« マンキュー経済学のリンク | トップページ

2016/01/02

JAXAのスーパーコンピュータ活用課でRedmineを使ったチケット管理システムの経験論文

JAXAにおけるスーパーコンピュータ活用課でのチケット管理ステムの経験論文がPDFで公開されていたのでメモ。

【参考】
akipiiさんはTwitterを使っています: "気になる。RT @g_maeda: なんだこれ ? CODA: JSS2の運用・ユーザ支援を支えるチケット管理システム : Redmineの事例と利用のヒント https://t.co/9QlySYSzZk"


MAEDA, GoさんはTwitterを使っています: "@akipii @y503unavailable @takenory JAXAの資料のPDF見つけました https://t.co/msKI89zsCh"

akipiiさんはTwitterを使っています: "@g_maeda @y503Unavailable @takenory これはすごく興味深いRedmineの論文ですね! JAXAにおけるスーパーコンピュータ活用課でのチケット管理ステムの経験論文なわけですな。"

宇宙航空研究開発機構研究開発報告 CODA: JSS2の運用・ユーザ支援を支えるチケット管理システム~Redmineの事例と利用のヒント

【1】論文の概要は下記の通り。

(引用開始)
Redmine はさまざまな業務に利用できる優れたチケット管理システムで,近年注目されている OSS の一つである.
JAXA スーパーコンピュータ活用課では,2014 年の JSS2 SORA スーパーコンピュータ導入を機に Redmine をベースにした CODA システムを構築・運用している.本稿では,Redmine の利用事例として CODA を紹介する.
合わせて,Redmine を一層効果的に活用するため,CODA の構築・運用経験から見いだされた定義や設定,運用の工夫を紹介する.
(引用終了)

【2】JAXAのスーパーコンピュータ活用課では、運用や支援のための情報共有・進捗管理のために、Redmineをベースにした業務管理アプリケーションを構築したらしい。
論文を読むと、Redmine導入前の運用支援システムには以下の課題があったらしい。
どこも同じような問題意識があったわけだね。

(引用開始)
(1) ドキュメンテーションが不足しており,トラブル時の対応が困難である.
(2) システム種別などの選択肢がソースコード内に散在する,生成されるレポートの形式が固定である,など,新たなシステムの運用に合わせた改修やニーズの変化に対応しにくい.
(3) Web ブラウザ画面の作成に使用している XUL(XML User Interface Language)が特定の Web ブラウザを前提としている上,そのブラウザのバージョンアップに伴って次第に不具合が顕在化するようになった.
(引用終了)

【3】Redmine導入の決定の理由も論文に詳しく書かれているが、その理由の中で興味を惹くのは、下記3点だ。

・特定の開発や運用の方法論やスタイルを前提としてそれに依存していない
・書籍やインターネットでの情報,特に日本語での情報を入手しやすい
・バグ修正や機能の追加などの開発が活発で,議論がオープンである

つまり、Redmineがチーム開発における非常に汎用的な機能を持っていること、オープンソースで活発にVerUpされていて、日本のRedmineコミュニティや日本語の書籍の出版が活発である点がすごく評価されている。
こういう内容を読むと、オープンソースのツールの発展は、単なるソースの公開だけでなく、コミッタとユーザが相互に依存関係があり、活発にやり取りして、ツールそのものを進化させていくことが非常に重要であると再認識させられる。

【4】JAXAにおけるRedmineの利用内容も興味深い。

【4-1】日々のイベント・作業の記録・連絡、管理帳票、会議の準備,議事録,To Do 項目、納品物本体 + 目録などの管理で使っているのは、ある程度想像できる。
興味深いのは、ISO-9001 に即した品質保証のプロセスをRedmine上で実現しようとしていることだ。

ISO-9001 の「継続的改善」に規定のある「是正・予防処置」は、Redmineのワークフロー機能と、Wikiや文書機能で具体的に実現できるだろう。
つまり、PDCAのサイクルで確実に作業して検査を終了した、という事実をRedmineのワークフロー機能で実現し、その過程で作られた成果物はチケットの添付ファイルやRedmineの文書機能、Wikiへの議事録・インスペクションの打合せ内容、で実現できるだろう。

そのような内容を考えると、ISO9001や内部統制に準じたプロセスをRedmine上で実現し、そのシステム監査もクリアできるようなノウハウを蓄積して整備することも可能だろう。
そうすれば、RedmineのチケットやWikiの情報の精度が高くなるから、データマイニングによって、障害分析や課題分析、稼働分析などに応用でき、新たな知見をソフトウェア工学へ貢献することも可能だろう。

【4-2】他に、「ロール設定の OR ルール」「フィールド設定の AND ルール」「プロジェクトの分割の目安」「カテゴリ標準フィールドの活用」など、細かな運用ルールを定めている点は、「組織としてプロセスの標準化を推進する」意識から出ていると推測される。
Redmineの機能をよく研究していると思う。

【4-3】JAXAでのRedmineの利用頻度は、ユーザ数が約 35 名、チケット数は約 3100(2014/1~2015/12)、月々約 300 件程度のチケット登録と記載がある。
数万~数十万のチケット数になれば、Redmineに溜まったチケットはISO9001に即しているおかげで品質がいいだろうから、ソフトウェア工学の研究がやりやすいだろうと推測する。

【4】「Redmine への期待」を読むと、JAXAではRedmineは非常に満足できると評価されている。
「Redmine 本体及びエコシステムという観点から現状と今後の期待を述べる」所で、「OSS の利用を考えるとき,開発が活発か,コミュニティが充実しているか,は非常に重要である.この点,Redmine は活発な開発が行われており,書籍の発行やコミュニティ活動も多い.今後も機能追加や使いこなしの情報が順調に増えると期待できる.」と評価してくれている。
Redmineコミュニティに携わる一スタッフとして、ちょっと嬉しい部分だ。

どこかで発表してくれないかな?

|

« マンキュー経済学のリンク | トップページ

Redmine」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« マンキュー経済学のリンク | トップページ