のプロダクションと同じ方式になってるんじゃないでしょうかね。東アニは演出の権限が大きいので(と同時に多忙でもありますから、演出に助手がついている)、かつてはそういう方式を好む演出家がいたということでしょう。

nulltenullte 2006/12/13 01:49 クレジットを読むのはオタク、少なくともアニメファンにとっては常識だったはずなんですが、時代がかわったのですね。岡田さんによるとテロップを読むことからオタクは始まったそうですが、今の若い人たちはこういうことにほとんど関心がないみたいでまったく寂しいものです。(別に私が年取ったといってるわけじゃないですよ。)

シリーズ演出のことですが、ハルヒ以前にもアベノ橋魔法商店街という作品で小島正幸さんがこの役職でクレジットされてます。似たような役職に助監督、演出チーフ、副監督、監督補佐、シリーズディレクターなどがありますね。このへんのことは今は時間がないので後でまた書きます。

メニエルメニエル 2006/12/13 03:16 さっきググったら、先日亡くなった実相寺監督が「ウルトラマン」のシリーズ演出となっていました。

>テロップを読むことからオタクは始まった

とにかく情報が少なくビデオのなかった時代、なるべく少ない労力で最大の効果を得ようとすると、その作品を観るべきか観ざるべきか、期待値を推し量るにはスタッフ名を頼るのが最も効率高かったんですね。つまり、スタッフ・クレジットは最良の情報源だった訳です。

現在では、がんばれば放送されている全作品録画することも理論的には可能ですし、アニ○ージュがその年に作られたアニメ作品のスタッフ・リストを公表してくれたりしますから、放送時にモニター前に張り付いている必要はなくなりました。

私もその時代の人間ですが、ふと偶然見た作品に知った名前の人が参加しているだけでも、観た甲斐があったと感じたのを覚えています。実写映画では、エンド・クレジットを読むのは、まだまだ普通の行為じゃないですかね。

ぷみぷみ 2006/12/16 07:13 みなさま、非常にお詳しくて、知らない事もあり勉強になります。
上記、いろいろ深いですが、作品や会社によって違う場合もある事も重要です。
私が考えるOPに編集とクレジットされるのは、オフライン編集の担当者のことです。
オフでカットを並べたり(撮影では、1カット単位で映像になっている)、尺調整やカットの入れ替え、パクのタイミング調整、音響用マーキングなどをベーカムで行い、そこで編集点を記録したEDLデータまでを出すのが彼らの仕事です。
オンラインはEDに多くクレジットされますね。イマジカさんとかが有名です。
基本的に、健全なアニメのスケジュールであれば、オンラインは、ベーカムと同内容が記録されたデジタルベーカムとEDLデータをオンライン編集機(何百万もするもの)に読ませてOPEDをつける程度の作業で終わります。なんせ、1時間○万円もレンタル料がかかりますから。
ちなみに健全とは、V編(オンライン編集のこと・通称こう呼ぶ)までにはオールカラーになってることです。(本当は編集までにオールカラーが一番健全だが、結構むずかしい)
ちなみに、ちょっと気になったのですが、現場では製作と制作の日本語が、使い分けられることが多いです。製作はお金を出す人たちのこと。制作は現場で作業する人たちのこと。
製作会社はお金を出すプロデュース系で制作会社がせっせと画をかいたりしてる所です。