●「戦後70年談話」などやめてしまへ(10)

 
 日中歴史共同研究を発足させた安倍首相
 日中歴史共同研究で侵略史観を展開した北岡伸一
 


 北岡伸一といふ人物は安倍首相の外交安保ブレーンといふことになつてゐる。北岡の経歴はまさしくそれを物語る。

 第一次安倍政権の時、安倍首相は北岡伸一に3つものポストを与へた。

 ・日中歴史共同研究の日本側座長
 ・首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)の座長代理
 ・日本版NCSを検討する「国家安全保障に関する官邸機能強化会議」議員(議長は首相)


 このうち、戦後70年談話問題を考へる上で重要な意味を持つのは、日中歴史共同研究の日本側座長といふポストだらう。

 日中歴史共同研究が日中政府間で最終合意に達したのは、安倍首相が訪中して胡錦濤と首脳会談を行つた平成18年10月のこと。日中友好首脳会談の実りある成果のひとつとして喧伝されたのが日中歴史共同研究の合意(年内発足)で、日中歴史共同研究の日本側座長に任命されたのが北岡(当時東大教授)だつた。

 前にも述べたやうに、日中首脳会談を成功させるために、安倍首相が中国に差し出したのが「日本の植民地支配と侵略」を認める国会答弁といふお土産。従つて、日中歴史共同研究は安倍首相の叩頭外交の産物といへなくもない。

 そんな背景があるからして、日中歴史共同研究が安倍叩頭外交の尻尾を引き摺つてゐたことは当然の成り行きだつた。日本側が中国侵略を認めることが共同研究の前提とされたのだ。

 共同研究は3年後に終了したが、その後、北岡は読売新聞に寄稿して嘯いた。

《中国側は、日本側が日本の侵略を認め、南京虐殺の存在を認めたことが共同研究の成果だといっている。しかし日本側はそんなことは共同研究を始める前から当然のことと考えていた。》

《実際、日本の歴史学者で、日本が侵略をしていないとか、南京虐殺はなかったと言っている人は、ほとんどいない。》

 ハッタリ学者の面目躍如たる文章。

 中国側が、日中歴史共同研究で日本の学者達も中国侵略を認めたと、早速政治宣伝に利用し始めたことに対する、日本向けの言ひ訳が半分。あとの半分は、歴史認識問題ではこのオレが日本の学者を代表してゐるといふ自己宣伝である。

 このハッタリ学者は、日中歴史共同研究が中国の都合のいいやうに利用されても、歯牙にもかけない。

 このやうな考への持ち主が、戦後70年談話を検討する有識者会議のリード役として起用されたのだ。起用したのは安倍首相である。

 安倍首相は最終的に戦後70年談話に侵略の文言を入れるつもりはない。しかし、北岡の存在は中国へのエクスキューズにはなる。

 有識者会議に日中歴史共同研究の日本側座長をつとめた北岡さんを入れたぢやありませんか。北岡さんは中国侵略を認めてゐる立派な学者です。ですから私も侵略を別に否定したわけぢゃありませんよ。・・・・









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プロフィール

Author:tensei211
ちば・てんせい。ジャーナリスト、政治評論家。フェミニズム論、天皇論を中心に執筆活動を展開してゐる。

北海道芦別市生まれ。千葉県在住。

フェミニズム論をまとめた著作として、『男と女の戦争―反フェミニズム入門』(展転社)など。フェミニズム関係の共著に『男女平等バカ』(宝島社)、『夫婦別姓大論破』(羊泉社)などがある。

執筆には、正仮名遣ひ(歴史的仮名遣ひ)を用ゐる。

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