図は”大人”の中耳炎でも使用しました。
青い矢印の先が「耳管」と呼ばれる、鼻と耳をつなぐ管です。
子供さんは耳管が太く、短く、傾斜が緩やかなので、鼻の奥のバイ菌が耳に”逆流”しやすく、大人に比べて、中耳炎になりやすい構造です。
風邪の発症と共に急激に耳の症状を訴える子どもさんもいますが、いわゆる風邪の治りかけの頃に、耳を痛がる、となることが多くあります。
よくあるのが、やっと風邪が落ち着いてきたね、という週末の真夜中ころ、子供さんが大泣きするというパターンが、往々にしてあります。
痛みの症状は、陣痛のように、寄せては引くという事が多いです。
やれやれ落ち着いた?やっと寝たねー、と思ったら、ギャーと泣いて、また起きる。
かなりつらい痛みと思います。
耳たぶの方には痛みは出ませんので、痛みと痛みの間合に耳を少し引っ張ってみて、何も言わないときは外耳ではなく中耳の炎症の可能性が高いです。
特に小さな子供さんは、うまく痛みを表現出来ない事が多いので、症状の訴えだけで診断をつけるのは我々(医者)でも容易ではありません。
ただ、『風邪気味の子供さんが、耳を痛がった』の場合は『圧倒的に中耳炎が多い』のは事実です。
日中の時間帯で、医院が開いているときは問題ないでしょう。
夜中に耳を痛がることが多いのは、寝るため横向きになって、中耳に血流が増えるためが大きな理由と考えられます。
じゃあ、起こせばいい、と言えばそうですが、痛みが落ち着いて再び横にする前にすることがあります。
院長は、痛みどめの常備、そして早めの使用をお勧めします。
子供さんの痛みどめ、熱さましは現在ほとんど一種『アセトアミノフェン』のみです。
カロナール、コカール、アンヒバ 、市販は小児用バファリン などの商品名です。
この薬に、アレルギーなどなければ、痛みに関しては早めに使用して良いと思います。
使用量は体重(kg)×10mgです。
体重10kg×10=100mgです。
体重15kg×10=150mgです。
剤型は、坐剤が特におすすめです。
理由は飲ませる手間がいらず、効果の発現が15分程度からと、速やかだからです。
⇒痛み止めの話 は詳しくはこちらをご覧ください。
中耳炎の痛みはかなりつらく、大人でも、トラウマになりかねない、辛い痛みです。
中耳炎のガイドラインにはいろんな処置、治療が書いてありますが、院長はまず痛みを積極的に取ってあげるのが一番と思います。
その後の治療は、様々と思いますが、夜間などの急激に痛みで発症した中耳炎疑いの子供さんに、至急でできることは多くはないと思います。
明らかに痛み(耳)を訴えて、中耳炎が疑われるときには、小さいお子さんだったら、起こして抱っこしてあげて、耳を冷やすのも良いでしょう、痛み止めの坐薬をいれて(薬を飲ませて)効果がでるまで、あやしてあげてください。
痛み止めの効果は4~6時間程度持続しますので、2回目の投与はこれを過ぎる頃となります。
翌日は出来るだけ早くに、耳鼻科、小児科の受診をしましょう。
中耳炎に限りませんが、小さな子供さんの感染症は、経過が急激なことが多くあります。
正常だった鼓膜(中耳)が数時間で破裂寸前まで腫れあがることが、珍しくありません。
中耳炎の、特に痛みの処置に関しては、積極的な鎮痛剤の投与は行ってよいと思います。
「癖になる」の表現が難しいのですが、外来で良く聞かれます。
”癖”と言ってよいのか、中耳炎になりやすい条件が、あると思います。
急性中耳炎は、痛み、耳漏などの強い症状は、多くは数日で沈静化しますが、中耳の奥での炎症は数週単位で残ることが有ります。
数日の治療で日常生活は通常の状態に戻ることが多いのですが、再発の可能性は確かに頭の片隅に置いておく必要はあります。
…そして
保育園や、幼稚園が始まると、初めての集団生活で周囲の子供達や”先輩達”から、様々な”菌”をもらうことになります。
小さくして早くから保育園に行き始めた子供さんほど、風邪をもらう頻度は多いようです。
特に最初の一年程度は、親御さんも「なんのために保育園に行っているのか分からない!」というくらい“カゼ”ばかり引いて、ハナは垂らす、咳は出る、ゼロゼロいう、おまけに中耳炎、となるかもしれませんが、「集団生活を経験した幼児は、将来免疫力が強くなる。」とも言われます。
親としては、我慢の時期かもしれません。
「アセトアミノフェン」は、他の解熱剤に比べ、子供さんの体温を不必要に下げることが少ないです。
大人の解熱消炎鎮痛剤(アスピリン、ピリン系、NSAIDs等)は小児の体温を必要以上に下げてしまうことが有るので、大人量を子供の体重相当にして投与することは、止めましょう。
小児科や内科でお薬をもらっているときは、必ずお薬の種類を教えてください。
お薬説明書でも良いです。お薬手帳が有れば、とても参考になります。
急性中耳炎の鼓膜の腫れ方には、大きく三段階有ります。
最近はもう少し細かく分ける事が多いのですが、治療の説明の段階では院長はこの”3つ”を使っています。
①鼓膜が少し赤い
②1と3の中間(赤みがひどく、腫れぼったい)
③鼓膜がブヨブヨになる位、膿がたまっている
以上、ザックリ三段階です。
最近は、できるだけ切開をしないで済む方向を模索する傾向が強いのですが、やはりどうしても切開を選択するべき症例は有ると思います。
上の三段階の③などが相当します。
説明の時は、”ニキビ”の例えをさせてもらうことが多いです。
赤いだけのニキビはいくらつぶしても、中身は出ずに、痛くてキズが汚くなるばかりです。
“膿”を積極的に出すには、”熟れ具合”を見極める必要があると院長は思います。
鼓膜の腫れ具合を、ファイバーで確認して、家族と一緒に供覧して、痛みや風邪などの症状と併せて、必要だと判断されたときに、説明と同意のもとに切開を行うことになります。
…おまけ
鼓膜切開は痛いというイメージが強くあります。
院長の子供の頃受けた鼓膜切開は、とっても痛かったです…、半分トラウマです。
正直、かたっぱし切ってましたものね…。
当院では、症例を選択することと、鼓膜麻酔を併用することで、この痛みはかなりの頻度で抑えられています。
いわゆる一昔前の鼓膜切開とは、隔世の感があると自負しています。